ホントウの勇者

さとう

クローノス城・金仮面

 


 「うっ・・・んん」


 一体何が起きたんだ?


 目が覚めてみるとなぜか固い地面の上で目が覚める。そこは教室の堅いリノリウムの床ではなく、古さを感じさせる石造りの地面だった。


 (なんだここは?)


 あたりを見回すとクラスメイトたちが倒れている。どうやら起きているのは俺だけのようだ。ふと視線を感じ、振り向いてみるとそこに誰かがいた。体育館のステージの上みたいなところから自分たちを見下ろしている。装飾された豪華なイスの上に一人、その右隣に二人、左隣に二人の計五人だ。よく見ると周りの壁際に全身鎧の兵士?がたくさんいた。槍みたいなものを持って、腰に剣を差してる。


 まず、一番最初に目に入ったのがイスの上に座るやつだ、こいつが一番怪しい・・・なぜなら黄金のフルフェイスのヘルメットのようなものをかぶり、男か女かもわからない。体は真っ白いローブのようなものを着ているし、とにかく怪しい、まるで自分の正体だけは絶対にばれるわけにはいかない!と、言っているような出で立ちだ。一人だけ豪華なイスに座っているからこの五人のなかで一番偉いのかな?


 次に目に入ったのが戦士風の男だ。年齢は20前半くらい?さわやかそうな金髪のイケメンで、俺と目が合うとにっこり微笑んできた、ゲームで見るような鎧を着込んでいてマントまで着けて腰に装飾された剣を帯刀している、なんかかっこいい。


 その隣にいるのが女の人だ。こちらも20くらいのひとで紫色のドレスを着ていて胸元が開いていてかなりセクシーだ。髪は水色のブロンドヘアーでかなりの美人だ。手には杖?のようなものを持っていて、魔法使いのような感じだ。


 三人目は小さいおばあちゃんだった。ホントに小さい。1メートルくらいしかない気がする。こちらは黒い喪服のようなドレスに黒い三角帽子、魔女のテンプレみたいな感じ、手にほうきも持ってるし。あのほうきで空飛んだりすんのかなあ。


 四人目は超筋肉男だ。すっげえ・・・30後半くらいのひげ面で全身キン肉マン、柔道着みたいなのを着ている、しかも裸足だ柔道着?の袖部分がないので二の腕が完全に見えてる。ボディビルの世界大会でも優勝できそうだ、目が合うとニヤリと笑った。


 この間およそ10秒、何か言おうと口を開こうとしたらクラスメイトたちのうめき声が聞こえ始めた。


 「いたたたた…」
 「なんなんだよ…」 
 「ううう…」


 続々と起き始めるクラスメイトたち、剣吾と静寂さん、弓島さんたちも起きてあたりを見回し始めていた。そして金仮面の男?が話し始めた。


 『よくぞ参られた、異世界の客人たちよ』


 声がすごい変だ、まるでボイスチェンジャーを使ってるような感じだ。あの仮面になんか仕込んであるのかな?よっぽど何かを隠したがっているらしい、そんな印象を感じた。クラスメイトたちが騒ぎ始めている、まあ当然だろうな


 「異世界転移!キタコレ!」 
 「ここどこ?いったいなに?」 
 「どういうこと?ワケわかんない!」


 一人一人が騒いでいる。なぜか喜んでいるやつ、泣きそうなやつ、辺りを見回しているやつ。剣吾は金仮面の男?を睨み付けているし、弓島さんは静寂さんを抱きしめて慰めていた。戦士風のイケメンが片手をあげるとみんな静かになった。そして金仮面が話し始めた。


 『ここはクローノス城、そして私が王のエルレイン・フォーリアだ、客人たちよ、突然のことで驚いたであろうが、一つずつ説明をさせていただきたい。』


 クラスメイトたちは全員黙っていた、話の続きを聞こうとしているのだろう。しかし俺は何故だかものすごくいやな予感がしていた。ここにいてはいけない、速く逃げなきゃ…そんな予感がしてものすごく居心地が悪い、なんて言ったらいいかな、授業中で誰もいない女子更衣室で一人でいるような…訳がわからんがそんな感じだ


 『まず最初に君たちを召喚した理由だが、我らのために力を貸してほしいのだ』


 力を貸す?ただの高校生の俺たちに?そう思っているとクラス委員長の女子、羽蔵麻止はねくらまとめが質問した。


 「私たちはただの高校生です!あなたたちの求めるような力はありません!すぐに私たちを元の教室に帰してください!」


 と、大声で叫ぶ。何人かの生徒がそーだそーだと叫び始めた。金仮面は再びしゃべり始める。


 『申し訳ないがすぐに帰ることはできない、【返還の儀】は季節や時間など一定の条件がなければ行うことができない。そして君たちは全員強大な力を持っている。』


 ものすごくいやな予感がする…ここから逃げなくちゃいけない気がした


 『異世界転移した人間はみな、この世界に伝わる伝説の神の魂を宿し現れる、君たちの中にはもう神の力が宿っているはずだ』


 『神の力は個人で違う、体のどこかに【神紋】(しんもん)が現れているはず。その紋章の色と形を見ればどの神が宿っているかわかる」


 金仮面がそこまで言うと、彫像のように動かなかった壁際の兵士たちが動き出し、クラスの一人一人になにかを渡し始めた。なんだこれ?手のひらサイズの水晶玉か?


 クラスメイトたちもこの雰囲気に慣れてきたのか、声が明るくなり初めている。俺の心は相変わらずどうやって逃げるべきかを考えていた。すると目の前におなじみの三人がやってきた。


 「なんか変なことになってきたなあ」と剣吾。
 「たしかにねえ、でもなんかわくわくする!」と弓島さん
 「えっと…まだ状況がよく」と静寂さん


 「ここはヤバい…逃げよう」


 と俺が言うと弓島さんがニヤリと笑ってからかうように俺にしゃべり掛ける


 「なあに?もしかしてジュートこわいの?アタシが守ってあげよっか?」


 と悪ふざけで言う、だいぶ余裕が出てきたみたいだ。それに合わせて剣吾が茶化すように言う。


 「おうおうお熱いねぇ!やけどしそうだぜごちそーさん」
 「べべべ別に!そーゆーんじゃないし!あっちいってなさいよ!」
 「へいへい…ジュート、またあとでな!」


 と剣吾は行ってしまったすると静寂さんがなぜかむくれた感じのかおで俺の学ランの袖をキュッと引っ張る。なんかかわいいな。


 「無月くん…」 


 と言い静寂さんが近づいてくる。ちょ、ちょっと近いんですけど…すると弓島さんが低い声で近づきながら言う。


 「なーにデレデレしてんのよ!このばか!」


 えー俺が悪いの?と思っていると突然手の中の水晶が光り始めた!


 「なんだ!」 
 「すげえ!」 
 「キレイ…」


 いろいろな色の紋章があたりに輝き始めた。色はそれぞれ 赤・青・緑・黄・白・黒・紺・紫・灰があたりを照らしている。そして俺の色は…黒


 それぞれの紋章が消えるとみんながそれぞれ体の一部分に手を当てて苦悶の表情をした。剣吾は右手の甲を、弓島さんは右足の太ももあたりを、静寂さんは首に手を当てた。静寂さんの首を見ると3センチくらいの紋章が刻まれている、色は…灰色




 それぞれが紋章の色や場所を確認していると、クラスメイトたちが全員不思議そうな顔で


 




 金仮面の周りにいた4人が驚愕の顔で








 金仮面が突然立ち上がり、あり得ないものを見るように震えて








 その場にいた全員が未だに燃え続ける俺の紋章と色を見ていた。 
 あとでわかったことだが、その色は黒ではない




 濡羽色ぬればいろ






 この世界。いや、この大陸【クローノス大陸】において最悪の神




 【銃神ヴォルフガング】




 かつてこの大陸に破壊と混乱をもたらした神の最も忌まわしき色だった









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