第二章　１８

「でしたら、貴方の神通力をお使いください。出来るでしょう？大麻を他の植物――栽培しても、道徳的にはマズいものの、法律的には全く問題のない、そうですね……ぺんぺん草とかに。
　そして、それは五秒以内にお願い致します。ＰＣで『ついきゃす』も見ていますが、そろそろリアル特定隊が山のように積まれた場所に着くようなので。
　はい、５・４・３」
　伸也の声に急かされたのか、神様としての威厳とかを――まあ、ホームレス風ザビエルハゲなんで、元々そんな偉そうな格好はしていない――１ミリも感じさせない、ぶっちゃけキョドった感じであたふたと呪文のようなものを唱えながら、酔っ払いの踊りのような感じで舞っている。
　すると、伸也がＰＣで聞いていると思しき、ついキャスのお兄さんの――多分、二十代後半から三十代前半だろう――興奮した声が聞こえてきた。
「え？今、何が起こった？何か、空き地にぺんぺん草が生えている画像とか、スマホで撮った動画が、何で！オレのＰＣに、しかも配信中なのに映ってるのだろう……。
　えと、確か『女子校にセーエキをぶちまける』予告した、ラッキョウのバカを警察に通報しようと……してたよな？みんなで…………」
　先程のハキハキした感じではなくて、何だか呆然とした口調がスマホから流れてきた。
　それに！！確かに、ついキャスだかユーチューバーだか知らないけど、さっきまでは大麻が！とか言っていた。
　それがぺんぺん草になっている！！！！
　思わず、歓喜の踊りを踊ろうとしたけれども階段まで全速力で走ったせいで足がガクガクしている。あんなに走ったのは生まれて初めてだ。
「伸也ぁ……ありがとう……」
　涙と鼻水でぐちゃぐちゃなオレは伸也にお礼を言う間にも鼻をすすりあげる音が混ざっている。
「いや、麻神がどうやら昔取った杵柄きねづかというか、大麻草が繊維を取るために日本で大量に栽培されていた時の神通力をまだ覚えていたんだな。
　オレの――身を入れて聞いていなかったとはいえ――『そういう』知識では、大麻を他の植物に入れ替えるだけが精一杯で、この配信者とリスナー、そして誠司のインスタまで即座に替える力が有るとは思っていなかった。