異世界召喚されて、助けたエルフが願いを叶えてくれるそうなので、賭けをします

Pman

第5話

仕切り直して、彼女は、償いとして、何も知らない俺にこの国を案内してくれると言った。後ろ向きだったが。


「そういえば、シェナーさんていくつぐらいなんですか」

住宅地の隙間を縫って、歩いている。頭上には、洗濯され、干されている服がいくつかぶら下がっている。こつん、と小石を蹴った。


「そ、それは、聞くものじゃないでしょう」


「いやあ、気になるんですって」


すっかり打ち解けたものの、話題のなさとアレン自身の気遣いのなさで、彼はそんなところから話を切り出す。


「20ぐらいですか?」


一度口から出た言葉、キリが悪くなって、続けた。シェナーさんは、依然として俺の方を向いてくれない。



「じゅ、じゅうはち……」


「え、俺と二つしか変わんないじゃないですか」


「そ、そう?でも18ってのは、見た目の年齢だから……」


「そっか、エルフって、寿命ながいんでしたもんね。じゃあ、もう100年ぐらいは余裕で生きていたり?」


「う、うん200年」


「まじすか」


うつむいた彼女の顔は、髪に隠れていて、どんな表情をしているのかわからなかった。その整った、きれいな前髪を見ていて、アレンには、ひとつ疑問が生じた。


「シェナーさん、」


「シェナーでいいよ。年もあんまり離れていないし」


「わかりました。シェナー、その、君は薄緑色の髪をしているけど、目立たないのかい?」


疑問符を浮かべるシェナーに、すかさずアレンは付け足した。


「ほらさ、あの、あそこにいる人たちとかさ、上で洗濯物干してるおばあさんとかさ、黒髪とか、金髪が多いのに、なんでシェナーは、薄緑なんだろうって」


「あー、それは、またの機会にしてもらえる?」


本当になんかありそうな顔をしたので、逆にこっちが恐縮してしまい、アレンは、「お、おう」とでしか、言葉をつなぎ止められなかった。


「なら、さっき言ってた、この国の危ない情勢?について教えてよ」


「あ、うん。そうだったね」


彼女が口を開こうとしたとき、狭い住宅の裏道から抜けた。それは、大通りから反対の場所にある、商店街だった。


「すげえ」思わず、アレンの口から感嘆の声が漏れる。


「すごいでしょ?」シェナーが誇らしげに言う。


さまざまな種族が商店街にはいて、猫耳の人間、ぴょこぴょこと跳ねる蛙。首から上がペガサスの人間。実に多様な人種が、買い物袋を提げてあるいていた。大通りとは比べ、人口は少ないものの店側の活気のある声がよく張っていた。

          

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