追憶

さくら

久しぶり


今日は研修ルームで勉強の日。けれど、夜から平塚さんとお食事。想像と妄想が止まらない19歳だった。
“ウチ、がっつき過ぎじゃない?!”
“いやいや。誘ってきたん相手やし!”
何度も自問自答していた。

そんな事を考えていたらあっという間に1日が終わった。

研修は18時まで。待ち合わせは19時半だった。そのため研修ルームを出る前にしっかりメイクをして急いで職場を出た。

職場から家までは15分あれば十分帰れる距離。急いで着替えて髪を整え家を出た。



車を走らせ約束の時間に無事到着した。




>どこにいますか?

と平塚さんからメールが来ていた

>今着きました。到着されてますか?

>もう着いてるよ


その文面を読み終え私は車を降りることにした。

店の方へ向かうと一台の車からスーツ姿の男性が降りて歩いてきた。


私は緊張しながらも笑顔をつくった

「お疲れ様です!早川です!」

『あははは。知ってるよ。お疲れ様。じゃあ、行こっか?』

「はい」

微笑みながら先を行く平塚さんの後を追う。

私の身長は155センチ。背が高いとは言えない。だから必ず7〜8センチのヒールを履くのだが、彼は170センチ後半はあるであろう。とても背が高かった。

スーツを着こなしていた。

カッコいいなぁ〜この人。
と案内される席に着くまでまじまじと後ろ姿を眺めてしまった。


指定された居酒屋は接待にも使えそうなお店だった。

各個室の前には革靴やシンプルなヒールの靴が目立った。

今日は昨日考えまくって選んだベージュのワンピース。丈はヒールを履くと少し短めになるが、イヤラシイ短さではない。
40デニールの黒タイツにヒール。頑張って大人っぽく装っていた。
うん、頑張れ自分。

案内された小上がりのような個室。
同じ様に靴を脱いで個室へ上がった。

向かい合わせに座った。


お互いまだ無言で荷物を置きやすい所に置いた。

向かいを見るとバチっと目があった。

思わず私は照れ笑いしてしまった。

『久しぶりだね』と平塚さんは優しく話しかけた。

「お久しぶりです。この間はありがとうございました」

『とんでもない。今日は迷わず来れましたか?』

「なんとか迷わずに来れましたよ」

『良かった良かった。じゃあ、早速何か頼もっか?』

平塚さんは優しい表情で私と会話した後メニュー表を開いた。

『何か飲む?』

「あ〜私はお水で」

『そうなの?何か食べたいものある?』

「んー。。じゃあ。。刺身が食いたいです」

『食いたい?!笑    分かった。ならお刺身の盛り合わせと、あとは適当に頼むよ?』

「あ、はい」

緊張のあまり露骨に「あ、はい」と答えた私を見て平塚さんはクスリと笑った。

呼び出しボタンで店員さんを呼び適当に注文してくれた。

私は注文している間、次は何を話そうかと脳みそをフル回転させていた。事前に話す話題も考えたのに緊張して思い出せずに焦っていた。

店員さんがおしぼりを手渡し去っていく。

ふぅっと軽く息を吐き、平塚さんはおしぼりを手に取り、手のひらを丁寧に拭きながら

『今日はお仕事だったの?』

「昨日は乗務でしたけど、今日は研修でした」

私もおしぼりを手に取る。

『へぇ〜。昨日はどこに行ってたの?』

「カニを食べるツアーで福井へ行ってました」

『そうなんだ』

平塚さんは子供に話しかける様にゆっくり私に話しかけていく。

なんか、子供扱いされてる??

とか思いつつ会話する。平塚さんの目はとても優しい眼差しだった。

しっかり目を見て問いかけてくるから一々ドキドキしてまう。
若い男の子とは何だか違う。
若い私は一回りくらい歳上の人と初めて会話した。
もちろん、職場のドライバーさん達とはワケが違う。

飲み物がまず運ばれてきた。平塚さんはお茶を頼んでいた。

『じゃ、今日も仕事お疲れ様』
「あ、お疲れ様で-す。。」

と、少しグラスをあげ乾杯の格好をした。


『なんか、久しぶりに会ったけど前と雰囲気違うね』

「え?!あ!そうですか?!」

『前はもっとキャピキャピしてた』

「いや〜、私キャピキャピして見られるの嫌なんですけどね」

『どうして?』

「んー、早く大人っぽくなりたいですもん」

『いいよ、それくらいで。案外落ち着いてるよね?今日の服装は大人っぽいよ』

「いやいや。。」と私は軽くうつむき少し首を横に振って

なんだこの人は、褒めるんじゃない!勘違いするから!!てか、内心私は照れまくっていた

こんな会話は初めてでとても刺激に感じた。けれど、普段から歳上の人達と仕事をしていた為か緊張もすぐにほぐれリラックスできていた。




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