海と灯台と君と
冬の気配
今日は職員会議で、部活は無し。
生徒は全員、16時に帰らされた。今から帰っても暇なので、小学生から一緒の学校に通っている幼なじみの女子、麗奈と校門で待ち合わせ、僕達が住んでいる離れ島では有名な灯台に行くことにした。
学校からは、歩いて20分程。少し道を外れて、海を一望できるコンクリートの道をひたすら歩いていく。道端には、所々砂が積もっている。
海から吹く冬を感じさせる冷たい空気が、顔に当たる。
「も〜、歩くの遅いよ〜」
学校一の美女と言われている綺麗な顔立ちが、微笑みを交えて振り返り僕を煽った。
艶のある黒髪が、夕日に照らされてオレンジ色に反射して見える。
「…寒いんだもん」
冬とかいうやっかいな季節が、僕は嫌いだ。
でも彼女は、冬が好きだと言う。
「麗奈、そんなスカート短くして…寒くないの?」
「ぜーんぜん!てか、こんなんで寒がってるとか〜男として情けないな〜」
「…上はしっかり着込んでるからだろうな」
ボソッと呟く。多分聞こえていない。
スカートを短く巻き込んでるくせに、裏起毛の白色のパーカーに、ベージュのコートを羽織っている。
一週間程前、誕生日プレゼントで友達から貰ったという紅色のマフラーを首に巻き付けて、彼女は笑った。
「だからかも!…って、ファスナー開いてるじゃん!それはもちろん寒いよ!」
立ち止まってこっちを振り返ると、彼女は驚いた顔をした後、また笑った。
「あ。開いてるから寒いのか、どーりで」
冷たくなった紺の毛襟のジャケットのファスナーを閉めた。
閉めて直ぐに、さっきとは全く温かさが違うのを感じた。
「も〜、しっかりしてよ〜」
彼女は腹を抱えて笑っていた。そんなに面白い事でも無かったはずなのに、どうしてこんなにも笑えるのか…。幸せな奴だ…。
「そんなに面白い?」
彼女は笑いすぎて、目から涙が出ていた。
「さすがにそれに気づかないのはアホじゃない?優人君らしくないから、おかしくなっちゃった」
確かに抜けていた。ある考え事をしてしまっていたからだと、自分に言い聞かせる。
はー。と一息ついて涙を拭った後、少し赤くなった目で僕を見た。
「なんか今日は、胸がドキドキするから思いっきり笑ってごまかしたくなっちゃった」
「…えっ?」
なんでもない。そう言うと、何かをごまかすようにプイッと前を向き、また歩き出した。
いままで彼女に対して全く思わなかった感情が、湧いてくるのを感じた。さっきより早く、心臓が動いているのが分かる。
「ほら、早くしないと日が沈んじゃうよ」
こちらを見て一瞬目が合ったかも思うと、彼女は僕の腕を掴み、灯台に着く前の目印でもある長い階段めがけて走った。
引っ張られた時は転びそうになったが、すぐに彼女のペースに合わせて走る。
走りながら、僕はどこかで体験したことがある感情の答えを導き出そうとしていた。
生徒は全員、16時に帰らされた。今から帰っても暇なので、小学生から一緒の学校に通っている幼なじみの女子、麗奈と校門で待ち合わせ、僕達が住んでいる離れ島では有名な灯台に行くことにした。
学校からは、歩いて20分程。少し道を外れて、海を一望できるコンクリートの道をひたすら歩いていく。道端には、所々砂が積もっている。
海から吹く冬を感じさせる冷たい空気が、顔に当たる。
「も〜、歩くの遅いよ〜」
学校一の美女と言われている綺麗な顔立ちが、微笑みを交えて振り返り僕を煽った。
艶のある黒髪が、夕日に照らされてオレンジ色に反射して見える。
「…寒いんだもん」
冬とかいうやっかいな季節が、僕は嫌いだ。
でも彼女は、冬が好きだと言う。
「麗奈、そんなスカート短くして…寒くないの?」
「ぜーんぜん!てか、こんなんで寒がってるとか〜男として情けないな〜」
「…上はしっかり着込んでるからだろうな」
ボソッと呟く。多分聞こえていない。
スカートを短く巻き込んでるくせに、裏起毛の白色のパーカーに、ベージュのコートを羽織っている。
一週間程前、誕生日プレゼントで友達から貰ったという紅色のマフラーを首に巻き付けて、彼女は笑った。
「だからかも!…って、ファスナー開いてるじゃん!それはもちろん寒いよ!」
立ち止まってこっちを振り返ると、彼女は驚いた顔をした後、また笑った。
「あ。開いてるから寒いのか、どーりで」
冷たくなった紺の毛襟のジャケットのファスナーを閉めた。
閉めて直ぐに、さっきとは全く温かさが違うのを感じた。
「も〜、しっかりしてよ〜」
彼女は腹を抱えて笑っていた。そんなに面白い事でも無かったはずなのに、どうしてこんなにも笑えるのか…。幸せな奴だ…。
「そんなに面白い?」
彼女は笑いすぎて、目から涙が出ていた。
「さすがにそれに気づかないのはアホじゃない?優人君らしくないから、おかしくなっちゃった」
確かに抜けていた。ある考え事をしてしまっていたからだと、自分に言い聞かせる。
はー。と一息ついて涙を拭った後、少し赤くなった目で僕を見た。
「なんか今日は、胸がドキドキするから思いっきり笑ってごまかしたくなっちゃった」
「…えっ?」
なんでもない。そう言うと、何かをごまかすようにプイッと前を向き、また歩き出した。
いままで彼女に対して全く思わなかった感情が、湧いてくるのを感じた。さっきより早く、心臓が動いているのが分かる。
「ほら、早くしないと日が沈んじゃうよ」
こちらを見て一瞬目が合ったかも思うと、彼女は僕の腕を掴み、灯台に着く前の目印でもある長い階段めがけて走った。
引っ張られた時は転びそうになったが、すぐに彼女のペースに合わせて走る。
走りながら、僕はどこかで体験したことがある感情の答えを導き出そうとしていた。
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