異世界転移して無双できるほどこの世は甘くなかったようだ…

茅ヶ崎 大翔

第3日目〜夢と料理〜

俺は死を運ぶ者(デス・ブリンガー)と戦っていた。近くには麗馨と敦と薫の姿が確認できるが、他のみんなの姿はない。
状況判断をしているうちに、魔物の口が大きく開いた。俺は直感した。これはビームの準備動作だ。向いている方向からして、狙っているのは俺だろう。俺は右にダッシュし、建物の陰に隠れた。
その直後、ビームが放たれ、建物が一瞬で壊される!ビームというよりは火の玉に近いものが放たれたらしく、建物は炎上している。

「湊!」

麗馨が叫んだ。まぁそうだろう。麗馨の視点から見れば、俺は燃やされたようにしか見えない。

「俺なら無事だ!また戦闘に戻ってくれ!」

ちなみにどうして俺が無事だったかというと、建物の陰に隠れたように見せかけて、その横にあった瓦礫の山の陰に隠れていたからだ。偶然が功を奏してよかった。
魔物は、次のターゲットを麗馨に定めた。狙いを定めるように麗馨をじっと見ている。口を開けて、火球を放つ準備態勢に入ると思ったら、なんとそのまま火球を放った!麗馨も先ほどの俺を見たためか反応が遅れ、そのまま火球に飲み込まれる!

「麗馨!」

俺は叫んだ。当たるな当たるな当たるな!しかし無情にも火球は麗馨の場所へ近づいていく。「当たる!」と思い、目を伏せた瞬間、

「あーーー!」

俺は叫んで目を覚ました。隣では麗馨がスヤスヤと寝息を立てている。よかった、夢か…俺は一安心した。だが…あの夢はリアルすぎだ。まさか、俺はあの薬で、予知能力を持つという能力を手に入れたのか…?不意に不安感を感じ、俺は麗馨の手をぎゅっと握った。

「…んぅ…うんっ…あんっ…はぁー…あ、湊…もう起きてたのか…おはよ…今何時…?」

俺が手を握ったせいで、麗馨が起きてしまった。それにしても、こいつの寝起きは無駄にエロい。もとい、魅力的だ。胸元結構はだけてるし…

「起こしちゃったな、ごめん。まだ五時過ぎだよ」
「そっか…私も起きないとな」
「いや、まだ寝てればいいよ」
「いや、目が覚めちゃったし…起きるよ」
「無理すんなよ?」
「大丈夫、無理…してないよ」
「でも、睡眠不足は集中力切れやすくなるし、よくないぞ?」
「それは…湊も同じでしょ…?」
「そうだけど…」

しかし麗馨は、言葉とは裏腹にどんどん眠そうになっていった。やはり、疲れているのだろう。俺は麗馨の背中をさすってやった。

「あっ…だめっ…だめだよ…眠くなっちゃう…」

だめ、という声にも力がない。こいつはまだ寝かせとかないとだめだ。俺はそう判断し、麗馨を寝かせてやる事にした。

ーーー5分後ーーー

麗馨はまた規則正しく寝息を立て始めた。

「もう少し、寝ててくれな」

俺は眠っている麗馨にそう言葉をかけ、ベッドから出た。麗馨との会話の途中で思い出したが、昨日の朝、料理の腕を競う約束をしたんだった。昨日は麗馨が朝ご飯を作ってくれたんだし、今日は俺が作るべきだ。材料を探すため、冷蔵庫を開ける。

「って、殆ど何もねぇし…」

どうやら坂田が言っていた食糧の支給は、一食分だけだったらしい。食糧が支給される時間まで待つのか…そんな事を考えていると、放送が入った。

「みなさーん、食糧の支給を始めまーす。今日は諸事情で、こんな早い時間になってすみませーん。六時にもう一度同じ放送をするので、その放送がされた時には絶対に来てくださーい。場所は食堂でーす」

 お、きたきた。俺は食堂へ向かう事にした。

ーーー10分後ーーー

「よし、始めるか」
ジャガイモとか人参とかあるし、今日はポテトサラダにしよう。作る過程で、俺は半熟まで茹でた卵の黄身と、醤油を隠し味として入れた。

ーーー1時間後ーーー

「よし、これで完成」
「わぁー、美味しそー」
「おう、自信作だ…ってお前なんでいるんだよ⁈」
「いや、なんでも何も…湊が料理に集中してるから気付かなかっただけじゃない?私、結構前からあなたのそばにいたよ」
「まじか…全く気づかなかった…って事は、サラダの隠し味も知ってるのか︎」
「え…そんな事までしてくれたの?ありがと~」

そう言いながら麗馨は俺に抱きついてきた。隠し味など言わなければよかった…口が災いを呼んだ。

ーーー20分後ーーー

「いやぁ、美味しかったねー」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
「これじゃあ決着つかないね」
「いや、俺的には麗馨が作ってくれたやつの方が好きだが…」
「いや、あれは料理の腕云々(うんぬん)より、サプライズ性があったからだと思うよ。湊もそんな事してくれるはずだったんだろうけど、私が気付いちゃったから…ごめんね」

舌を出して謝る麗馨。どうでもいいが、可愛すぎだ。

「いや、いいよ。取り敢えず今回は引き分けって事で!また今度やろうぜ」
「うん!」

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