追憶

さくら

充実した日々の中での疑問


その頃の私は仕事、恋愛に充実した日々を送っていた。

季節は春から夏へ。


今年の夏は初めて彼と海に行った。

花火も行った。

この幸せがいつまでも続くと
何も疑うことなく。



ただ、一つ
自分の中で消化不良を起こしている事があったのは事実。

それは、彼の家を知らない。
会って体を重ねる時はホテルである事。
そこに加わってきたのは

“お婆の家やねん。ココ”

である。





ある日、一緒に夕食を共にした後
『このあと事務所行っても良い?』
と言われた。

「じ、事務所?」
イキナリのことで意味不明。ポカンとなったのを覚えている。

彼の車で連れてこられたのは
庭の広い一軒家で、和風の二階建ての家。

そこには離れのように建っている小屋。
なんて言うのかな、、、。
いや、プレハブハウスだ。

『ココ、お婆の家なんやけどそこにあるのが事務所でたまにココで昼に休憩したり仕事したりしてるんよ』

そう説明しながら鍵を取り出しカチャリと開ける。


「え?え?笑笑」

よく分からないまま上がることになった。


プレハブハウスですから、特に玄関はない。笑笑

上がった所はフラットだから、一応そこに靴箱なる、ただの箱があって
そこに脱いだ靴を入れた。

一応玄関のスペースはただの床で途中からカーペットフロア。

2つ部屋があって
玄関含めて八畳程の部屋と
もう一つは六畳程の部屋。

八畳の部屋には
玄関の所に間仕切りの様に設置されたカウンター、今では珍しいブラウン管のテレビ、小さい冷蔵庫、ローテーブルに対面でソファ、掃除機、ホワイトボード。

六畳の部屋には
水が出るシンク、パソコン、シングルベッド、オフィスデスク。

生活用品は一通り揃っている感じ。

ジロジロ部屋を見渡す間に涼太さんは掃除機をかけていた。


『そんなにジロジロみないで〜笑』

「…何なんですか?!この小屋!笑」

『小屋じゃないよ!失礼だね〜。笑   事務所。笑』


謎だ。謎過ぎる。







そうして、2人で過ごす場所の候補に加わったのが
お婆の家の敷地内にある事務所だ。




そこで夏の終わりに2人で花火をした。

事務所から少し離れた所にも駐車スペースがあって、十分花火くらい出来る。

そこで花火をしていると
遠くの方で玄関がガラガラっと開く音が聞こえた。

『あ、ちょっと待ってて』
苦笑いしながら一軒家の方へ歩く彼。

向こうから心配するような、はたまた、迷惑そうな声が聞こえた。


《何してるのー?!》

『花火やから、大丈夫』

《ホンマに大丈夫なん?火の始末ちゃんとしといてよー?!》

『分かってるって。中入っといて』

花火を持ったまま膝を抱えてしゃがんでいた私は暗闇から見えるその光景をただ眺めるだけだった。


涼太さんのお婆ちゃんと思われるその人物にシッシと手をやるとこちらへ歩いてくる彼。その向こうではまだチラチラと気にしているお婆ちゃん、、?

しかし、そのうち中へ入って行った。

『もう、ウチのお婆がごめんな』

「いえいえ。そら、気になりますよね」


花火も残り少なかったからホッとした。
早く終わらせた方が良さそう。



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