竜と女神と
安心する青年
「なるほどな……あのときにそんな事が。随分と無茶苦茶な神だったんだな」
「はい、それはそれは大変な女神でしたよ」
とりあえず、ルナについて一通りの事は話した。竜子の事を伏せながら話したので、話に不整合が生じていなければいいのだが。
「それを止められたキミもかなりのものだ。それで、その女神は今はどうしているんだ?」
さて、どうしようか。正直に言うか、言葉を濁すか……
「ああ、それは」
「燐斗君、珈琲の注文が入ったから、お願いできるかしら?」
背後から店長に声をかけられた。これはナイスタイミングだ。
「ええ、わかりました。すみません、借神狩禍さん、話はこの辺で……」
「ああ、構わないよ。神関係の事ならば知ろうと思えば自分で知ることができるからな」
なるほど。神を自分に降ろして尋ねた方が手っ取り早いという事か。
……ルナが応じてくれるとは到底思えないが。
「そうですか。それならよかったです」
俺はお辞儀をした後に厨房へと入る。
ようやく、解放された。
なんだか、どっと疲れた……とりあえず、珈琲を淹れよう。
「燐斗君、お疲れ様ぁー!」
「お疲れ様です。店長」
午後八時、俺のバイト終了時刻であると同時にこの店の閉店時刻でもある。
この時間が近づくと客は全くいない。
ゆったりした時間を過ごすためにこのカフェに来ている人々ばかりなので、閉店間際に来るような客は滅多にいないのだ。
「あ、そうそう、燐斗君、これ、あの女の子から『燐斗君に』って言って渡されたのよ……もぉー! 燐斗君ったらプレイボーイだったのねぇ!」
店長がニヤニヤと笑いながら俺に紙を渡す。おそらく、あの霊媒師の連絡先だろう。
「いや、あの人はそういうんじゃないッスよ……なんというか、仕事の宣伝みたいな、そんな感じですよ」
「仕事? あの子、燐斗君と同い年くらいに見えたけれど、学生じゃなかったの?」
「いえ、家業が霊媒師らしくて、学生と兼業でやってるみたいッスよ」
「あら、そうだったのね! 学生と兼業って大変そうねぇ……」
「まあ、仕事で学校にいけない場合は公欠扱いにしてもらえるみたいッスから……あ、そうだ店長。昨日言ってた俺の同居人の件ですが、明日見学させようと思ってます」
今後関わるかどうかも分からない霊媒師の話は置いておいて、そろそろ本題にうつろう。
「ええ、わかったわ! 明日ね! うふふっ! どんな娘が来るのか楽しみだわ!」
「すっごい変な奴ですが、良い奴ッスよ」
正確に言えばすっごくて変な奴かもしれないと、たった今気づいたが、訂正するのもヤボなのでこのままにしておこう。
「うふふ、それじゃ、また明日もよろしくね。燐斗君」
「ええ、お疲れ様です」
挨拶をした後に店を出た俺だが、一つ気になることがある。
……そういえば、竜子が『良い奴』だという事を借神狩禍さんは知らない。もしかすると、彼女の仕事はまだ終わっていないんじゃないか?
と、なると、また彼女はこの近隣に出没するかもしれない。
それはとてもマズい。連絡する気は全くなかったが、聞いた方がいいかもしれないな。
えっと、ん? SNSのIDと、URL……?
何故わざわざURLを……? 気になるし打ってみよう。
これで、よしっと。えっと、何々……?
『霊媒師、借神狩禍 屶のホームページへようこそ! あなたは〈300)人目の来場者です』
よし、見なかった事にしよう。目がチッカチカする背景やら何やらと、思う事は色々とあるが、とにかく見なかった事にしよう。
とりあえず、SNSを登録して……っと。
『先程カフェでお会いした花園です。そういえば借神狩禍さんはいつまでこの地域に滞在している予定なんですか?』
よし、こんな感じでいいだろう……って、もう既読がついた!
『なんだ?何か頼りたい事でもあるのか?残念ながらワタシは電車で家へと帰っている途中だ』
『いえ、ただなんとなく気になっただけです』
スマホをフリックする指が歓喜に満ちているのが自分でも分かる。よかったよかった。
『そうか。あ、そうそう、万が一にも赤い髪の竜人を見たときは関わらずにワタシに連絡するように』
『わかりました』
よし、これで一安心だ。
『ところで、キリ番踏んだか? おめでとう! お祝いにイラス……』
恐ろしい文章がチラと見えたが俺はコレを既読にする勇気がない。
とりあえず、気力を回復した後にでも返信する事にしよう……
今からやる事はキリ番イラストの詳細を聞く事では断じてない。
ハルの家に行っておばあさまにお礼を言う事だ。
どちらにせよ、精神を削られそうだ……
「はい、それはそれは大変な女神でしたよ」
とりあえず、ルナについて一通りの事は話した。竜子の事を伏せながら話したので、話に不整合が生じていなければいいのだが。
「それを止められたキミもかなりのものだ。それで、その女神は今はどうしているんだ?」
さて、どうしようか。正直に言うか、言葉を濁すか……
「ああ、それは」
「燐斗君、珈琲の注文が入ったから、お願いできるかしら?」
背後から店長に声をかけられた。これはナイスタイミングだ。
「ええ、わかりました。すみません、借神狩禍さん、話はこの辺で……」
「ああ、構わないよ。神関係の事ならば知ろうと思えば自分で知ることができるからな」
なるほど。神を自分に降ろして尋ねた方が手っ取り早いという事か。
……ルナが応じてくれるとは到底思えないが。
「そうですか。それならよかったです」
俺はお辞儀をした後に厨房へと入る。
ようやく、解放された。
なんだか、どっと疲れた……とりあえず、珈琲を淹れよう。
「燐斗君、お疲れ様ぁー!」
「お疲れ様です。店長」
午後八時、俺のバイト終了時刻であると同時にこの店の閉店時刻でもある。
この時間が近づくと客は全くいない。
ゆったりした時間を過ごすためにこのカフェに来ている人々ばかりなので、閉店間際に来るような客は滅多にいないのだ。
「あ、そうそう、燐斗君、これ、あの女の子から『燐斗君に』って言って渡されたのよ……もぉー! 燐斗君ったらプレイボーイだったのねぇ!」
店長がニヤニヤと笑いながら俺に紙を渡す。おそらく、あの霊媒師の連絡先だろう。
「いや、あの人はそういうんじゃないッスよ……なんというか、仕事の宣伝みたいな、そんな感じですよ」
「仕事? あの子、燐斗君と同い年くらいに見えたけれど、学生じゃなかったの?」
「いえ、家業が霊媒師らしくて、学生と兼業でやってるみたいッスよ」
「あら、そうだったのね! 学生と兼業って大変そうねぇ……」
「まあ、仕事で学校にいけない場合は公欠扱いにしてもらえるみたいッスから……あ、そうだ店長。昨日言ってた俺の同居人の件ですが、明日見学させようと思ってます」
今後関わるかどうかも分からない霊媒師の話は置いておいて、そろそろ本題にうつろう。
「ええ、わかったわ! 明日ね! うふふっ! どんな娘が来るのか楽しみだわ!」
「すっごい変な奴ですが、良い奴ッスよ」
正確に言えばすっごくて変な奴かもしれないと、たった今気づいたが、訂正するのもヤボなのでこのままにしておこう。
「うふふ、それじゃ、また明日もよろしくね。燐斗君」
「ええ、お疲れ様です」
挨拶をした後に店を出た俺だが、一つ気になることがある。
……そういえば、竜子が『良い奴』だという事を借神狩禍さんは知らない。もしかすると、彼女の仕事はまだ終わっていないんじゃないか?
と、なると、また彼女はこの近隣に出没するかもしれない。
それはとてもマズい。連絡する気は全くなかったが、聞いた方がいいかもしれないな。
えっと、ん? SNSのIDと、URL……?
何故わざわざURLを……? 気になるし打ってみよう。
これで、よしっと。えっと、何々……?
『霊媒師、借神狩禍 屶のホームページへようこそ! あなたは〈300)人目の来場者です』
よし、見なかった事にしよう。目がチッカチカする背景やら何やらと、思う事は色々とあるが、とにかく見なかった事にしよう。
とりあえず、SNSを登録して……っと。
『先程カフェでお会いした花園です。そういえば借神狩禍さんはいつまでこの地域に滞在している予定なんですか?』
よし、こんな感じでいいだろう……って、もう既読がついた!
『なんだ?何か頼りたい事でもあるのか?残念ながらワタシは電車で家へと帰っている途中だ』
『いえ、ただなんとなく気になっただけです』
スマホをフリックする指が歓喜に満ちているのが自分でも分かる。よかったよかった。
『そうか。あ、そうそう、万が一にも赤い髪の竜人を見たときは関わらずにワタシに連絡するように』
『わかりました』
よし、これで一安心だ。
『ところで、キリ番踏んだか? おめでとう! お祝いにイラス……』
恐ろしい文章がチラと見えたが俺はコレを既読にする勇気がない。
とりあえず、気力を回復した後にでも返信する事にしよう……
今からやる事はキリ番イラストの詳細を聞く事では断じてない。
ハルの家に行っておばあさまにお礼を言う事だ。
どちらにせよ、精神を削られそうだ……
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