通りすがりの殺し屋

Leiren Storathijs

時に幸運は悪運も呼び出す

ギャングの拠点破壊後、警察のサイレンと消防車の水砲の音が鳴り響く中、俺はアジトの移動の為、電車に乗っている。

依頼人とはあれから連絡は取れていない。結果報酬も無しに、俺の自己満足にしかならない仕事になってしまった。

こういう事は過去にも何度かあった。だが、毎度の報酬では、準備金と仕事料金以上の金を要求している為、赤字になる事はそうそう無い。

まぁ、殺し屋とは、簡単に言えば人の命を奪う仕事だ。たった数十万で、受けられる仕事では無い。また、それを納得した上で依頼人も報酬を渡すので、どちらにも負は無い。逆に警察がどう思うかは知らんが……。


新しい街に着き、俺は直ぐに宿を確保する。しかし、運は悪くそこではネットサービスはしていないようだ。

少し危険だが、聞き込みをするしか無いか。

時間は夜。俺のいる街は、繁華街の様に煌びやかでも無く、結構廃れた街だ。

そんな夜では人通りも少ない。明日の朝を待とう。

朝が来た。俺は身支度をし、部屋を出ようとすると、突然男二人組みが部屋に入ってくる。

「部屋間違ってるぜ?」
「いや、俺らはお前に様があって来た。へへっ、まるで誰かに見られているかの様な情報の速さに驚いているだろう?」
「あぁ、びっくりだ。俺は依頼をこなす度に世間に広められているようだな」
「その通りだ。と言うわけで、早速依頼だ。直接会ったんだし、前金百万でどうだ?」
「気持ち悪い程俺は信用されているんだな。有り難く受け取ろう」
「おいおい無警戒かよ。それが爆弾で、俺らが自爆テロだったらどうする?」
「死ぬな。だって俺は指名手配までされているんだ。いつ死んでも可笑しく無いさ。そう言う事は、これは爆弾でも無く、お前らは自爆テロでも無いんだろ?」
「かもな」

どうも相手からまるで同業者の臭いがする。もし同業者なら尚更、自分の事を呑気に語る奴はいないか……。

「俺らは、金貸しをやっている者達だ。依頼の詳細は、これを見てくれ」

二人組みの一人の男は、俺に封筒を渡す。

「期待以上の成果を待ってるよ」
「適当にやるさ……」


二人組みの男達は俺の部屋を後にし、俺は渡された封筒を開く。

中には、暗殺対象とその詳細が書かれていた。

今回のターゲットは、金持ち男。ただ、普通の金持ちではなく、元は貧乏中の貧乏で、生きるのもギリギリだったらしい。

そんな男を例の二人組みの金貸しが助け、一度は通常の生活に戻した。しかし、勿論の事金を返す事が出来ない男は、二人組み金貸しを騙し、手に入れた金は保管、また貧乏のフリ、そして保管。

何かがおかしいと気づいた金貸しは、金持ち男が酒で盛大に宴をかまし、女と遊ぶ瞬間を目撃した。

そして、コイツを殺そうと判断を下した。

…………全く馬鹿な男だ。せっかくの奇跡とも言える地獄からの生還を利用するとは……クソ野朗にも程がある。これは、前金百万貰って正解だった。

ならば制裁を下そう。
ターゲットは一人、目撃するであろう人間がターゲットの周りに無数いる。この前の様な派手な爆破は出来ない。

だが、人の運という物は無限ではなく、いつか尽きが来てしまう。しかもそれは、突然だったりする。

大きな名声と富を手に入れた者こそ、ドン底に叩き落とすのは簡単な事。コイツは人ならざる行為をした挙句の果てだ。こんな事が金に釣られて寄り添う者達に伝わればどうなるか?

直ちに嘘の金に釣られていた事に気付き、彼の名声は一瞬で堕落し、俺が一声かければ、あいつの人生は終わる。


金持ち男には、何軒もハシゴする程の金を持っている為、一軒では無い様だ。それはさておき、声掛けでもするか。

俺は、金持ち男の登場を待つ店に行き、彼の素性を伝える。

「どうも皆さんこんばんわ。私は殺し屋です。皆さんが待っている金持ちの男居ますよね?実はあの男こんなとてつもなくクソみたいな奴なんです。それでも皆さんはこの人を信じますか?」

その言葉を聞く人々は、一瞬ビクッと恐怖するが、その表情は、段々と嫌悪に染まる。

「おいおいマジかよ……全く良いコネ見つけたと思ったのになぁ」
「マジで最低……嘘でしょ?私達そんな男と遊んでたの?」

そこで俺はもう一声。

「皆さん御安心下さい。皆さんの感じる嫌悪は、すぐにスッキリするでしょう。もう一度言います私は殺し屋です。どうか皆さんの力を貸して頂けないでしょうか?皆さんで、彼の最後を盛大に祝いましょう!」

そう言うと俺は、ありったけの酒を集める。

それから三十分程して、男は来た。

「いやいや、みんな待たせたね!ささっ、今日も盛大に遊び給え!」

俺は、集めた酒を次々と金持ち男の頭から注ぐ。

「イエェェイ!なぁ?嘘の金で買った酒は美味えか?」
「嘘の金?何を言っているか分からんな」
「俺は、金貸しから依頼された殺し屋だ」
「金貸し……殺し屋?……ヒッ!?ま、待て、金は今なら返せる!な?な?」
「すみませんが、金貸しの期限は切れました。もう貴方が金を借りる返すも権利はありません。その顔は、もう一回肥溜めにぶち込んだ方がよっぽどマシだ!」

俺は、金持ち男の頭を酒で濡れた床に叩きつける。

「さぁ、祝ってやれ!」
「オラァ!このクソ野朗が!」

忽ち金持ちを信頼していた人々は立ちあがり、酒を溺れる程金持ちに浴びせる。

「うぎゃ!や、やめろ!皆んなやめてくれ!」
「これで終わりだな?殺し屋に目をつけられただけで運の尽きと思え……」

俺は、ポケットから静かにマッチを取り、火を点けると、酒でずぶ濡れになった金持ちの体にその火を落とす。

すると金持ちは、火達磨となり、悲痛な叫び声を上げながら、宴の会場を盛り上げる。

「うわああああッッ!!!」

それをゴミを見るような目で見下す人々の表情は、不気味に笑っていた。

完全に体を焼き尽くした男を俺は、下水の肥溜めに投げ入れ、もう一度火を投げ入れ爆散させた。


「最高じゃねぇか!本当に期待以上の働きを見せてくれたな!ハイこれ、感謝の意として、追加報酬だ」
「おう」

俺は金を受け取り、またその街を去った。

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