SNS仲間で異世界転移

浪村

第6章 13話 終戦の時

ほとんど同じタイミングで全員の戦闘が終了した

美泉「龍剣。ねえ、龍剣…」

龍剣「痛ってててて………」

美泉「よかった、起きた」

龍剣「ブラッディデーモンは!?」

汏稀「みんなやっつけたぜ」

上体を起こし周りを見ると、拘束され気を失っている四天王がいた

龍剣「これで一件落着か」

美泉「ちょっとそのまま動かないで。すぐ治してあげるから」

龍剣「ありがと」

上半身裸にされ、ヒーリングが始まった

美泉「ああもう…身体中アザだらけじゃない」

龍剣「仕方ないだろ、相手が強かったんだから」

シャギス国王「皆さん、本当にありがとうございました」

汏稀「あ、国王様」

アルファ「正直こんな若い兵達がここまでやってくれるとは思わんかったわい。本当に感謝する」

モルファス「いえ、私達は任務を全うしたまでです。それにまだ砂神祭は終わっていません。ブラッディデーモン以外にも国王様達を狙ってくる可能性は充分あります」

アルファ「そうじゃな。では最後までお前達に守ってもらおうかの」

シャギス国王「大変恐縮ですが、よろしくお願いします」



香奈「ねえ、みんな」

美泉「どうしたの?香奈」

香奈「やけに上が静かじゃない?」

モルファス「確かに。地上へ行ってみようか」

国王とアルファも連れ、地上へ出た。地下へ下りる扉には念のため施錠をしておいた

龍剣「なんだこりゃ」

美泉「あいつら4人だけとか言っといて…」

王宮から出た皆が目の当たりにしたのは、ブラッディデーモンとシリア兵の軍団が戦闘をしている光景だった。住民は町の外や北口に避難している

モルファス「奴らの方が数で上回るか。俺達も急いで向かうぞ!!」

戦場はシリア兵がやや押されていた。100人と60人では単純に数が違いすぎる

美泉「汏稀は動けないし、国王様の護衛は誰がつくんですか?」

モルファス「香奈と美泉に任せる」


?「いや、俺達に任せて行ってこい」

?「命に変えても国王様とアルファ様をお守りしてみせる」

現れたのは王宮の門番をしていた2人だった

モルファス「すいません、よろしく頼みます!」

動けない汏稀を残してモルファス班は戦場へと出て行った

龍剣「何であいつ、ブラッディデーモンの方にいるんだ?」

ブラッディデーモンの軍勢に混じって1人だけ騎士団の制服を着ている者がいた

シリア兵「奴はスパイだ!こっち側に紛れて騙していたんだ!」

龍剣「汚い真似しやがって。ヒートバズーカで一掃してやる」

香奈「気をつけないと仲間に当たっちゃうよ!」

龍剣「あ、そうか。しかもあれ使ったら精神力がもたねえな…」


美泉「それぇ!」

バァン!ドォン!

中距離からとことん爆弾を投げる美泉


モルファス「フン!セイ!」

シリア兵と共に最前線で刀を振るモルファス

増援といってもたったの5人。状況はほとんど変わらず、騎士団は劣勢になる一方だった


龍剣「やばい、BBTガトリングを使いすぎた。精神力がもうもたねぇ…」

美泉「あ!爆弾の残数が…」

モルファス「はぁ…はぁ…ラチがあかない」

そんな時、町の外や中で大きな砂嵐が吹いた

龍剣「くそ、こんな時に!」

香奈「邪魔くさぁい!」

なかなか身動きの取りにくい砂嵐の中で、美泉は何か考えていた

美泉「(砂……この感じを精神力で練ってみたら…)」

砂嵐は止んだ。両軍が再びぶつかり合う中、美泉はネックレスを見つめて集中していた

美泉「このネックレスにはすでに各地の力が記憶されている。ならできない事はないはず!」

キィーン!

美泉のネックレスが黄色く光った。そして次の瞬間、形が変わっていきネックレスは杖となった

美泉「できた。これが砂漠の力」


一方、龍剣の方も似たような事が起きていた

龍剣「今砂が吸収された…もしかしてこれで砂漠の力を使えるかも」

同じように集中する龍剣。黄色く光りながら形態変化していたのだが、途中で集中が切れてしまい指輪に戻ってしまった

龍剣「まじかよ。でもこれで砂漠の力は覚えた」

お互い知らぬ間に砂漠の力を使えるようになっていたのだ

美泉「異力書によると確か砂漠の力は"幻造"のはず。まずはイメージ…イメージ」

目を閉じて杖を前に構える美泉。徐々に杖の先が光り出しているのが伺える

美泉「出でよ、私の造りし幻獣よ!」

美泉の背後に身長50mはある巨大な紳士、つまり巨人が現れた。街にいる全ての者が口を開けてポカーンとしている。この世界にこんなデカい生き物はいないため、当然の事だ

壮助「なに…これ。ってかよく見たらこれ、コロンブスじゃん…何が幻獣だよ…」

美泉「顔が思いつかなかったから、この世界に来る前に読んでた本の人物にしちゃった」

戦場が凍りつく中、美泉はスタスタと歩いて先頭に出る。そして笑顔で叫んだ

美泉「全員武器を捨てて去りなさい!!さもないと、この巨人があなた達を全滅させるからね?」


ブラッディデーモン「ひ、ひぃー!」

1人、2人と逃げだすとそれに続くように全員武器を投げ捨てて逃げていった

シリア兵「っしゃあぁー!!!」

シリア兵「俺達の勝利だー!」

騎士団側は歓喜の声に溢れている。美泉はブラッディデーモンが去っていったのを確認して、幻覚を解いた

美泉「はぁ。あれ、なんか視界が…」

龍剣「お、おい大丈夫か!」

精神力の使い過ぎで倒れた美泉を急いで支える龍剣。すぐにおんぶして治療室に運んだ

龍剣「香奈もいたんだ」

香奈「うん、私も肩外れてるし、汏稀もいるから」

香奈の前のベッドには汏稀が眠っていた。その隣のベッドに美泉を寝かせ医師に診てもらった


龍剣「香奈、国王様が招集をかけてる。2人は先生に任せて行こう」

香奈「そうだね」


王宮前の特設ステージに兵士は集められていた。そしてステージ上には国王であるシャギスと、アルファ、メアルがいた

シャギス国王「騎士団シリア支部、本部の皆さん。このシリア王国を守って頂き本当にありがとうございました」

深々と頭を下げるステージ上の3人

シャギス国王「あとこれは国民の皆さんにも謝らないといけないのですが、黙って影武者とすり替わっていて申し訳ありませんでした」

シリア兵「顔をお上げください。スパイが紛れ込んでいる可能性があった以上、国王様の判断は正しかったと思います。現にスパイはいました。しかも、偽国王の護衛に」

シャギス国王「ありがとうございます…」

アルファ「辛気臭い話はこの辺にして、早く砂神祭を再開しようじゃないか」

龍剣「再開?」

アルファ「どんなアクシデントが起きようと、伝統である砂神祭は最後までやり遂げる。さぁみんな、急いで取り掛かろう」

シリア兵「了解!」

破損した建物や飾りを修復するもの、避難した国民を手配するもの、再び警護にまわるもの、各自仕事を見つけて取りかかった

そして、数十分後………


バーン!バーン!

砂神祭は再開された。ステージでは盛大なショーがあり、屋台や花火で王国に活気が戻った


龍剣「シリアの人たちは強いんですね」

モルファス「ああ。皆アルファ様を見て育ったからな。強いに決まっている」

美泉「シャギス様もその内の1人、ましてや息子さんだもんね。強い意志を受け継いでいるはず」

モルファス「この国はもっともっと良くなるさ、きっと」


この日の戦いで出た死人は兵士、国民を合わせ0人。負傷者は兵士の中で多々出ているが、全員命に別状はない。ブラッディデーモンの四天王は牢獄行き、その部下達は行方をくらました
数日後入った情報なのだが、どうやらブラッディデーモンは解散したらしい。リーダー格がいなくなって集まる機会もなく、自然消滅したようだ

コメント

コメントを書く

「冒険」の人気作品

書籍化作品