恋愛の女神に会ってから俺の日常が暴走している

丸石 つぶ

12…昼休み<後編>

「ねぇねぇ翠君?これ、どう思う?」
    楓とやけに仲良くなって戻ってきた真也が、最初に言った言葉はそれだった。
    どう答えるべきか…。
    いや、何をどう答えればいいのかは分かるのだ。
    なぜなら今、真也が着ているのは女子生徒用の制服だからだ。もちろん体の方も女になっている。
    他のやつらが逃げてて良かったよ。うん、まじで。
「えっと、どう思うの前に…。どうしたのその服?」
「楓に改造してもらったの」
    わー、呼び捨てになるぐらいには仲良くなったんだなー…、じゃなくて、
「あのー楓さん?」
「どうしたの?」
「男子の制服をどう改造したところで、こうはならんと思うんだが」
「あぁ、これはね。随分前に作っていた、着用者の性別に合わせて服が変わる装置を取り付けただけよ」
「何でこんなにピンポイントな装置を作ったんだよ?」
「こんなこともあろうかとってやつよ」
    ねーよ。いや、あったけど。
「それにしても面白い体質よね。性別が変わるって」
    ・・・・っあ、そっか。ついさっき赤羽に話したから違和感なかったけど、楓には言ってなかったな。ってちょっと待て。
「どうして知ってんだよそれ!?」
「僕が教えたからだよ」
    なんでもないことのように真也が答える。
    面倒事になりかねんから、できるだけ秘密にしときたかったんだが…。
「赤羽君に話してたでしょ?だからいいかなって」
「あれ?俺がその話をしてた時、お前まだ教室に居なかった気が…」
    えっ!?なに、恐い。真也はニコニコしてるだけだし。
「別に良いんじゃないか?楓もなかなかに優秀だし、実際本人は満足しているみたいだしな」
「そうよ、お兄ちゃんだけじゃなくて私にも頼りなさいよ」
    頼ってか・・・。
    だったらこのヤンデレ?メンヘラ?を何とかして欲しいのだが、まあ、無理だろうな。
    真也は元々おかしかったし、楓はもっとやれやれって考えているが丸わかりな表情をしてるし。
    赤羽に関しては、面白いデータが取れそうな方を優先するだろうし。
    俺は物凄く頼りにくいという言葉を呑み込むと、
「赤羽にうちの女神に会ってもらってから、頼るかどうかは考えるよ」
と、返事を先送りにする事にした。
「なら、放課後になってからだな」
「えっ、お兄ちゃん今日翠の家に行くの?私も行きたい」
「なら僕も行っていいかな」
    一応許可を得るという形で聞いてはきているが、二人の目は『駄目と言われても行く』と言っている。
    どうせ勝手に来るならと、俺が「別にいいよ」と許可をだすと、
「「当然ね(だね)」」
    と、ある意味では予想通りの返事が返ってきた。
    そんな様子を見ながら俺は、ミィファに二次元専用の隔離空間でも作ってもらうかと現実逃避するのであった。

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