追憶
マジですか?
あまりにも勢いよく平塚さんの横へ詰めてしまい、ドカっと肩がぶつかった。
平塚さんは口を開けて笑った。
『ちょっと!あはは。面白いね早川さん』
私を見て笑った。
「す、すみません!」と謝ると同時に
平塚さんは隣に座る私をギュッと抱きしめた。
『そういうところ。』
「え?!あ、いやいやいや!!」
全力で照れてしまった。
しばらく抱きしめると私の頬に手をあて私の顔を少し上げさせた。
平塚さんの顔が近づいてきてキスされた。
『嫌?』
と聞かれてブンブンと首を振った。
平塚さんはもっと私にキスした。
チュッチュというキスから私の腰にも手をまわし、濃厚なキス。
私はディープキスが苦手でどうしたら良いのか分からず息が出来なかった。
『こっちにおいで』
私を膝の上に乗せてずっとキスをしてくれた。
『あぁ、もう我慢できひんわ。どうしてくれるん?』
色っぽい視線で平塚さんは私をベッドの中央へ運び仰向けにさせた。
ベッドの縁に装備されている照明の調節を間接照明だけに落とした。
私もすっかりその気になっていた。キスだけで自分が濡れている事も分かっていた。下着が冷たい。あぁー!恥ずかしい!
テレビは消えたけれど、薄暗い、心地よい空間の中でBGMだけは流れていた。
R&Bの洋楽だった。
平塚さんはテレビを消し、私に覆いかぶさるような格好になってジッと見つめた。
『君って可愛い』
そう言われて思わず横を向いた。
恥ずかしくて。
横向いたことで首筋にすんなり平塚さんの顔が埋もれて、、
首筋や耳を舐めながら私のバスローブをはだけさせた。
ブラはあっという間に外された。
“慣れてるこの人ー!”と心の声。
太ももから私の下着の方へ手のひらが動くが、急に恥ずかしさがドバッと溢れて
急いで平塚さんの手を抑えた。
『、、やめとく?』
「いや、あのー。むちゃくちゃ濡れてます。私」
なんの告白やねん!と思ったが、濡れすぎやろコイツ!と思われるのが嫌だった。
『じゃあ俺が確かめてあげる』
ん?俺?
とハテナが飛んだが、そうこうしてる間にしっとりした下着の真ん中ををなぞられた。
『あぁ、桜ちゃん。こんなに濡れてる』
ニヤリと私を見つめる平塚さん。
初めて名前で呼ばれた。私は恥ずかしくて
「ひゃー!ヤバイですよね」と小声で叫んだ。
下着を少しズラすと平塚さんの指がスッと入ってしまって、刺激が走って、、私はすっかり感じてしまって声が出て。。
そのまま、また深いキスを繰り返した。
色んなところを丁寧に愛撫して
私から指を引き抜くと平塚さんは濡れたその指を舐めた。
初めてそんな事する人を見た。
「そんな、、汚いですよ」
『何で汚いの?』
指をくわえ舐めたまま大人の色っぽい顔で見つめた。
もう、ダメだー!
ウチ平塚さんの事好きなんやわ!惚れてるわ。完敗。
そう確信した。
私は身体を起こして
「じゃあ、、」と、静かに平塚さんの肩をベッドへ倒した。
すっかり熱を帯びたところを口元へ運び、舌と手で丁寧に奉仕してあげた。
『あぁ〜気持ちいい。ありがとう。』
平塚さんは私の頭をヨシヨシ撫でてから身体をむくっと起こして私を仰向けに寝かせると、備え付けのコンドームを装着した。
私を優しく抱きしめるようにしてゆっくり平塚さんが入ってきた。
とても気持ちよかった。
優しいセックスだった。
ただ、私は緊張し過ぎて無言だった気がする。マグロか!私は。いや、ううん、本当に気持ちよかったけど喘ぎ声なんて出ない。緊張しすぎて!!
バックの体勢に差し掛かった。私はバックが苦手。お尻丸見えになるし、挿入されている感覚が苦手。汚い話し、う◯こが出そうな感覚が嫌なのだ。笑
平塚さんは私の腰に手を当てて動いていた。けど、私の様子に気づいたのかあまり長くその体勢を続けなかった。
またお互いに正面で抱き合って感じあってみたけど。。
私の経験人数は2、3人。セックスしてきた中で平塚さんとは長い時間繋がってた気がした。
平塚さんはなかなかイかなかった。
内心、まだか?まだか?と思っていた自分がいる。
途中で動きが止まり、私の中から抜いた。
そしてゴムを外した。
『ごめんね。ありがとう。凄い気持ちよかったんだけど、今日は疲れてたのかも』
「いいえ。私も気持ちよかったです」
平塚さんは何故イけなかったんだろう。。私がマグロだったのだろうか。涙
体の相性が悪かったのだろうか。。色んな事がグルグル回り、心の中でため息をついた。女としてはやはりショックで。
もう終わったかな。とも思えた。
お互い真っ裸で抱き合いながら余韻に浸っていた。何を話していたのかな?全ての環境が気持ちよすぎて覚えていない。
私はいつの間にか、平塚さんの腕枕でウトウト寝落ちしてしまった。
ハッとタバコの匂いで気がつき顔を上げる。平塚さんは既にスーツを着ていた。
ネクタイはつけないまま、シャツはボタンをいくつか外していた。
タバコを吸いながら携帯を見ていた。
平塚さんは私に気がついて
『起きたの?気持ちよさそうに寝てたから起こさなかったけど』
「すみません。げっ!」
デジタルの時計が目に入った。夜中の2時だった。
私はどこかに散らばっているであろう下着を布団の中から見つけ出し、布団の中でモゾモゾ身につけた。
バスローブを羽織って洗面所へ行き
服を着てヨレヨレになったアイラインの目尻部分だけティッシュで拭いた。
髪を手ぐしで直し急いで平塚さんの所へ戻った。
『じゃあ、行こっか?』
「お待たせしました。夜中まですみません。明日は仕事ですよね?」
『明日も仕事〜。けど大丈夫。少し寝たし、帰ってからも仮眠くらいとれるから』
「すみませんでした。。」
明日も仕事なのに、悪い事してしまったな。少し凹んでいると
『謝るのはこっち。こんな遅くまで女の子が夜中まで外出なんて。ごめんね。次はもっと早い時間から会えると良いんだけど、、』
と精算機にお金を入れていた。
「あ!私も出します!」
『あっはっはっ。早川さん、そんなに気使わなくていいよ。貰えへん貰えへん』
と手を横に振り、可笑しそうだった。
礼を言い部屋を出た。平塚さんはさりげなく私の手を握って歩き出す。胸がキュンキュンした。
車に乗ってからも右手でハンドルを持ち、左手で私の手を握ってくれた。
今更だけど、こないだの北川先輩の言葉を思い出した。
『おっけーおっけー!そうしい♬ あ。ただな、あたしあんまり涼ちゃんの事知らんねん、、確かバツイチやった様な気がする。』
チラリと左の薬指を確認したが、何もついていない。
敏感に気付く平塚さん。
『どうかした?』
「彼女、いないんですか?」
『はっはっはっ!いたら早川さんと一緒にデートしてないやん?』
「いや、まぁ、、」
数十秒沈黙したあと
『良かったら付き合ってくれませんか?僕と』
ん?今なんて?
付き合ってって言った?
『初めて出会った時から気になってた。早川さんの事。順番逆になってしまってごめんね。』
「え?え?え?まじですか?」
『何焦ってるの?マジマジ。』
また数秒沈黙があって
「私で良ければお願いします」
『ありがとう。よろしくね』
「はい」
ちょうど信号で止まって見つめ合って、お互い笑顔になった。
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