恋愛の女神に会ってから俺の日常が暴走している

丸石 つぶ

9… 変態には変態をぶつけましょう。

    勝手に約束を取り付けた楓を見送ると、次は誰かが後ろから抱きついてきた。
    この流れで知らない奴ってのは勘弁してもらいたい。
    ・・・・だが、この背中に当たる感触は多分…。
「だーれだ?」
    あー良かった。知ってる奴だった…っておい!
「真也だよな?」
「そうだよ。おはよー。」
「おはよーじゃねーよ!ちょっとこっちこい。」
「んー?」
    あーもう。周りの目が痛いよ。
    朝からイチャイチャしやがってっていう目だよあれは。
    それはそれとして──、
「なあ真也?外で女の子になるなって言わなかったっけ?」
「そうだけど…、これには理由があって…。」
「ほう、聞かせて貰おうか。」
    とその時、学校のチャイムが投稿時刻5分前を告げる。
「やばっ、とりあえず教室に行くぞ。その姿、戻しとけよ。」
「えっと、・・・・出来ないの。」
「・・・は?」
    ちょっと待て、リキョウは性別を変えたいと思えば変えられると言っていたはずだ。
「・・・翠君が女の子と登校してるのを見ちゃってね…、なんかモヤっとしてたら女の子なちゃってて。」
    無意識に女の子なりたいとでも思ったのだろうか?
    もしかして嫉妬だろうか?のちのち「あなたを殺して私も死ぬ」とかいいだすのだろうか?
「翠君は僕のものだから…、勘違いしている子にはわからせてやらないと…。」
    お前のものじゃないとか、ブーメランだよとか言えば、そのまま殺されそうな雰囲気だった。
    そうこうしているうちに時間は刻一刻とすぎていく。
    何か良い手は───あ!!
「真也、そのままで良いのか?教室に入れば透がいるぞ。」
「──え…。」
「その姿を透に見られたらどうなるだろうなぁ?まさか性転換しているとは思わないだろうからなぁ?」
「あっ…、あぁっ…。」
    言い方が悪役っぽかったかもしれないが、間違いなく動揺している。
    だが、これも当然と言えよう。なぜなら真也は透がトラウマレベルで苦手だ。
    まあ、会うたびにセクハラかまされたらこうもなるだろう。
    あのときなにがあったのかは知らないが、無理やり女装させられてから、明らかに苦手度が増していたし。
「えっと…、すぐ戻すから…。教室についたら守って…ね。」
「はいはい、分かってるから。ただ、今後こんなことがあったら責任はとらないけどな。」
「うん…うん。もう二度としない。翠君のまえでしか女の子にならないから。」
    そういうことでじゃないんだけどなあ。
    とりあえず、元凶にはもう少し反省してもらおう。
「─これで大丈夫だよ。教室に行こう。」

    その後教室に向かった俺たちだったが、ギリギリ間に合った。
    とはいえ、クラスメイトは俺を登校時刻ギリギリまで女の子とイチャイチャしていた奴として扱っていた。
    俺と同時に入った真也はイチャイチャしていた俺をつれてきた良い奴という扱いだった。
    さすがに理不尽すぎるよねこれ。

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