神様にツカれています。

こうやまみか

第一章 19

 誠司に何が何でも神様の司る植物を植えてもらおうという――何しろ基本は「人の行為」が神様のステータスになるらしいので誠司が居ないとかなりマズいのだろう――なんだかやる気に満ちているようだった。心なしかザビエルハゲにも薄毛が生えて来たようで、細い毛が風に柔らかく揺れている。
「それは免除して、この養毛……じゃなかった。アイテムを使えば雑草は枯れる。
 しかも土には栄養も与えるという優れものだ」
 そんな便利なモノがあるなら先に言って欲しかったと思うのは誠司のワガママではないだろう。
 日本の神様らしく、日本酒の一升瓶のようなモノを手渡された。
「これを全部撒けば良いのですね?じゃ、楽勝ですねぇ」
 広大な空き地に足りるかなと思っていたものの、いくら撒いても中身は減っていないような気がした。
 流石は神様のアイテムだ。ホームレス風ザビエルハゲとはいえ、なんだかドラえも〇のポケットのような感じで物凄く嬉しい。
 ジャバジャバと撒いたら、雑草がみるみるうちに干からびていく。そして引っ張ってみると根っこまで簡単に抜けた。
 神様って便利な道具を持っているんだなぁと感心してしまう。
「終わりましたぁ!次は何をすれば良いんですか」
 何となく楽しくなってきた。あんなにしぶとそうに生えていた草が全部枯れているという、達成感がハンパない。農家の方はもっと苦労してお仕事をしているんだとは思うけれども、大地と格闘するのも何だか楽しい。
「これで雑草を全部集める。誠司は知らないかもしれんが……。これは熊手くまでという道具だ」
 「かも」ではなくて本当に知らなかった。背中を掻く「孫の手」の物凄く大きいバージョンみたいだと思って見ていたが。
 そういえば、東京の何とかという神社だかお寺で「福を招く」とか言って12月に売り出されるのがこれの小さいのだったような気がする。
 神様のアイテムはどこも同じなのだろうか。
 頭を動かすことは苦手な誠司だったが、体を動かすことは好きだったので、広大な敷地もサクサク綺麗になった。
 何だか誠司の母さんがガーデニングにハマるのも分かるような気がする。いや神様の魔法のアイテムで楽勝なのかもしれないけれど。
「次は何をすれば良いんですか?」
 「懐かしの名作アニメ」特集で見たハイジのわらだか、草だかのベッドのように積んだ雑草の山を我ながらすごいを思って額の汗を拭った。


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