通りすがりの殺し屋

Leiren Storathijs

完璧な人間なんていない

豪邸の変態おやじを殺した後、俺は女共を、置いてその場を去った……筈だった。

何故か三人とも俺の後ろに付いて来ている。正直言って物凄く邪魔だ。

「おい、何故付いてくる?好きにしろと言った筈だ」
「だってここ何処か分んねえし……学校まで送って欲しいんだけど」
「残念ながらそれは無理だ」
「はぁ?何で」
「俺はこれでも警察に追われている。お前らを学校に届ければ、学校側はほぼ確実に警察を呼ぶだろう。それは、俺にとって非常にまずい状況だ。更に、かなりの長期間あそこに監禁されていたのだろう?ならば、既に警察が学校周辺をパトロールしていてもおかしくない」
「へぇ?なら私らか通報してあげようか?」

女は携帯を耳元に近づけるが俺は、すぐに銃を向けて止める。

「ふん、好きしろとは言った。だがその携帯で警察と連絡を取った瞬間、お前の頭は吹き飛ぶだろう」
「くっ……」
「直ちにその携帯を耳から離せ。俺は無抵抗の無力の人間を簡単に殺す程下衆じゃない」

女は静かに携帯をポケットにしまい、何も出来ずに立ち尽くす。

好きにしろと言ったのは俺だ。だからと言って通報されるのは困る。だがしかし、付いてきて貰っても何もやってあげる事が無い。


女共の後始末を考えていると、俺の携帯から着信音が鳴る。

相手は例のギャングからだ。

「はぁっ……!はぁっ……!おい殺し屋!ふさげんじゃねえ!何でお前の言う通りになるんだよ!」
「待ってたぞ。何があった?」
「今、ボスから追われてる!情報漏らしてねえっつってんのに、それは信じらんねえって!駄目だ!俺そんなに体力無えんだよ!」
「分かった。とりあえずそのまま俺に情報を渡せ。言ったら俺が直々に殺しに行ってやろう」
「ボスの大軍に嬲り殺されるよりは全然マシだああああ!!ボスが慕わせている全てのギャングリーダーの場所を言う!ちゃんと覚えてくれよ!?」
「分かった分かった」

ギャングリーダーの全員の居場所か……高校生を三人も拉致する程だからな……。もしや色々な情報を経由する中枢的な存在だったのか?

そうして、全員の居場所を教えて貰い、俺はギャングの始末へ向かう。

ギャングとの電話の最後に死ぬ場所を指定してもらったので、俺は何故か付いてくる女共と共にそちらへ向かう。

「おう……ま、待ってたぜ……殺すんだろ?何なら早くやってくれよ」
「分かっている……」

俺は、静かに男の頭を銃で撃ち抜き、その場を去った。


さて、まだ付いてくる女共だが、どうするべきか?一般人の手を汚す訳には行かないし……いや。

そこで俺は一つの案を思いついた。俺は転々とアジトを移動する為、特定の場所に放置しようとも、言う事を聞いてくれないだろう。なら、手伝って貰えば良いのだと。

「良しお前ら。俺と一緒にいるのは自由だが、一緒にいる限り、一生学校に戻れる事は無いだろう。なら手伝え」
「は、はぁ?まさか、殺しを手伝えっての!?」
「違う。お前らの仕事は、死体処理だ」

俺と女の間に一瞬の沈黙が入り、直後突っ込まれる。

「……いやいやいやいや!殺しは無理だけど、し、死体処理!?そんな事出来る訳ねえだろ!」
「あぁ、違う意味で手が汚れるかもしれんが、そこは慣れだ」
「いや何やる前提みたいに言ってんだよ!」
「やる事は簡単だ。俺の言う通りに遺体を捨てるだけだ。まぁ、これをやった瞬間お前らは共犯の疑いをかけられる上に遺体遺棄罪、つまり立派な犯罪者の仲間入りさ」
「は、はぁ?」
「やるかやらないは自由。ただ俺にこれ以上付いてくる以上はやれ」

これ以上の意味のない同行は本当に目障りにしかならない。

まぁ、何時もなら、死体だけの証拠を警察に残す事で、警察相手に遊んでいるだけなのだが、死体の処理まで出来れば、完全な証拠隠滅となる。


さて、ギャングの重要人材と人身売買を目的としていたと思われる男を始末し、次追うは俺の居場所を毎回特定して来たハッカーだ。

こいつは場所が分かった以上早めに排除しなくてはならない。依頼の度に位置情報を知られては、俺の行動に少しながら支障が生じる。

支障というのは、前回のスナイパーの様な事だ。あいつの出現はハッカーによるものだ。向こうは俺を完全に殺すつもりで追って来ている。

まぁ、こんなギャングに追われる羽目になったのは、ギャングの下っ端を殺したのが始まりなんだがな……。

ではハッカーの居場所は確かとある倉庫の地下だそうだ。倉庫の場所は、この前手に入れたメモで分かっている。と言っても近い訳ではない。また電車で移動しなくては。


電車移動中、俺の携帯に電話が掛かって来る。非通知だ。どうせギャングの者達からの電話だろう。毎度非通知で、いつかは普通の電話が掛かってくる事は無いんだろうか?

「ククク……殺し屋。今回はどうやら僕を追っている様だが、それは無意味だ。お前に僕を殺す事は出来ない……」
「まさか逃げるのか?」

俺の質問の回答は返ってくる事は無く電話は切れた。

全く……ギャングの奴らは勝手な奴らばっかりだ。ただ俺の目的は変わらない。相手はハッカーであり倉庫の地下に居座る者だ。もし沢山の機材を使っていたらそう早く逃げる事は出来ないだろう。

例え逃げたとしても、俺がその逃げた証拠を掴んでやる。

倉庫の最寄り駅に着くと、時間が夜の為か、倉庫付近に赤青と光が点滅している事が分かった。

まさかと思いながらゆっくり倉庫前まで近づくと、そこには、何十台も警備するパトカーと警察が倉庫前を封鎖し、厳重警戒されていた。

警察に報告されたか……。ギャングは警戒さえも買収するのか。これは逃げられる以上に想定外だ。ここまで厳重警戒されては、恐らく俺の居る倉庫周辺もパトロールされていても可笑しく無い。

さて、どう潜り抜けるか……。

俺はハッカーでもない為、自分の情報を改竄出来る訳でもなく、そんな都合良く警察の変装を用意している訳でも無い。

今でも付いて来ているこの女共を利用するのも一手だが、その時は通報されるのが落ちだろう。

警察は恐らくハッカーに俺が来る事を教えられながら警戒している筈だ。ならば、そんな情報に敏感な警戒の注意を引く方法は一つ。

少し派手な騒ぎを起こせば良い。俺は何か使える物が無いか周囲を見回す。

倉庫はどうやら資材置き場らしく、荷物を運ぶ為の軽トラックが廃車のように置かれている。もう使われて居ないのだろう。

そこで俺は一つの物を見つけた。ガソリンが入ったドラム缶だ。中に入っているガソリンは、揺らしてみれば少量だと分かるが、十分過ぎる。

「おい殺し屋、何してんだ?」
「これから騒ぎを起こす。合図したら倉庫の中まで走り込め。お前が警察に捕まったら俺はかなり不利な状況となる。もし捕まったり、通報でもしてみろ。俺が殺す」
「わ、分かったよ!やりぁいいんだろ?」
「それで良い」

俺はなるべく早く音が響かない様に銃口とドラム缶をくっ付け撃って穴を空け、勢い良く倉庫前の広場、パトカーが何台も止まっている所にドラム缶を転がす。

すると、穴の空いたドラム缶は転がりながら、ガソリンを穴から周囲にぶちまけていく。

そこで此処から一瞬だけ警察の話し声が聞こえた。

「おい、アレは何だ?」
「おいおいマジかよ!ガソリンぶちまけてんぞ!」

今だ。燃え上がれ。俺は溢れ広がったガソリン溜まりを銃で撃ち、一気に火をつける。

「おいおい引火したぞ!離れろ!今すぐ此処を離れるんだ!」

そして、パトカーのエンジンに引火した炎は、パトカーを火達磨にすると直後、大爆発を起こす。

「今だ、走れ!この混乱に紛れて突破するぞ!」
「うわあぁあ!?」

俺と女は一気に倉庫の中に駆け込むと、分かりやすく地下への入り口が開いていた為、すぐに地下へ入った。

階段を降りると、何百台もある防犯カメラの映像モニターと、一人PC向かっている子供の姿があった。

「ククク……いやいや見事見事。今までずっと見てきたけど、やっぱり君は素晴らしいね」
「子供だと?」
「そうさ。僕はこれでも中学生、にしてハッカーさ」

俺はすぐさま銃を取り出し、ハッカーに向ける。

「まぁまぁ、落ち着きなって。君が欲しいのはコレだろ?」

ハッカーはPCに向かい俺に背を向けながら、片手でUSBメモリを見せる。

「此処には君が欲しい全ての情報が入ってる。但し、これが欲しいなら取引だ。僕を君のサポーターに入れて欲しい。この取引は僕を殺せばそこで終わるが?今上で起きている騒ぎが治れば、警察は直ぐにこちらへ安否を確認しに来るだろう。しかも僕は色んな所で君を監視しながら、同時に僕の部屋も警察に監視されている。どちらにせよ君の不利な状況は変わらない。そして僕を殺せばこの部屋の所有権は警察に移り、警察は君を徹底的に潰しに来るだろう。しかし僕を仲間に入れてくれれば、僕は直ちに警察にを撤退させ、君の不利な状況から少しでも逃れる事は出来る。さぁ、どうする?今の状況からして、僕を仲間に入れる方が賢明な判断だと思うが?」

こいつはただ中学生ハッカーでは無い。俺の行動を凡ゆる可能性から予想し、完全に俺が不利になる状況作り出している。

不覚だった。どの口がハッカーを排除すると言った?俺は完全に行動や位置を特定されていた以上に、こんな子供に操られていたと言っても過言では無い。

しかし、今はこのハッカーを仲間に入れるのが最適な方法だろう。俺はこれで初めて自分の迂闊さを知った。

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