赤いフェンリルとドラゴン

ザクキャノン

序章

  20XX年。日本の海を越えて隣の朝鮮半島では韓国で急増する北派、共産派の大物の策略により念願の祖国統一を実現させた。しかし反共産派などの勢力や軍隊がクーデターを起こすも強力な戦力を持つ朝鮮人民軍の手によって敗退。新国家として高麗社会人民連邦が誕生した。軍隊は朝鮮人民軍と韓国軍を解体して新たに合併させて高麗人民軍が発足する。
   
   福岡県 能古島
   大型の船が何隻か博多湾を航海して能古島にたどり着いていた。海上保安部が臨検を行うとボロボロの迷彩服を着た1人の男性が片言の日本語で海上保安官に助けを求めた。
   「私達は日本に避難してきました。女や子供も沢山います。分かりやすく言うなら脱北者になります…」
   そう言って土下座を始めた。
   海上保安官達は困惑する。
  
  玄海灘沖
  漁船が何隻か航海しており警備を避けるようにして波を超えていた。
   「向こうの大地には祖国を惜しみながらも潜り込んでいる同志(トンム)達がいる。合流できたら指示は別で示す。」
   まとめ役らしき男が乗船している者に告げた。
   まとめ役らしき男はカーキ色のミリタリ
ージャケットにカーゴパンツ、コンバットブーツを身にまとい黒い帽子を被っていた。名前はジョン・イルファン。元は朝鮮人民軍の第8特殊軍団出身で現在は偵察総局の工作員で部下を率いている。階級は少佐。
    部下達はシャツやジーパン、背広などを着ており街の通りで見かける一般人と変わらない服装をしていた。漁師の格好した船員が木箱を持って来てジョン少佐が開いた。中にはチェコ製を祖国がコピーしたCZ75ハンドガンに弾倉が入っており他の木箱からはAK74やツァスタバM76狙撃銃 RPG7ロケットランチャーが出てきた。
   それぞれ武器をギターケースやゴルフケース、バットケースに入れて手持ち出来るものは登山用リュックに入れ込んだ。彼等の計画は福岡県を手玉に取るために先行して県民を人質に取り街を混乱に陥れて増援の部隊が来るまでの時間稼ぎをすることだった。全国には浸透した工作員が潜伏しており今回主役となるのが福岡市、北九州市に潜伏している工作員であり展開できる各場所を抑えてあらかじめ国に暗号で知らせていた。
     
   朝鮮半島 板門店 訓練所
   「ダラダラすんな!急げ!」
   教官らしき兵士が叫ぶ。
   「教官殿、これはいったい、何のための訓練なんですか?」
    下士官が教官に質問した。
   「そんなことはどうでもいい!とりあえず集中しろ!」
   教官は怒鳴るように言った。
   黒いニット帽に迷彩ヤッケを着た特殊部隊員らしき兵士が市街地戦闘訓練をしていた。まるで何かに備えてるかのように。
   38度線の国境線と有刺鉄線は撤去されて地雷も除去されて野外訓練に使う演習場に変わっていた。

   福岡県 玄海灘 
   深夜1時、人気のない港に到着した工作船からはジョン少佐と部下達が降りてきて待ち合わせしていた連絡員と合流した。
   「祖国の総局からは話は伺っております。今のところ公安による尾行もありません。ご安心下さい。」
   連絡員はそう言ってジョン少佐をエスコ
ートし始める。
    朝鮮系住民でスパイ活動に協力している土台人が用意したアジトにそれぞれ招き入れた。土台人と言うのは在日朝鮮人やハーフ、訳ありの純日本人で敵対工作員に協力している内通者を示唆している。アジトは廃墟を使い中で自分がリュックに入れている野戦服を点検した。
    季節は秋頃になり多少、涼しくなった程度だった。その他、土台人がネットから買い集めた自衛隊の官給品そっくりの迷彩戦闘服と半長靴を用意しており有事の際に変装に使うつもりでいた。
    翌日、ヘリボーン降下したり上陸に容易な場所を探しに和白の住宅地と田舎が混じり合ったような町に出向いた。ヘリから降下するに都合がいい場所は上和白にあるゴルフ場でジョン少佐の部下の1人であるホン・チョルジン少尉が福岡県地図に今いる場所を降下ポイントとしてチェックしてマーカーで印をつけた。
   別働隊のボー・スンホン少佐ら特殊工作員は能古島に潜伏しており中継地点と各観光名所を偵察していた。唯一の女工作員のキム・ソヒョン中尉は駄菓子屋やお土産屋を眺めて名物の試食をしていた。
   「あまり店員や他の観光客と親しくなりすぎないようにしろ。」
   ボー少佐はキム中尉に忠告した。
   夜になり、ジョン少佐達は和白の公園で休憩を取っている時に地元の暴走族達が単車を乗り回していて偶然目があった族のメンバーが近寄ってきた。
   「おい、なんや!俺らをさっきから変な目で見てるけどよう」
   暴走族の1人が喧嘩腰に絡んできた。
   ジョン少佐の部下ペク・カロン軍曹に突っかかった。ペクは顔色を変えず反応もしていなかった。
    「シカトかこら!はい、シカト入りました〜。俺らを舐めてます〜。」
   暴走族達が小馬鹿にするようにジョン少佐達にテンション高めに行った。
   暴走族メンバーがペク軍曹を小突いた瞬間、ペク軍曹が小突いた暴走族の腕を掴んで顔を殴った後、片目を二本指で突いて潰した。生々しく血が流れ出し眼球がグロテスクな状態になっている。断末魔の叫びを上げた暴走族メンバーにとどめを刺して急所に打撃を加えて殴り殺して襲いかかって来た残りの暴走族を一網打尽にして殺した。幸い暴走族の人数は3人程度だったので手軽にすんだ。ただやってはいけないこととして避けるべき戦闘をしてしまった。
    「バカ者!何をしてる!仮に相手がヤクザや素行の悪い輩でも一般人だぞ!」
    ジョン少佐は怒っていた。
   「まあ、やってしまったことは仕方ないさそのままにしてもまずいから死体を隠すぞ!」
   ホン少尉は死体を隠すことを提案した。
   近くの人が通らなさそうな山にコンパクトに出来るスコップで長時間穴を掘って埋めた。作戦決行前に死体がバレて調べられたら面倒くさいことになることは目に見えている。
    ペク軍曹はテコンドー、北朝鮮特有の殺人格闘である撃術に精通しており喧嘩早い性格だった。朝露国境でもロシアの国境警備隊と揉めた時も撃術を喧嘩に使って厄介払いに領海の島に転属させられた前科までもあった。
    幸い装備している拳銃は見つかっていなくて命拾いした。しかし手に血が付着していたため公園のトイレで入念に手を洗い移動の準備を始めた。
   「ここを長居してはまずい。その場を去るぞ。」
   ジョン少佐は命令を指示した。
   暗号からは偵察総局からの命令が来れば海の中道水族館を占拠して人質に取るように命令が下達された。
   海の中道で時間稼ぎをして低空飛行で輸送機を飛ばして落下傘降下させるか民間タンカー、貿易船に見立てた船で上陸するかは状況で決めることになっている。ヘリボ
ーン降下は深夜にさせれば問題ないだろう。撤退した米軍が取り残したのをアレンジしたステルス輸送ヘリにコマンド兵を乗せてロープで降りるのが無難な選択肢でもあった。
   作戦決行当日、ジョン少佐ら工作員は海の中道へJRに乗って向かい香椎駅から海の中道駅まで行って人通りが少ない路地へ出た。
   「これより我が祖国のために作戦を決行する。失敗は決して許されない。」
   ジョン少佐は部下全員にそう告げた。
   RPG7ロケットランチャーを装備した人員は外で待機して軽装備の要員を水族館内に忍び込ませるようにした。今回は警察の警戒も手薄でスムーズに行きそうだった。
    水族館内の受付で軽装備の要員がチケットを出して入館して行く。特に私服姿の工作員は旅行や登山用のリュックサックを背負っており側から見れば観光客にしか見えなかった。
    水族館内の警備員も異変に気付いてない状態で普段通り勤務している。従業員も接客やクレーム処理に追われておりジョン少佐達は蚊帳の外のように気付かれもしなかった。
    夏の終わりとはいえ、観光客が多くカップルや子供連れ、年寄りまで来ている。警察官もいたが少人数で警戒のために巡回しているだけで大した動きがなかった。
    それぞれ食堂や展示コーナーに展開してジョン少佐の指示を待つ。
   工作員達はすぐに拳銃や小銃を取り出せるように準備を始める。
    「今すぐ決行しろ。」
   ジョン少佐は小型トランシーバーで命令する。
    工作員達は拳銃や自動小銃を取り出して
「全員その場に伏せろ!」と片言の日本語で叫んだ。
   1人が回転式拳銃で天井を空砲で撃ちその場にいる来訪客を脅迫した。
   周囲はざわつき伏せる気配がなかった。再度、発砲して脅した。
   警備員が駆けつけて来たが他の工作員が自動小銃を単発で狙撃して殺害する。目の前にいた群衆はパニックになってその場に伏せた。
    「何だ!テロリストか?」
   状況を飲み込めていない観客は唖然としている。
   「何?映画の撮影?」
   他の人もまだ状況を理解できていなかった。
   工作員は1人を生贄に殺すことで群衆を黙らせて人質を各ポイントに集合させてから言うことを聞かない者には暴力で従えるようにした。
    放送室を制圧したジョン少佐はアナウンスを始めた。
   「我々はこの海の中道水族館を占拠した。我々は何者かというと高麗社会連邦の戦士として社会情勢の現実から逃げようとする腐った愚民どもで染まったこの国を立て直しにきたのである。その第一歩としてあなた方には人質になってもらう。」
   ジョン少佐は流暢な日本語で放送をする。
   「何バカな事をほざいてんだ。甲羅だか高麗だか知らねえけどよ。こんな脅しに屈するなんて思ったら大間違いだ。大和魂舐めんなよ!おめえらは支那チョンか?ん?」
   オラオラしたような男が小銃を持った工作員に楯突いていく。
   「まったく呆れた奴だ。自殺願望があるのかどうか知らんが。」
   ペク軍曹はCZ75ハンドガンで男の足を撃った。
   男はあまりの痛みに悲鳴をあげてうずくまった。
   「これで状況と立場がわかったろ?」
   ペク軍曹はニヤリと笑いながら言った。
   「おっと、それとみんな、携帯を全員出してもらう。警察に通報しようなんてバカなことは考えるなよ。そうすれば沢山の血しぶきが舞うことになるだろう。」
    ホン少尉が全員に告げる。
    人質は大慌てで携帯電話を取り出す。
    外には警察のパトカーが数台停まっており警察官が無線で応援を呼ぼうとしているところをロケットランチャー射手が近くにいる警察官を道連れにした。警察官は弾き飛ばされて即死して応援もままならない状況になった。周囲にいる住民達は慌てて逃げていき公衆電話に110番通報を始めるものまでもいた。
    県警では機動隊を要請して非番の警察官を呼び出して出動の準備を始めていた。
   水族館内にいるジョン少佐に連絡が入った。
   「同志(トンム)!たった今警察がこちらへ向かっているそうです。」
   部下が放送室に来て報告した。
   「とうとう本格的に始まったな。」
   ジョン少佐は呟いてニヤつく。
   警察は機動隊を動員して水族館周りを包囲した。交渉人を呼んで拳銃、警棒、手錠を回収して丸腰にしてから機動隊の案内の元、水族館に向かった。
   旧式のAK47を持ったジョン少佐の部下がボディチェックして放送室まで案内する。持っているのは要求を報告するための無線機だけだった。
    部下が小銃の銃口を突きつけながらジョン少佐の元へ向かわせる。
   「交渉人のお出ましだ。そこの従業員。コーヒーを用意しろ。」
   ジョン少佐は拘束を解かれた従業員に命令した。
    「ところであなた達は高麗社会人民連邦の工作員とおっしゃってましたよね。まず穏便に済ませるために要求だけでもいいので何かあるなら教えて下さい。」
    交渉人は落ち着いた口調でジョン少佐に言った。
   「まずは県警のリストをこっちによこせ。潜入捜査官とか特殊部隊とか沢山いるだろう。そいつらのデータを出すんだ。もちろん警察官全員の人事書類もだ。偽りの書類をこっちに出せばどうなるかは分かってるな?」
   ジョン少佐はメモ帳に自分が最初に要求するものを書いて渡した。
    交渉人はメールを打ってジョン少佐の点検を受けてから送信する。
   「それと時間が長くなりそうだから飲料水をたくさん用意しろ!人質はいたわらないとな。」
   次に飲料水を要求する。
   今頃は友軍が偽装貿易船で部隊を率いて能古島、そして福岡の港に向かっているところであった。
    「それともう一点言っておく。もし、俺たちを警察や自衛隊を動員して潰そうなら全国に潜伏している浸透工作員を総動員で動かして日本全国を地獄に陥れてやる。」
   ジョン少佐は忠告しつつ脅しを入れる。
   海の中道の広場や公園、大草原は戦後、自衛隊の空挺部隊が訓練で使う演習場だった歴史が残っている。この場所を上陸部隊の展開場所として占領すれば後発の部隊も上手い具合に増援に来れる。ジョン少佐はそう考えていた。
    能古島行きの工作船は到着して後は福岡市行きの偽装貿易団の到着を待つのみとなった。
    県警は密かに県警のエリートで構成された特殊急襲部隊SATを派遣する事を決定した黒いSUVを使って海の中道水族館に向かった。黒い戦闘服に防弾ベスト、MP5Jサブマシンガンを装備してハンドガンはUSPと呼ばれる角ばった物を使っている。
   基本SATは公にされていないため隊員は覆面を被って出動をしており当然、警察の名簿にも乗らないようになっていた。今回送り込まれたのはアメリカ警察のSWATで研修を受けたキャリアのある人材ばかりで署長も安心していた。
   「これで奴らの息の根を止められるな。今に見ていろよ。工作員共。」
   署長は自信満々だった。
   SATは人通りがないところへ迂回して水族館の裏口に向かった。
   「今からドアを開けるから合図したら突入しろ!いいな!」
   SATの分隊長が隊員にジェスチャーしながら言った。
    「GO!」
   分隊長の合図の元、隊員が突入して遮蔽物に身を隠す。
    突入したまではいいが防犯カメラや工作員が設置した盗撮機能のある隠しカメラの画面に映っており完全に姿は見えていた。警備員室にいる工作員がジョン少佐に報告をする。
   「たった今、裏口から警察の特殊部隊が入ってきました。」
   ジョン少佐の耳に報告が入る。
   「バカな奴らめ。裏を簡単にかかれるとはな。裏口付近にいる同志は奴らを迎撃しろ!遠慮せず皆殺しだ。行け!」
    ジョン少佐は怒鳴った。
   「誰の差し金でSATを送り込んだ?!」
    ジョン少佐は45口径のピストルを交渉人に突きつけた。
   「私は何も聞かされてませんよ。いきなり勝手に署長が要請したんでしょう…」
   ジョン少佐の迫力にびっくりして挙動不審になった。
   「なら署長を呼んでこい。こっちに来るように言え!」
   ジョン少佐はずっと45口径の銃口を額に突きつけながら言った。
   交渉人のメールが警察の方に届き、署長は余裕そうに立ち上がって捜査員と共に水族館に向かった。
    目の前にはジョン少佐が立っておりデータを元に作成した書類を持って片手に45口径のピストルを持った状態に立っていた。
   「まさかあんたが黒いゴキブリを送り込むとはねえ。なかなかいい度胸をしているよ。出世欲が強いのかどうか知らんが。」
   ジョン少佐は冷静な口調で警察署長に話しかけた。
   「どうしてもSAT送ってでも任務を遂行しないとまずかったから送り込んだだけだ。それにこんな愚かな真似をしておって。」
   署長は強気になって言った。
   「ゴタゴタうるせえ奴だ。警察の汚職記録をこっちに持ってこい。」
   ジョン少佐は怒り気味になっている。
   「そんなものあるわけねえだろ!あんた頭大丈夫か?」
   署長は小馬鹿にするように言った。
   「なら、死ね!」
   ジョン少佐はひとこと言ってピストルを署長の額を撃ち込んだ。
   署長は額に風穴開けると同時に後ろへ倒れた。人質はざわつき始める。
   「静かにしろ!署長と同じ目に遭わせるぞ!」
   部下が拳銃を発砲して叫んだ。
   福岡市の港に部隊が到着して船員に見立てた兵士達が降りてくる。
   「本部より入電。部隊が港に到着したそうです。」
    パソコンでハッキングする役割をする部下が報告をした。
    「部隊が到着。水族館に部隊が来るまで待機。」
   ジョン少佐は水族館に立て籠もっている部下に伝えた。
   防火シャッターで封鎖できるところに人質を集めて閉じ込めて残りの部下は迷彩服に着替えた。黒いニット帽を被って部隊と合流しやすいようにした。
    外で展開していた工作員が裏から待機している警察を襲撃をした。RPG7で機動隊のバスを破壊して盾を装備している機動隊に手榴弾を投げ込んだ。近くにいる警察官を射殺して制圧をして死体から武器を回収する。
   警察署にはつぎつきと不審な迷彩服を着た男や怪しい集団がいるという通報が相次いでいた。県警から福岡駐屯地にも通報が来て調べるも心当たりなく小倉も飯塚も久留米も同じだった。
    
    陸上自衛隊 福岡駐屯地 
   福岡駐屯地の師団司令部では幹部を集めて会議が行われた。
   「警察から迷彩服を着た集団が目撃されたと。今は情報保全隊が調査を行なっているがもしもの時は防衛出動の可能性がある。各部隊肝に命じて物心両面の準備をするように。」
   師団長は各連隊長に下達する。
  
   玄界灘
  工作船の船団は玄海島、能古島に到達してゲリラたちが山に篭って本土に上陸した部隊と同時多発的に蜂起するために待機していた。玄海島と能古島は自衛隊基地が無く決行の時は手軽に占領できる。
   陸上自衛隊の情報保全隊が民間車で目撃場所を偵察を行っていた。隊員が目にした場所に見覚えのあるものが映っていた。
   「あれは防大で棒倒しで業績を残した栄光がある榊2佐!一緒にいるのは半島の工作員かな。」
   隊員は双眼鏡で観察した。
   同行していた男は去っていき情報保全隊は榊2佐のところへ行った。
   「榊2佐。ダメですよ。敵国に情報を売るなんて。」
   情報保全隊隊員が詰め寄るところを迷彩服を着た男達が消音器付きのサブマシンガンで銃撃してきた。物の見事に制圧され榊2佐も殺された。
   博多沖には何隻もの潜水艦が海上保安庁の巡視船を監視している。
   警備は筒抜けで潜入が容易だった。
   潜水艦は巡視船に魚雷を撃ち込んだ。
   巡視船は見事に沈没して周囲から潜水艦が浮上する。
   福岡駐屯地では海上保安部からの通報でそのまま総監部に連絡するとともに早急に内閣の指示を仰いで防衛出動をする方針した。
    自衛隊は偵察部隊がいつでも出動できるように準備をして通信科、普通科連隊も出動準備を始めた。
   福岡駐屯地に所在する第4偵察戦闘大隊がオートバイの点検していつでも出動できる態勢を取った。
    香椎浜では上陸した高麗人民軍が陣地を作って天幕を建てていた。ほとんどは工兵中隊と歩兵部隊で後発の部隊が上陸しやすいように戦車道を作り始める。
    水族館を占拠していた工作員グループも部隊と合流して人質をトラックに乗せて広場に集めた。
    ジョン少佐達は迷彩服に着替えて博多方面へ向かった。
   その頃、第19普通科連隊一個小隊が出動して国道3号線を走行していた。遠くで検問があり検問をしていると思われる自衛官らしき男が、MPと記された腕章を取り付けており待機していた。
    「ここから先はお通りできません。」
   MPの腕章をつけた男がそう言う。
    「今は緊急時でここを通らないといけないんだよ。バカか!」
   口の悪い自衛官がオラオラと文句を言って73式3.5トントラックから降りてきた。
   「ここを封鎖してちゃ俺らが通れないだろ!」
   自衛官が楯突くように言う。
   「警務隊か。勤務場所はどこや?」
   自衛官が男の胸ぐらを掴んで言った。
   男は小声で何か言い出した。
   「はぁ!何言ってるか分からんわ。ちゃんと日本語話しやがれ!日本語分かる?それでも日本人?」
   相変わらず自衛官は暴言を吐く。
   「高麗社会人民連邦所属偵察総局所属だ。」
   男はそう言い出して隠し持っていたナイフで自衛官の腹を滅多刺しにし始めてた。
   さっきまで口悪かった自衛官が口から血を吐き出した。同僚が殺されてびっくりした自衛官が車から降りようとするも警察のSAT輸送トラックから回収した89式5.56ミリ小銃を他の男達が取り出して射殺して他の駆けつけてきた自衛官を1人ずつ確実に仕留めて制圧をした。胸ぐらを掴まれてた男こそが水族館を占拠していたジョン少佐だった。周りにいたのも部下で自衛隊の迷彩服を着て警務隊になりすましていた。検問と見せかけて待ち伏せ攻撃を企んでいたのもジョン少佐本人であった。死体を引きずり下ろして車両を強奪して展開陣地に持ち帰って行った。
   「残りは武器班が性能と諸元を調べる。89式以外はな。」
   ジョン少佐は運転手にそう言った。
   「本部より入電。玄海島、志賀島、能古島は占領確保。」
   無線から報告が入った。
   「少しずつスムーズに行けば陸のほとんどは占領できるはず。そろそろ制空権と制海権を確保していいはずだがな。」
   高麗人民軍の幹部は事務所で呟いた。
   
   
    

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