炭酸

Pman

第4話

秋の、暑さになれて気温が下がったときの肌寒さを抱えて、今日登校した。


準備期間に移行して、騒がしくなった。
廊下は、出し物に使う廃材が乱雑しておかれ、クラスの掲示物が道を塞ぐ。


「多田さん、こっち手伝って」

男子は、なんとも思っていないと強いのだな、と思いながら友達が、多田さんに何気なく話しかけるのを眺めていた。笹木さんと、一緒に。笹木さんの肩まである髪が、かのじょがゆれるたびシャンプーの臭いを幸せな気持ちとして醸し出す。僕と笹木さんが笑い合う声は、教室のどこにも響いていなかった。


「多田さん、かわいいよね、やっぱ」


笹木さんが、羨ましそうに言った。
机や椅子を後ろにおき、地べたに座りながらやることのなさそうな、僕たちはくっちゃべっていた。
僕は、自信満々に、自分のことのように、

「そりゃ、かわいいよ」


と同調した。ショートの髪は、あまり揺れず静止したまま。


そこで、


「ひー、お前も手伝っくれ」


と、僕にできることなんてないのに、そう思いながら僕は友達に呼ばれた。


「ここ代わってやるから、手伝え」


「ごめん、多田さん」


「いや、別に」
半ば強引に、付き合わされた。
嬉しかったが、笹木さんを一人にしていると思うと、胸が苦しくなった。



慌ただしく、一週間は過ぎ、金曜日になった。土曜日に一般公開される予定なので、生徒は今日楽しむみたいだ。


ベランダから、校門のバリケードのような装飾を眺めていると、友達が


「告白するんだっけ?」


と調子良く聞いてきた。こっちの気も知らないで、と悪態をつきながら肯定も否定もしないでただ押し黙った。


「お前は、結局どっちが好きなんだ?」


そのときは、分からないと告げた。
本当にわからなかった。
一か八かの大勝負も相談役のような付き合いの彼女も似たようなもんだった。

















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