追憶

さくら

ドキドキしっぱなし


信号を曲がってから国道ではない中道を走る平塚さん。主要道路は分かるけどこういう道は全然分からない。

あまり会話はないけど
お互いにこの先何を意味しているのかという空気は充分感じ取っていた。

『僕の勘違いだったらごめん。こういう事でいいんですよね?』

目をパチクリさせながらホテル街の周辺まで来ていた。

私は平塚さんの目を見て黙って頷いた。

『そんな目で見られたら照れるんですけど』

平塚さんは新しい外観のホテルに入って行った。駐車場に入る前に、ふと近くに建っているホテルを見て思い出した。

そういえば、去年の夏頃付き合っていた男とあそこのホテルへ行ったなぁ。。
ガテン系のまぁまぁ男前だったが、女遊びしてるんだろうなって見るからに分かる感じの人だった。

二つ上だったから今は21くらいかな?付き合ってみたが3、4回セックスした途端連絡は極端に少なくなっていき、私からメールで別れを切り出した。
その返事は“わかった”だけ。
どうでも良いけど、嫌な思い出だ。


そんな事を思い出していたら静かに車は停車し

『緊張してきたんですけど。』
と平塚さんは私に微笑み車をおりた

「はい、、」
彼の後ろを追いかけ店に入った


私はラブホテルには前回の男と行っただけでシステムはよく分からない。

平塚さんは上から2番めに値段の高い部屋のボタンを押した。慣れてるのか。。一回り以上も歳上なら当然か。



無知な私にとってラブホテルも刺激だらけで店内の装飾品や交換景品を珍しげに眺めた。
誰かに出会わないだろうか?という気持ちも合わさりドキドキしていた。


エレベーターに乗り込み、部屋のある階にはすぐ到着した。

平塚さんが先に降りて部屋番号を見つけ
『あ、ここかな?』
と部屋のドアを開けた

続いて私も入っていった。

キレイな部屋だった。ビジネスホテルより豪華な気がする。なんて、思っていた。

平塚さんはソファの端ににカバンを置いてから、テレビの方へ向かって行った。


リモコンを触っている。

その間、私は物珍しいので部屋のあちこちを観察。広いお風呂にも興奮して
1人ブツブツ「わ〜、、すげぇ。ヤバイやん」と独り言を呟いていた。

部屋をウロウロしているとテレビからイヤラシイ音が聞こえてきて平塚さんはブハッと吹き出して慌てていた。

『ごめんごめん!テレビにしたかったんだけど間違えた!』
ポチポチとリモコンを触りながら謝っていた。

なんか、可愛い人だなぁと思って眺めて
平塚さんがカバンを置いたソファに私も座った。

普通のテレビに変えた後、平塚さんも私の隣に座りメニュー表を開いた。

『何か飲み物いる?僕はコーラでも飲もうかな』

メニュー表に目を落とすと案外豊富な品数にビックリした。

「なんか、すごいいっぱいあるんですけど! すごい。。んー、じゃあこの変わったやつ飲みます」

私は女の子が好きそうなおしゃれなドリンクを指さした。彼はソファから離れて電話機で受付へ注文していた。
私の頭の中はこの後どう進んでいくのか?
頭の中をグルグル巡った。

注文を終えると彼はベッドへ少し腰かけて
『仕事疲れるね』
緊張する私に気を使ってか一言話しかけた。彼の顔は優しい表情だ。

『先にお風呂どうぞ』
と微笑んだ後、彼はタバコに火をつけ一服していた。

「でわ、お言葉に甘えて、、」
と軽く頭を下げながら、ササーっと風呂場へ入った。

当時私はエクステを付けていた。ロングヘアだったので、いつも手首に着けていたヘアゴムで髪をアップにして、シャワーを浴びた。

化粧は落ちないように気をつけながら。

それにしても、ガラス越しに脱衣場とバスルームが透けて見えているのが落ち着かない。
脱衣場の鍵は閉めてあったので安心してシャワーを浴びることができたのだが、、。


下着だけ身につけ、バスローブを羽織り
もう一度顔を確認した。
シャワーの蒸気でツヤツヤした顔。
メイクは少し崩れていたがそれが少し濃く見えて大人っぽく演出してくれていた。

顔はどこかほころんでいて自分でも幸せな感情になっていた。

部屋へ戻ると平塚さんは届いたコーラを飲みながら携帯を触っていた。
私に気がつくと

『ごめんね。お客さんからメールが来てたから』と何やら文面を打っていた。
社用の携帯は二つ折りの様だ。
今時まだこういう携帯なのか、と少し驚いていた。

携帯を閉じると
『じゃ、僕も行ってこようかな。飲み物届いてるしゆっくりしててね』
と優しく言い放ちバスルームへ向かって行った。

私はソファにもう一度腰かけ、飲み物に手をやった。


平塚さんがバスルームから出て来たらどんな反応をしたら良いのか思いつかなかった。聞こえてくるシャワーの音を気にしながらやたらと携帯を触りだす。
私は保育所の頃から仲の良い“エリ”へメールを打った。
エリにも食事会で出会ったという平塚さんの話しはしていた。

>やばい!どーしよ!こないだ話してた平塚さんとホテルに来てるんやけど!!心臓バクバク止まらん!!涙


とりあえず送信。するとすぐに返信があった。

>え?!どゆこと?笑

>そーいう事!笑      とりあえず、ヤる感じなんかな?!この状況!パニック!笑

>ちょ!え?!笑    危ない人なん?!

>全然優しい!笑     


と、送り返した後シャワーの音が止まった。
エリからの返信が届かないうちにまたメールを打った。

>もう風呂から出て来はるし、また結果報告するわ!

>まじか!笑   健闘を祈る!


やり取りをした後携帯を大慌てでバッグへ片付けた。


それにしても、スマホにしてからフリック操作なるものができるおかげでやり取りは断然早くなった気がする。


平塚さんもバスローブを着たまま出てきた。私が手持ち無沙汰で居ることに気がつき

『何してたの?』と疑いの視線でニヤリと言ってきた。

「あ、いえ!何も。初めてこういう所へ来たので、、」と。謎に嘘をついた。笑

『そっかそっか。』
優しく微笑んでから平塚さんはベッドへ腰かけてテレビを観ていた。てっきりイキナリ身体を強要されるかと思っていたせいで拍子抜けしていた。

各自ソファとベッドに座り、バラエティ番組を2人で観ながら出てくる芸人さんのネタをみて2人で笑っていた。

半時間ほどしてから私が空気を読むべきなのか?と思い立ち、ベッドに座る平塚さんの隣へ、イソイソと向かった。

「座っていいですか?」
『どうぞ?』とニッコリ微笑んでくれた。

私は隣へ座るが緊張から少し壁を作ってしまった。少し離れて腰かけたのだ。

それをみて平塚さんは笑った。
『そんなに警戒しなくてもいいよ!』


「あ、はい!」と今度は
身体が当たるくらい極端に横に座った。





「追憶」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く