竜と女神と

水無月六佐

兄をみる妹

 お兄ちゃん、ぐっすり寝ているなぁ……
 お兄ちゃん、アタシはお兄ちゃんのこと、ずっとみてるんだよ?
 優しいお兄ちゃん、いつもアタシを護ってくれたかっこいいお兄ちゃん。
 大好きだよ。
 ……ねえ、知ってる? お兄ちゃん。パパとママが死んじゃった後、お兄ちゃんとアタシで二人っきりで生活する未来もあったんだよ。
 お兄ちゃん、ずっとアタシを護ってくれていたんだよ? ……ハルお姉ちゃんにもいっぱい助けてもらったなぁ。
 ……アタシは、そんな未来を生きたかった。ううん、そんな未来で生きていたかったんだ。
 でも、いいんだ。死んじゃっても、ずっとお兄ちゃんの事をみていられるなら、私はそれでもいい。
 でも、せめて、お兄ちゃんだけでも現世で幸せに生きて欲しかった。
「……燐斗。……ふふ、グッスリと寝ているな」
 アンタ達がお兄ちゃんに会わなかったらお兄ちゃんは幸せでいられたのに。ハルお姉ちゃんと一緒に幸せな人生を過ごしたのに。
 きっと、お兄ちゃんはアンタ達を護ろうとしてこれからいっぱい傷つくことになる。
 アタシが耐えられなくなっちゃったら、そのときはきっと……

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品