赤いフェンリルとドラゴン

ザクキャノン

勇猛果敢

   ジョン少佐は伝令と共に連隊本部に向かった。
   連隊本部で連隊長の役目を果たしているギル大佐に呼ばれて作戦会議室に入る。
   「同志ジョン少佐、香椎浜、和白方面占領によくぞ貢献してくれた。これからは古賀と新宮が落とせる見込みだし紛れ込んでる反動分子も挟み撃ちにできた。最終合流地点は一部で古賀を制圧して新宮にも陣地を気づけば北九州を落とす。その時は北九州もよろしく頼む。」
   ギル大佐は内示を言い渡す。
   「同志ギル大佐、必ず修羅の国の輩を黙らせてやります。では…」
   ジョン少佐は伝令と共に作戦会議室から出た。
   古賀市は博多方面から海側からの上陸でほとんど制圧された。海軍陸戦隊の動きで浜辺は揚陸船だらけでフリゲート艦まで来航した。
   高麗人民軍の偵察兵が工業地帯の無人化した工場に展開している自衛隊の後方支援部隊の陣地を見つけた。
    偵察兵は無線で報告をしてその場を立ち去る。
    夜になり高麗人民軍のゲリラ部隊が遊撃戦を仕掛けるために工業地帯に潜入した。
   「あそこに後方支援部隊がいる。おそらく整備部隊とかだろう。叩くだけ叩こう。」
   分隊長が部下に言った。
   狙撃手が歩哨に立っている自衛官の頭を狙い撃ちにした。もちろん消音器付きだった。陣地に忍び寄って休憩で寝落ちしていた自衛官を後ろから腰付近とうなじをナイフで刺して制圧してクレーン車に爆薬を仕掛けた。
   ゲリラ部隊はその場を離れて爆薬を起爆して整備部隊を襲撃する。爆音に反応した自衛官が急いで小銃を取り出して対応に行くが先読みされてあっという間に制圧されてしまった。
    和白地区占領に貢献したジョン少佐は昇任して中佐になった。そのままヘリに乗って宗像市の山間部にある野営地に向かった。そこで海の中道水族館を占拠した部下であるペク軍曹と再会した。
   「久しぶりです。同志ジョン少佐。あの任務以来、軽歩兵指導局に転属することになりました。次期、曹長に昇格します。」
   ペク軍曹は笑顔で報告する。
   高麗人民軍本部は主要都市となる北九州市を高飛び形式に侵攻するように前線部隊に命令した。遠賀郡は脅威的なところがないと判断しと思われる。
     翌日、福岡市では雨が降りだしてはぐれ者となった島原は私物の迷彩ポンチョを着て倒壊したビルに身を隠した。高麗兵の死体から回収した携行糧食を口にして腹ごしらえをして水分も取った。高麗軍と警察隊は雨具を着て巡回している。
   「執念深い奴らだ。悪魔もさぞかし粘り強さに感服だろう…」
   島原はため息をついた。
   小倉駐屯地の普通科連隊から選び抜かれた40レンジャー小隊の緒形達は高機動車で宗像市まで向かい潜入をすることになった。緒形は自分が使う小銃の手入れを行う。
   「お前、そこまでする必要ないぞ。」
   レンジャー同期が緒形に言った。
   「これから長期戦が予想されるしな。」
   緒形は照門を覗きながら返した。
   作戦は夜間に行われることになり暗視スコープやゴーグルまで用意された。
   佐賀県から飛びだったAH64アパッチ戦闘ヘリが対空砲火を浴びて不時着した。運良くパイロットは無事で脱出してから香椎花園を駆け抜けた。
   「チョンジ!(止まれ!)」
   現地の花をヘルメットに取り付けて偽装した茶褐色野戦服の高麗兵達がパイロットに銃口を向けて叫んだ。
   パイロットは必死になって駆け抜ける。
   高麗兵はAK74を連射してパイロットを射殺した。
    高麗軍は学校や病院を襲わず重要そうな場所のみを占拠したり襲撃をしたりしていた。学校の門前には警察隊が警備を行なっていた。非行少年を暴力で袋叩きにして従えるようにしている。
   「おはようございます。」
目つきが鋭い警察隊員が妊娠した通りすがりの女性に挨拶をした。
    女性は会釈をしてその場を去って行った。
   夜が来て高機動車を走らせて宗像市の山道に到達した40レンジャー小隊は急いで下車をして山の中に入って行った。高機動車は積載された偽装網で運転手と助手席に座っていた隊員で被せるだけ被せて形になりそうな場所を落ち葉でごまかした。いつでも出せるようにしてタイヤだけを周りの石などで隠す。
   40レンジャー小隊は暗い獣道を忍び足で歩き足跡がつかないように落ち葉で埋もれた場所を通るようにした。
    ちょうど下山するところに天幕で展開された高麗軍の陣地を見つけ双眼鏡で覗く。
   「歩哨が2人いる。」
   小隊陸曹の二宮1等陸曹が緒形に言った。
   緒形とレンジャー同期、2人で銃剣で歩哨2名を排除する。そこから分散して偵察を行うが巡回に回っていた高麗兵に見つかって警報を鳴らされた。
   緒形達はバタバタその場を離れて山間部に逃げ込む。高麗兵達が自動小銃を連射して集中放火を浴びせるようにしていった。
   緒形は下り坂で転げ落ちて滑っていった。
   「危ねえ危ねえ。V8も無事だな。」
   緒形は装具を点検していた。
   装具点検を終えたぐらいの時に敵兵数名がライトを照らしてきた。緒形は地面と一体化するように伏せる。
   緒形は額に汗をかかせながら願うように動きを止めた。
   「すばしっこい奴らめ。行くぞ。」
   敵兵は諦めて後退していく。
   小型無線機は転げ落ちた勢いで壊れてしまい小隊長と連絡がつかなくなってしまった。
   宗像市にいる高麗人民軍の特級狙撃手のイ・ボンチョル伍長はドラグノフSVD狙撃銃を拭きながらニヤついてた。
   「ツァスタバに変わってこれを使う時が来るとはな。」
    イ伍長はスコープに損傷がないかも点検して迷彩のヤッケを野戦服の上から着た。
    イ・ボンチョル伍長は南米の共産ゲリラの軍事顧問として北朝鮮代表で行った経験があり正規軍と米軍の特殊部隊員を狙撃して10人以上殺傷した実績がある。
    直の隊長となるチャウ・セジョン少佐のところへ向かった。
   「歩哨2人が殺害された。敵は自衛隊のレンジャー部隊だ。ここに潜伏している。見つけ次第殺せ。米帝の首を取ってきたお前ならやれるはずだ。」
    チャウ少佐は立ち上がって言った。
   「お任せください。同志。ネズミ一匹とも逃がしたりはしません。」
    イ伍長は不敵な笑みを浮かべてそう言って去っていった。
   緒形は陣地から離れて作戦を立て直した。
  「敵の使用武器はAK74とM16、K2か。M16とK2の弾倉なら89も使えるな。」
   緒形は私物の双眼鏡で確かめる。
   1人でタバコを吸っている高麗兵を銃剣で仕留めて呼び弾倉を奪った。そこにAK7
4を装備した仲間の兵士が出てきて切り替えレバーを扱うところを89式自動小銃で狙撃してその場を離れた。
    銃声を聞いた兵士達が起き上がって銃を持って駆けつけていく。当然、陣地まで響いていた。
   「起きろ!起きろ!銃声がしたぞ。昨夜の奴らだ!」
   高麗兵の不寝番が同期や後輩を起こす。
   「見つけ次第、殺せとの命令だ。しかし捕まえるのも良しだ!」
   下士官が下級兵士に告げた。
   「クソ!レンジャー野郎のせいで俺たちの睡眠時間が台無しだ。絶対ぶっ殺してやるぜ!」
   「先輩殿。楽しみの狩りが始まりますね。」
   「手柄を立てればこっちのもんさ!」
   高麗兵達は士気高く銃声の方へ向かった。
   緒形は他の仲間が見つかるまで山道や草村を進んでいき木陰に身を隠した。
   ソ連製軍用ジープから兵士達が降りて捜索を始める。1人、陸自迷彩の服を着た男が高麗兵2人に連行されているところが見えた。畑の隅に隠れているところを見つかったようだった。
   双眼鏡で見ると自分のレンジャー同期であることが分かった。
   「おい、嘘だろ!レンジャー教育ではそう簡単にやられるほど馬鹿ではなかったのに…」
   緒形は舌打ちをした。
   装甲車から兵士がさらに数名おりてきて20人以上でレンジャー同期である隊員を囲っていた。
   兵士の1人がレンジャー隊員の胸ぐらを掴んで張っ倒した。
   隊員は兵士達の姿に動揺している。兵士は聞き慣れない言葉で話している。
   「こいつ、俺らにビビってるぜ。ハハハハ」
   髭を生やした兵士が笑いながら隊員を蹴って言った。
   脱がした鉄帽を茶褐色の野戦服を着た兵士がサッカーボール代わりにして蹴っている。
  「この野郎めが!ゴキブリ共が!」
  ヤクザ風の顔立ちで顔傷が目立つ兵士が胸ぐらを掴んで起こして腹を殴ったりした。
   隊員は苦しむように痰を吐き出した。
   「こいつ、汚ねえ!吐きやがった!おい、その痰を食えや!」
   他の兵士が暴言を吐いて蹴っていた。
   また今度は顔を踏みつけようとしたところ「ちょっと待て!いたぶり過ぎると死ぬぞ!せっかく捕まえたんだからな。」
   高麗軍の小隊長と思われる兵士が現れた。
   小隊長のとなりにイ伍長もいる。
   小隊長はサン・グニョン少尉。元は旧韓国軍特殊部隊707の隊員で今は機械化歩兵で小隊長をしている。
   「どんな目的でこっちに来た?」
   サン少尉は日本人レベルに上手い日本語で尋問する。
   隊員は無言で何も言わなかった。
   「黙秘権か?ん?偵察か?それとも後方撹乱?破壊工作か?」
   サン少尉はまた尋問を始める。
   「困ったな。吐かないものは仕方ない。」
   サン少尉はしかめっ面で後ろを向いた。
  「同志諸君は退散せよ。」
   そう言ってイ伍長に耳元で聞き取れないことを言った。
   サン少尉はその場を去ってイ伍長が「立て!」と叫んで隊員を立ち上がらせた。その後に旧韓国軍で使用されていたと思われるベレッタM9ハンドガンを取り出して胸と腹部を数発撃ち込んで射殺する。
   緒形はショックのあまり「ゲッ!」と言ってそっぽを向くと同時に木の根につまずいて後ろへ倒れた。受け身を取って立ち上がり木陰に隠れたところイ伍長が緒形がいる方向へ向いた。イ伍長は特徴的で分かりやすく片目に黒い眼帯をしていた。片目は米軍特殊部隊デルタフォースとナイフ戦で決闘した時に負傷している。韓流時代劇に出てくる武人みたいに濃い無精髭を口の上とあごに生やしており迷彩ヤッケを着て首後ろに朝鮮人民軍ヘルメットをかけている。頭には赤い星のマークが付いている野戦用帽子を被っていた。
   ずっと緒形がいる方向を向いて直感でそこに隠れている事を悟った。
   「小隊長!向こうにレンジャーがいます!部隊を動員させてください!」
   イ伍長は叫んだ。
   「なんだと!おい、戻ってこい!敵が向こうにいる!今持っている弾丸を全弾使い切る勢いで撃て!」
   小隊長が叫んで命令をする。
   兵士達が歓喜を上げて乱射して緒形の方向に銃弾が飛び交う。
   緒形は転びながら走り続けて山の木を利用して逃げた。
    装甲車から機関銃を連射して牽制を始める。
   緒形は銃弾が飛んでない方向へ駆け抜けた。兵士達が後を追う。流石に小隊長達もどこかに退避してると確信して完全にはぐれたまま逃げることになった。
    緒形は裏へ回って背を向けている高麗兵を射殺して複数で固まっているところに手榴弾を投げ込んだ。高麗兵の数人は弾き飛ばされて爆死して生き残った兵士が緒形がいる方向に射撃を始める。緒形は身を隠して再度撃ち返す。兵士は木陰や岩に身を隠しその隙に大股で走って太い木の陰に隠れた。弾倉を取り付け変えて射撃を始める。
   「戦い慣れしただけあるな。そちらがその気ならばこちらも遠慮しない!」
   緒形はそう呟いて走りながら射撃をして2人の高麗兵を撃退した。
   「向こうへ逃げたぞ!追え!」
   ヤクザ風の兵士が叫んだ。
   緒形は木を頼りに進み倒れた木にダイブする。ダイブした後は匍匐で進んで振り向いてないところから姿を出して射撃をした。他の兵士が頭を撃ち抜かれもう1人が胸に直撃して死んだ。
   ヤクザ風の兵士が突撃してきて肉弾戦になる。緒形は銃の床尾で立ち向かうがヤクザ風の兵士が振り払って蹴りを見舞いした。
   「テコンドーか?なかなかやるな。」
   緒形は小銃をその場に捨てるように置いて銃剣を取り出して立ち向かった。
    2人とも熱烈のナイフ戦を繰り広げる。2人して転げ落ち先に起き上がった兵士が緒形を持ち上げるようにして膝蹴りをしてうずくまっているところを空手特有の回し蹴りをして突き飛ばした。
   突き飛ばされた緒形は運良く目の前にあった敵の小銃のところにわざとらしく転げ落ちて小銃を拾い兵士のところに向けて引き金を何度も引いた。
   兵士は銃弾を膝や腹部や胸、肩に喰らい血を吐きながら絶命した。緒形は泥まみれになりながらも自分の置いた銃のところに行って拾った後は高機動車が停めてある場所まで向かった。
    「危なかったな。あの蹴りを顔面に喰らえば確実に即死だな。仮面ライダーを一体ぐらい倒せる能力があるだけあるな。」
    緒形は安堵の息をついてタバコに火をつけて吸った。
    死んだレンジャー同期の仇を取れたとはいえ眼帯しているイ伍長を倒さない限り仇を取れたとは言えないと緒形は思っていた。
   タバコを吸い終わるタイミングで銃弾が目の前に飛んできた。高機動車があった場所とは別の場所に逃げて崖に生えている苔で滑ってそのまま落ちいく。狙撃してきたのはイ伍長だった。緒形が滑っているところでも射撃をしてくる。
   「さっきで確実に殺せたのに。絶対あの眼帯。俺を追い詰めて楽しんでるな…」
   尻を叩きながら緒形は呟いた。
   イ伍長は冷静になって弾倉を交換する。
   一方、和白地区で島原が住民の協力を得ながら高麗警察隊にゲリラ戦を仕掛けながら自分の中隊がいる陣地を目指していた。
   警察隊車両や軍用ジープの空気を抜き、ガソリンを使用する発電機に灯油を入れて破壊工作を行った。敵兵と乱戦して追われればたちまちゴミ箱や幅の広い溝、公衆トイレに身を隠しやり過ごしていた。いくら殺しても永遠に湧いてくる高麗軍に対して半分心が折れていた。自衛隊の腕を過信し完全に高麗人民軍の実力を甘く見ていた結果そうなっていたことは自分でも分かっている。
   羽田は運良く装輪戦車乗りに拾われて無事、偵察戦闘大隊に復帰できた。持ち帰った情報全て小隊長に報告をした。
    一方、本州では電磁パルス攻撃されて首都圏を始めとして本州全体のインフラが崩壊しているという噂が流れた。意識の高い自衛官は本格的に戦争状態になったことを悟った。世間の話題となっている情勢ではアメリカ政府は国土防衛、資源が取れる外国に目がいっており日本と半島に目を向けている場合ではなかった。貿易していた中東諸国内でも反米運動が広まりつつあり政治家もアメリカを敬遠していた。軍備も縮小して移民以外の純アメリカ人を徴兵することがなくなった。
    ペク曹長は24時間スパンで部下を率いて岡垣町まで足を運んだ。目的地は航空自衛隊の基地がある芦屋基地だった。無駄な装備品を取り付けず必要最小限の装備を身につけて移動をしている。
    福岡市地区はとっくに民間人は解放されて軍部と警察隊の監視のもとで日常生活を過ごしていた。バスは無料バスになりタクシーは廃止された。失業者は乞食生活になり街にはホームレスが増えてき始めた。闇市も盛んになり警察隊の目が届きにくいように商売が行われていたが警察隊も多少なり見逃している。
    暴力団が廃棄したと思われる武器を不正に売買していた密輸業者が逮捕されて処刑される事件まで起こり抜き打ちで闇市調査が入るようになった。
    自衛隊の情報部隊別班が統括地域に潜入して西部方面総監部に報告をしていた。もちろんR部隊の情報提供支援も行っており高麗人民軍が動きを調べている。
    別班は廃墟や地下倉庫を使って通信機やパソコンを用いて諜報活動を行って密かに自衛隊に自らが得た情報を送っていた。R部隊は弾薬も底をつき89式自動小銃を捨てて高麗兵から鹵獲したAK74を使用したり一部では共用で使えるM16用弾倉を回収して弾薬調達をしていた。
    宗像市において緒形は住宅地まで到達して民家の庭に身を隠した。パトロールをしている兵士が軍用犬を連れてきて緒形のところに向かってきた。緒形は迅速に射撃をして軍用犬を殺しパトロールの兵士と銃撃戦を繰り広げる。
   「お遊びの時間はここまでだな。仲間の仇を取りに行かせてもらおうか。俺がここで死ねば団結力の強い福岡のチアガール達の笑い物になっちまうからな。」
    緒形は民家の車庫に隠れて照準すべき距離を確認した。
    兵士が駆けつけてきたところを連射で射撃して撃退してその場を去っていく。無線から敵の仲間が何か言っていた。
    敵の装甲車が塀を壊して現れ、緒形は手榴弾を持って上に乗ってハッチを開けた後にピン抜いて入れ込んで退避した。車内は爆発を起こし動きが止まった。
   ジープが現れて緒形は搭載された機関銃で攻撃を仕掛ける。緒形が撃った機関銃の弾が運転手に直撃して民家のガスボンベに突っ込んだ。見事に大爆発を起こし周囲の部隊が駆けつけてきて緒形はその場を離れた。
   「派手にやられたな。装甲車乗りは手榴弾で御陀仏だな。」
    確認に来た兵士は驚いている。
    「大変な事が起こった。さっき捕まえたレンジャーの1人が脱走した。隙をついて見張りを殺して銃まで奪っている。他が捜索に当たり始めてる。」
   花崗岩迷彩服を着た兵士が仲間に伝えた。
   逃げ出したのは緒形の後輩となる柿木陸士長だった。柿木はAK74を持ち出している。戦闘服はボロボロになりネームが剥がれ落ちていた。 
    ちょうど兵士に追われているところ緒形が現れて支援射撃が始まった。兵士達は銃弾で倒れ緒形と柿木は運良く合流できた。
    「敵の装具だがこれをつけろ。」
   緒形は柿木に言った。
   緒形は柿木を連れて山に逃げた。その時、狙撃手のイ伍長が現れた。ドラグノフ狙撃銃で撃ってきて2人は遮蔽物に隠れた。
   「クソ!あの眼帯がいる。奴に気をつけろ!俺の同期を殺してそしてなおかつ射撃能力が高い!」
   緒形は柿木にイ伍長の事を教えた。
   イ伍長は移動をして狙撃ポイントを変える。
   「できるだけダッシュで遮蔽物に移動しろ!」
   緒形は指示を出す。
   柿木は猛スピードで走って遮蔽物に移動して緒形は射撃を始めた。
    「クソ!2人相手は厄介だな。」
   イ伍長は舌打ちをした。
   柿木が姿を現してイ伍長が柿木にスコープ内に捉えたところを緒形が89式自動小銃の切り替えレバーを切り替えて射撃を始めた。イ伍長の腰と脇腹に命中して彼は命中した患部を見て最後の力を振り絞りながら銃口を緒形に向けた。緒形はためらわずに引き金を引き続けて胸の下に命中させイ伍長はそのまま倒れた。
    「高麗社会人民連邦万歳」
   イ伍長はそう言って息を引き取った。
   緒形は柿木と共に高麗軍のジープに乗って小隊長の捜索に向かった。
    宗像市の小隊規模の部隊は大打撃を受けチャウ少佐は頭を抱えていた。これからは旧韓国軍の一部隊だった200大隊が補充で到着して活動することになりチャウ少佐は別部隊へ移動となった。
   宗像市の住民は一時的に公民館へ避難させられて目の前には憲兵が警戒にあたっていた。道路には土嚢が積み立てられ装甲車が即応態勢を取るために停められている。
    一方、芦屋基地周辺に到着したペク曹長達は工作員が隠れ蓑にしていたバーに向かった。当然、民家から盗んだ服を着て街中に入り込んだ。
    連絡員が奥へ案内を始める。
    航空自衛隊基地が空軍によって空爆されてレーダーが破壊された。他に対空ミサイルまで攻撃されて防空機能が失われた。
    ペク曹長率いる部隊が潜入して軍用犬を殺傷して警備隊員を銃撃して始末した。消音器付きの自動小銃で狙撃して居眠りしている自衛官を殺傷する。放送室にいる制服姿の自衛隊を後ろからナイフで刺して殺して放送室の発電機を破壊した。
    緒形は小隊長の死体を発見した。
   「流石に逃げきれはしなかったか…検閲じゃ再検閲もんだし完全にやられたな。」
   緒形は高機動車の装甲板をもたれかかってうなだれた。
    小隊長は銃撃戦の末、身体中に弾丸を喰らっていた。同時に高麗兵の死体もあって2人同時に死んだと思われる。
    広域多目的無線機で救援を求めるも反応しない。
    「クソ!繋がらない!この無線機が壊れてるわけでも電波がいいのに!」
   緒形は無線機の受話器を投げつけた。
   ちょうどGPSがありそれを頼りに助けが来ることを信じた。
    「とりあえず北九州方面に行くぞ。」
   緒形は柿木に言う。
   柿木は頷いて高機動車に乗り小さいバリケードを打ち破って邪魔な高麗兵を引き殺してでも宗像市から離れようと考えていた。
   平野が多い久留米市の高良台では高射特科連隊が対空ミサイルを展開しており対空戦に備えている。偽装網をしっかり取り付けて上空から見えないようにして来るか分からない敵を待った。
    大野城市まで進撃した機械化歩兵連隊は山間部に拠点を作り選抜された軽歩兵指導局出身のゲリラ兵を集めて久留米市に向かう準備を始める。
   検問を敷いている予備自衛官を殺害して89式自動小銃と装具を奪い、車両の中にある個人物品の着替え用の戦闘服を奪った。
    「この服があれば何とか敵の陣地に潜入出来るな。これで対空ミサイルの破壊ができる。」
   ゲリラ兵は選び抜かれた兵士達に自衛隊迷彩服を渡す。
    戦車を先頭に開けた道路を前進して行進を始めた。左右に機関銃手が警戒して見回していた。
    宗像市において緒形はようやく脱出して岡垣町の幽霊坂に到達した。夜になって霊気が漂う中、敵の動きに注意していた。緒形にとって幽霊よりも高麗兵の方が怖かった。柿木と共に巡回している敵兵を排除して弾薬を回収してから進んでいく。ちょくちょく高麗軍のジープがパトロールに来て来るため身を隠しながら移動をしていた。
   上空を見上げるとホーカム戦闘ヘリがライトを照らしながら2人を探している。もう脱走と長距離移動したことを悟られていた。福岡県の一部は完全に高麗領となりもはや敵地となっていた。
   岡垣町の田んぼ周辺には高麗軍の装輪戦車が通行しており疑わしき場所を砲撃していた。山間部にも山狩りが行われ緒形と柿木を追い詰めようとする。
   岡垣町体育館は高麗軍が住民を避難させて周辺の住宅地を無人化するようにした。
    緒形と柿木は平野を迂回して住宅地に入り込み周囲に誰もいないことを確認する。
   「緒形班長、向こう敵の軍用トラックです!」
   柿木が報告をした。
   「まずいな。今からその場を離れるぞ!」
   緒形は指示を出しながら一軒家に逃げ込んだ。
    軍用トラックから高麗兵が降りてきてこっちへ向かって来る。鹵獲した拳銃で高麗兵を撃ち殺してトラックとまとまった兵士のところへ手榴弾を投げ込んだ。
   兵士は慌てて逃げるがすでに遅く爆風で塀に打ち付けられて絶命したりトラックの爆発に巻き込まれると同時に爆死した。
   「時期に増援が来るだろう。移動しよう。」
   緒形はそう言って柿木と一緒に遠くへ駆け足をした。
   岡垣町の海には駆逐艦が何隻も航海しておりミサイルを撃ちはじめた。放たれたミサイルは偵察用の自衛隊機に命中した。
   「日帝の偵察機を撃墜しました。」
   海兵が艦長に報告をする。
   「今のでいい。報告されては困るからな。」
   艦長は咳き込みながら言った。
   緒形と柿木は再び高麗軍が使用しているソ連製ジープで芦屋を抜けて八幡西区の浅川まで向かった。この先に待っていたのは浅川学園台をはじめとしていたるところに高麗軍の検問が敷かれ降下したパラシュートの布があり北九州が占領されつつあるという現状だった。
    

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