野球部のこと

Pman

第1話

屋上はダメだから、部室で、と言って君を待たせた。出来るだけ人目のないところでやりたかった。これから言うことは、今までの関係を瓦解するようなものになるから、あまり緊張しないでほしい。
皆が帰った部活後にマネージャーの君と片付けを手伝って二人で残った。不自然に思われるかと冷や冷やしたが、部員の頭は、どこかで遊ぶことに頭を捻っていて、僕らのことなど視界には、入っていなかった。
バットの土汚れを拭って汚れたタオル。
「これはもう捨てますか?」
と君は聞く。
「ああ」
と、どこか抜けたような返事が、これから言う何気ない一言を上手く取り繕えていないと心配で、声がふぅ、と溜め息のように漏れてしまう。
「次は、何を片付けますか?」
「ああ、そこのグローブを上の棚に上げてくれ」
「了解です」


よっこいせ、と無意識に漏れる君の言葉がなんだか愛らしくて、その澄んだ声音を僕の一言がどう豹変させてしまうのか怖かった。
「そろそろ時間ですよ、部長」
「ああ、もう帰ろうか」


ヘアゴムをポケットから取って、髪をまとめる姿は多分僕しか知らない。いつも僕は、君を目で追ってたから。君は、家に帰るときだけそのヘアゴムを使う。
「そろそろ帰りますよ」
彼女は、ベンチにおいてあったバックを背負った。
「なぁ」
「はい」
「好きです!付き合ってください」
「嫌です」





















1358回目の告白が終わった。

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