裸の王国

Pman

「ランバルト」入店

カランコロン、とやっと入店できる。
こっからの三十分が勝負だ。
「いらっしゃいませー」
茶髪の男性が、作り笑いを顔に張り付けて話しかけてくる。
「今日は何になさいますか?」
「あー、見に来ただけです」
僕がそう答えると、
「では、時間内まで自由にご覧ください」
と、去っていった。
店内には、数十着の服や、例の「裸服」があり、ご婦人たちの溜まり場になっていた。並んでいたのは、男がほとんどなのにここの服に興味があるのはやはり女性だけみたいだ。
「おにいちゃーん、このふくどーお?」
「うーん、せっかくだからあれ着ようよ」
と、例のあれを指した。
「僕は、もういいよ」
弟が、店から出ていった。
「おにいちゃーん、着れたよ」
妹が、試着室からでてきた。裸服はいろいろなデザインがあって、全体的にお洒落な感じだが、やはり、
「透けてるぞ」
と妹に耳打ちした。
「うん、わかった」
妹は、下着が透けて見えていた。
店を見回すと、20過ぎの女性が裸服を着ていた。華奢だが肉がつくところには付いていて、バランスの良い体と言って良いだろうか。
気づいていないのか、気づかないふりをしているのか、試着する彼女の夫だろうか
「似合ってるねー」
等といっているが、彼女の滑らかな肌が露になっているのを見ると、とても笑えてくる。

約束の時間が過ぎ、買う人は喜び楽しそうに、帰る人は、疲れた顔を見せて帰っていった。手に提げた「ランバルト」のロゴが入った紙袋にあれが入っていると思うと、少し怖い気がした。いつ、どこで着るのだろうか。
弟は、道路を挟んだ喫茶店で待っていた。
「で、どうだったの」
「思った通りだったよ、あはは」
「おにーちゃん、笑ってる場合じゃないでしょう?」
弟が、思案した顔で
「誰かが、真実を言うとパニックになるからな」
「着ている感じはあるの。それに、着る前はちゃんと服がどんな色をしているかもわかるの」
「あの服、何でできてんだ?」
僕が問うと、
「魔法か何かが使われているんじゃないかな、僕らにはわからないほど、複雑で難解な」
「でも、まぁ僕らはそんなに関係ないけどね。帰ろっか?」

町の中心から離れた、貧民街へもどった。
家に着くなり、母が
「三日もかかったの?大変だったわね~」
「キャンプしてたんだ。だから大丈夫だよ、母さん」
「早く、湯浴みしてきなさい」
「はーい」




一週間後に大きな事件があるのを僕らはその時まで知らなかった。ただ、予測できたものではあった。

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