異世界転移して無双できるほどこの世は甘くなかったようだ…

茅ヶ崎 大翔

第1日目(4)〜夜〜

夕食を終え、俺と麗馨は部屋に戻ってきた。

「はぁー今日は本当に疲れた!」
「だな」

「ねぇ湊、お風呂入る?」

「ななな何を言っているんだい麗馨さん?!」
「いや、どっちから先に入ろうかなって。湊こそ何をそんなに驚いてるの?」

俺はてっきり麗馨が一緒に風呂に入ろうと言ってきたのかと思ったのに…残念だ。

「い、いや、なんでもない…麗馨が先に入れよ。俺はテレビでも見てるからさ」
「そっか、じゃあ私先に入るね」
「おう、いってら」
「覗き見しないでね」
「するかよ」

口ではそういったものの…見たかった。
俺は脱衣所に消えていく麗馨を見届けた後、テレビを点けてベッドに座った。しかしどの番組も死を運ぶ者(デス・ブリンガー)のことを取り上げるばかりだ。俺はつまらなくなってテレビを消し、ベッドに横になった。
今日一日、本当にいろいろなことがあった。
朝、学校に来て徴兵され、魔物と闘わされ、今に至る。
そういえば今日は一日中麗馨といた。嬉しい。だがこんなシチュエーションでは…
それと、麗馨は今日どことなくおかしかった。
戦闘が終わってホテルまで俺と競走した時は麗馨はとても楽しそうだったのに、夕食の時、麗馨は泣いていた。
めまぐるしく変わっていく麗馨の感情。俺にはついていけなかった。麗馨に一体何が起こっているんだ…

気が付くと、誰かの声がした。

「…て、湊、起きてってば」

いつの間にか俺は寝てしまったようだ。

「おう…」

俺は眠い目を擦り、起き上がった。

「!!」

そこに立っていたのは、あまりにも可愛い女の子。風呂上がりのためか顔はほんのりと上気し、美しい黒髪は絹のようにしなやかだ。しかも、ホテル備え付けのパジャマを着ているため、肌の露出が若干多い。俺の大好きな人、桐山麗馨がそこにいた。これで眠気も吹っ飛んだ。

「…なにジロジロ見てんの?」
「な、何でもない、何でもないよ…じゃあ俺もお風呂入る」

見惚れていた、とは言えない。

「変なの」
麗馨はその一言を残し、スマホをいじりだした。

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