精霊戦記フルミニス

師走

第一章 1-1

 爆撃音。
 深夜0時、目を覚ました彼が、当時齢6つの天宮コウが最初に聞いたのはそれだった。続いて炎熱で赤く染まる夜の街。窓の外に広がるのは、これまで自分が過ごしてきた場所とは似て非なるものだった。

「コウ! 何やってるの!? 早く!!」

 不意に、隣で寝ていた母親が彼を呼ぶ。それに対するコウの反応が遅れた。まだ幼かった彼には、恐怖より、意味不明な状況に対する困惑が強かったのだろう。

 母親は呆然としているコウを抱きかかえ、寝室を飛び出した。母は息子を抱き、必死に夜の街を走った。しかし、

「コォォォォォォッッ!」

 動物、いや、生物のものとさえ思えない唸り声が頭上から響いた。

 次の瞬間、巨大な手が、瓦礫や鉄骨をつなぎ合わせたかのような歪な剛腕が、まるで子供が積み木の山を薙ぎ倒すように、彼らの横にそびえ立つマンションをいとも簡単に崩壊させた。

 建造物は一瞬にしてコンクリートの破片に変わり、土台から勢いよく崩れ落ちる。

「コウ!」

 瓦礫の山が矢の如く降り注ぐ。
母は咄嗟に子供を庇い、瓦礫の下敷きになった。

「お母さん!」

 ギリギリのところで瓦礫に押しつぶされるのを逃れたコウは、自分の代わりに犠牲となった母親を呼んだ。

「逃げて!」
「コォォォォォッッ」

 母の必死の叫び声をかき消すように怪物は咆哮する。

「ひっ!」

 怪物の赤い瞳が、自分を睨んだ気がした。その瞬間、少年は脇目も振らずに駆けだした。

 地を蹴り、何度も転びそうになりながら、地獄絵図と化した街の中を駆けた。幼い足を必死に前へ前へと足を運んだ。

 その後の事を、コウはよく覚えていなかった。ただ彼の記憶に今も強く焼き付いているのは、逃げだした自分の視界の端で、母がほんの少し安堵した表情をしたことだった。

 2

 十一年前、世界は災厄に見舞われた。

 謎の影の怪物が世界各地を侵食したのだ。
それらは木を喰らい、岩を捕食し、建物を取り込んだ。

 有機、無機物問わずに己のものとする能力を持った怪物の大量発生。

 当然それまでの時代の兵器など意味を成さない。弾丸であれ、ミサイルであれ全て取り込まれてしまうからだ。対抗手段を持たなかった人類は成す術もなく蹂躙され、世界人口は三分の一まで減少した。

「しかし、その被害が何故三分の二にまで抑えられたか、それを成したのが奴ら、喰精コメルに対する最大の対抗手段、この霊子駆動スピリット・ギアだ」

 巨大な工場のような場所で、黒いTシャツの上に白衣を羽織った中年の男はそう誇らしげに、目の前にある巨大な人型の物体について語る。それを聞く学生たち、特に男子生徒の目は輝いていた。

 生徒が一様にいい反応をするので、白衣の教師、藍川一志は上機嫌だ。

「この霊子駆動スピリット・ギアは見た目通りのただのロボットじゃない。古代遺跡から発掘された超古代文明の遺産だ。いわゆる超古代兵器アーティファクトってやつだな」
「「「おおー!」」」

 生徒が興味を持ってくれたのがよほど嬉しいのか、藍川は気持ち悪いくらいの笑みを浮かべて、人差し指で顎鬚を撫でる。

「元々こいつは、こんな風にカッコイ見た目じゃなくて、人間の姿を模して造られた灰色の人形だったんだが、それに鎧となるパワードスーツ「神機外装」を被せたのが今の姿なわけだな。これにより、性能が上昇した」
「先生!」

 そこで眼鏡を掛けた男子生徒が手を上げる。

「何だ?」
「何故ロボットにパワードスーツを装着させて性能が向上するのでしょう?」

 尤もな疑問だ。
 パワードスーツとは人体の動作を補助するものであって、ロボットに取り付けるならロボットの機構そのものを弄ればいいだけの話である。

「それはだな。さっきロボットだとか言ったが、実は霊子駆動スピリット・ギアはロボットじゃない」
「どういうことですか?」
「遺跡に残された記録によると、元々こいつはその地域で信仰されていた精霊が活動するための体として作られたんだ」
「精……霊?」

 先ほどまで興味津々に聞いていた生徒達の反応が二分された。
 ここで何故オカルトの存在である「精霊」なんて単語が出てくるのか、という疑問が顔に現れた者、一方ある程度知っていたのか、講義に集中している者もいる。

「知らないやつがいるのも無理もない。精霊云々は一般には秘匿されているからな。だがお前たちも霊子は知ってるよな?」

 藍川の視線が、偶然端の方で小さくなっている女子生徒へと向けられた。

「は、はい。十年くらい前に発表された新エネルギー、ですよね」

 女子生徒は自信なさげに答える。

「世間ではそういう事になっているが実際は違う。霊子とは自然界を構成する情報だ」
「情報?」
「ある特定の情報を持った粒子と言ってもいいかもしれない。その自然界の情報たる霊子の集合体こそが精霊な訳だ。
 霊脈とか聞いたことあるよな? あれはまさしく自然界を流れる情報だ。今は霊子が色んなところで使われているよな。
 その筆頭がお前らも持ってるエーテルフォンだ」

 そういって藍川はポケットからスマートフォン型の端末を取り出した。
 エーテルフォン、通称「エルフォン」。
スマートフォンの発展形であり、霊子を流す回路「霊子回路」により、処理能力や容量が、劇的に跳ね上がったものである。今では身分証や仮想通貨などの機能で、人々の生活にとってなくてはならないものになっている。

「その恩恵を受けられるのも、自身が霊子の集合体であり、霊子を生み出すことのできる精霊様のおかげというわけだ」

 説明を受けても、生徒はまだ信じられないという表情をしている。

「話を戻すぞ。さっきも言ったが、元々は精霊を憑依させるための器だ。
 ところが、その超古代文明も喰精コメルの侵食を受けたわけだ。そこで、元々人間サイズだったものを大型化したのが、今の霊子駆動スピリット・ギアの前身になるものだ」

「つまり、精霊が乗り移って動かすものに、パワードスーツを着せて機動性や馬力を向上させたという事ですか?」

「そういう事だ。
 まあ精霊には会ってみるのが一番早いだろうが、お前達が今日から勉強するのは精霊が憑依するための器、「霊機核」じゃなくて、さっき言ったパワードスーツ、神機外装についてだ。
 半年後にはメンテナンスにも関わってもらうことになるから張り切って勉強するように」
「あの……」

 授業を終えようとしていたところで、一番後ろで聞いていた男子生徒が手を挙げた。

 男子高校生としてはやや小柄な体格、死にかけの老父のような瞳で藍川を見つめている。

「なんだコウ?」
「霊機核についてはいつ勉強するんですか?」

 彼は無表情のまま、淡々と疑問を述べた。

「ああーそれか……」

 それを聞いて、藍川は申し訳なさそうに頭を掻き、答えにくそうに口を開いた。

「実は霊機核についての授業はない」
「「「えー!」」」

 別の生徒達から不満の声が鳴る。

 当然と言えば当然だ。わざわざ樫宮高校の開発整備科に入るくらいだ。メカが好きで、それを作りたくて入ったのに、いざロボットを作る授業が始まったと思えば、一番肝心な内部機構について学べないなど。

「まあこればっかりはどうしようもなくてな。今の人類に、こいつを作る技術はないんだよ。
 一応霊機核の外面だけなら作ることも可能だ。現代の加工技術があれば、人体構造を精密に再現するのはさほど難しくない。
 だが、精霊を憑依させるための専用の霊子回路、こいつがどうしても再現できない。だから作っても実用性のない劣化品になっちまうんだよ。

 全く、金属を加工する技術なんてなかったはずなのに、古代人はどうやって作ったんだか。質問は以上か?」

「はい」
「よし、じゃあ今日は解散」
                     3

 国立樫宮高校は、霊子駆動スピリット・ギアのパイロットを始めとした喰精コメルに対抗するため隊員及びメカニックを育成するための養成機関である。

 十一年前の災厄によって破壊された成田空港の跡地に、新しい自衛隊基地を作る際に、人員不足だった自衛隊の人材集めのために設立された学校である。

 周辺地域は高い壁に覆われ、学校の敷地内、敷地外は連日物騒な兵器や、武器を構えた隊員達が行き来している。その中には現役の学生も交じっており、日本の自衛隊がいかに人員不足であるかを物語っている。

 特に、喰精コメルと戦うために必要不可欠な霊子駆動スピリット・ギアを操縦できる人間は数が少なく、それを整備できる人間もまた少なかったため、学生のうちから現場に立たされるのもよくある話だった。

「お待たせ」

 コウが食堂でカレーを食べていると、隣から息を切らしながら、一人の少年が走ってきた。

 清潔に整った黒い髪、身長は百七十半ほどで、コウよりも高いくらい。二重で目が大きく、イケメンというよりかは美少年という感じだ。

「遅かったな仁」

 コウはやってきた友人の方には視線を向けず、黙々とカレーを食べ続ける。

「ごめんごめん」

 そんな彼の相変わらずな様子に、仁は苦笑いをしてコウの向かいに座った。

「今日も訓練だったのか?」
「まあね。いつも通りの戦闘演習」

 切咲仁きりさき じんは樫宮高校を守る防衛部隊のパイロットである。

 いくら学生が現場に立つことの珍しくないとはいっても、十七歳という若さで霊子駆動(スピリット・ギア)のパロットになれたのは、やはり彼の凄まじい才覚あってのものだろう。

「そうだ。今度遺跡の発掘調査に参加することになったんだけど、コウも来る?」
「……たかが開発整備科の俺が参加してもいいのか?」

 そういいつつ、少し興味を示したのか、目線を仁の方に向けた。

「むしろ開発整備科の生徒に声が掛かってるよ。
 実際に発掘した霊子駆動スピリット・ギアの加工を行うのは開発整備科なんだし。僕はただ採掘するのに霊子駆動スピリット・ギアを使うからって呼ばれただけで」

「ふーん……」
「それにたかがなんていっちゃ駄目だよ。開発部門があって初めて僕らは戦えるんだから」
「ああ。そうだな」

 いつの間にか食べ終わっていたコウは、紙パックのジュースのストローに口を付けた。

「遺跡調査の話、いつなんだ?」
「来月末だってさ。興味があるなら僕から話しとおしとくよ」
「……じゃあ頼んだ。俺はもう行くから」
「あ、待って」

 食べ終わった皿を下げようと席を立つと、仁がそれを引き留めた。

「何?」
「実は最近新型機の研究が始まっててさ。近いうちにパイロットの採用試験があるんだ。それで……」
『仁』

 すると、仁の言葉を遮るように、テーブルに置かれた仁のエルフォンから声が発せられた。
 機械の合成音や録音などではない、滑らかで自然な女性の声だ。ひとりでに光を灯した画面には、人の姿が映った。

 長い金髪、肌は光を反射するほど白く、黄金の瞳は常に睨んでいるようで、近寄りがたい印象を与えている。

『そろそろ何か食べないと、午後の授業に間に合わないわよ』

「ごめんフルメル。そうだね。訓練でお腹も減ってたところだし」

 雷の精霊「フルメル」。仁の霊子駆動スピリット・ギアを動かすパートナーだ。

「フルメル」
『こんにちは』

 コウからの挨拶に対し、フルメルは不機嫌そうに返した。たった五文字の言葉の中に、只ならぬ嫌悪感が込められている。それは態度にも表れており、コウと目線を合わせようともしない。

「……」
 コウは無言で、フルメルの無愛想な顔を見つめる。

『私の顔に何かついてる?』

 ここでようやく、フルメルがコウの方を見た。その表情は明らかにコウに対する憎しみが込められていた。

「いや、なんでもない」

 そんなフルメルの態度にも、コウはいつもの無表情を崩さず、ただ肩を落として彼女から視線を外した。

「じゃあ俺はもう行く。俺は嫌われているらしい」
「う、うん。じゃあね」

 コウは紙パックをカウンター付近のゴミ箱に投げ入れ、皿を返すと食堂を後にした。

  4

 翌日も開発整備科の生徒達は霊子駆動スピリット・ギア格納庫で授業だ。解説をする藍川も、本格的な授業ということで熱が入る。

「えーっと、今日は神機外装の具体的な仕組みについてだ」

 モニターには神機外装の詳細な設計図が表示される。

「知っての通り、喰精に通常の兵器は効かない。
 ていうのは喰精の捕食能力で弾丸もミサイルも取り込まれるからなんだが、神機外装は霊機核に精霊が憑依した時に接続された内部の霊子回路にも精霊から生成された霊子が流れる。
 これで喰精の情報量を上回った神機外装は捕食されない」

 設計図上の神機外装に書き込まれあ細い線が淡く光る。

 喰精コメルの物質を取り込む能力は、実は精霊の憑依と原理が酷似しており、自分の情報量を上回る情報を持つものに対して、即ち一定以上の霊子が流れているものに対してはその能力を発揮できない。

 その証拠に、確認されている限りでは、喰精コメル霊子駆動スピリット・ギアなどの霊子回路が組み込まれたものを取り込んだという報告はない。

「同じように、装備されたミサイルやらアサルトライフルみたいな武器にも霊子が流れる。お陰で喰精にダメージを与えることができるんだ」

 他の生徒が熱心に授業に聞き入る中、コウは詰まらなさそうにボーっと格納庫に置かれている神機外装が装着されていない霊子駆動スピリット・ギアを見つめていた。

「おいコウ」

 すると、全く授業を聞いていないコウに気付いた藍川は、丸めた教科書でコウの頭を軽く叩いた。

「聴いているのか?」
「……すいません」

 謝罪の言葉は棒読みのやる気のない口調だ。その様子に怒るでもなくただ呆れたようにため息を吐く。

「あのな……」
「でも今日の話は大体知ってる話だったので……」
「まあお前はそうだろうがな。予習済みなのは結構だが、その態度はよくないぞ」
「はい」

 相変わらず発する言葉全てから覇気が感じられない。

「まあとにかく、メモは取らなくてもせめて話くらいは聞いとけよ」

 それだけ言って授業に戻ろうとしたその時、けたたましいサイレンの音が格納庫内に響き渡った。

「今度はなんだってんだ。おいお前ら、慌てるなよ。取り敢えず落ち着いて警報を聞け」

 藍川が頭を掻き、面倒くさそうにしながらも、生徒達に指示を出す。

『千葉県警戒情報、十五時十三分、喰精コメルが第二防衛ラインに出現。現在、新成田市へ向けて進行中。市民のみなさんは直ちに付近の地下シェルターに避難してください』

「第二防衛ライン、うちの近くだな。よし。すぐそこにシェルターの入り口がある。俺について避難を……」

 だが、避難を開始しようとした彼らに矢継ぎ早にトラブルが襲う。

 ドゴォンッ!

 入り口から打撃音が響いた。見ると、格納庫の分厚い扉が吹き飛ばされ、金属片を無理やり人型につなぎ合わせたような姿の喰精(コメル)が大量に押し寄せたのだ。

「小型喰精コメル! これだけの数が何で……」

 樫宮高校の周辺地域を覆う壁は、霊子回路が組み込まれている。神機外装と同じように、喰精に捕食されないための措置だ。
にも拘らず、敵は樫宮高校の敷地内まで侵攻してきたのだ。

「……しょうがねぇ」

 藍川は、押し寄せる金属の怪物たちを見据えながら、懐から銀色の物体を取り出す。

 それはマグナムのような見た目をしているが、本来なら弾倉となるべき部分が欠落し、そこには何かを取り付けるためなのか、コの字型のフレームがついている。

「エルフォンセット」

 そのフレームに、自身のエルフォンを取り付けると、銃身に緑色の光が走り、銃口が発光する。

「エルガン起動」

 トリガーを引くと、弾丸の代わりに、金色の光弾がスパークしながら喰精コメルに向けて発射された。

 対喰精コメル用起術魔銃『エーテルガン』、通称エルガン。通常兵器では傷一つ付けることのできない喰精コメルに対して、対抗手段である精霊の力を簡易的に扱う武器である。

 霊子の流れを操作する事で、発生する超常現象『魔法』を極めて単純な操作のみで引き起こす事ができる。
 エルフォン内の霊子を使用するため、精霊に頼らなくても喰精コメルとある程度なら戦える。

 特に、今回のような小型喰精コメルに対しては、巨大兵器である霊子駆動スピリット・ギアでは対処し辛く、霊子駆動スピリット・ギアとは違い大量生産可能なので重宝される。しかし、

「くそっ! こいつらかてぇ!」

 本来有効なはずのエルガンによる攻撃が、先程からまったく通る様子がない。光弾を受けても、少し怯むだけで、またすぐに彼らに向けてのそのそと歩き始める。

「こいつら、いったい何を吸収しやがった?」

 先生は生徒の前に立ち、銃を撃ち続ける。しかし、敵の吸収した金属に阻まれ、ダメージが通らない。その時、

「先生、少し下がってください」

 瞬間、コウが床を蹴り、弾丸のように戦場に飛び出した。

「お、おい! コウ!?」

 コウは脇目も振らず敵の軍団に突撃すると、途中に落ちていた鉄パイプを拾い上げ、そのまま敵の一体に叩き付けた。

 ゴォォォォンと、激しい衝撃音が響く。見ると鉄パイプは曲がり、対して喰精コメルの体は無傷だった。

「……」

 あれだけの衝撃を受けたにもかかわらず、コウの方も無反応で鉄パイプをギュッと握りなおした。すると、コウの腕が引っ張られる。見ると鉄パイプが、敵の体に飲み込まれている。

「……」

 コウはやはり無反応で、鉄パイプの一部が飲み込まれた状態で強引に持ち上げようと力を込めた。

「なっ!」

 これには藍川も驚きを禁じえなかった。金属片を取り込み、相当な重量になっていたはずの喰精コメルを、鉄パイプごと軽々と持ち上げて、そのまま別の個体に向けて叩き付けたのだ。

ガシャーンッと、破砕音を響かせ、二体の喰精コメルの体は大破した。

「先生、今です」
「あ、ああ」

 半ば呆れながらも、それでも銃をしっかり構えなおして、敵にトドメを刺した。
 鉄パイプの長さが三分の二ほどになっても構わず、コウは次の敵を見据えると、同じように鉄パイプを食わせ、ハンマーのように振り回したそれを、今度は三体に対して同時に叩き割る。

「全く、無茶苦茶するな……」

 破壊された金属片から黒い煙のようなものが出てくる。それを先生は淡々と撃ち抜く。

「おいコウ、こっちはもういい。数も減ったし、俺について一緒に……」
「すいません。俺は別のとこ見てくるんで」
「お、おい!」

 先生の言う事を聞かず、残りの喰精(コメル)達の横を通り抜けて、格納庫を飛び出して行った。

「全くしょうがない奴だな……」

 大きなため息を吐き、項垂れる。

「まあいい。お前らは俺についてこい。シェルターに避難するぞ」
「ほっといていいんですか?」
「良くはないが、今はお前ら優先だ。取り敢えず……伏せろ」

 次の瞬間、格納庫入り口の方から大量の光弾が敵に襲い掛かる。
 突然の背後からの奇襲に、喰精コメルの軍団はたちまち殲滅された。

「大丈夫ですか!?」

 スーツ姿の数名の兵士達が、ライフル銃のような形状のエルガンを構えて現れた。

「ああ。こっちは全員無事だ。バカが約一名、第二防衛ラインの方に走って行ったから、誰か探しに行ってくれ」
「了解した。では私がその生徒を捜索し、速やかに保護する。お前達は他の生徒の護衛を」
「「「はい!」」」

 上司らしき女性の隊員が指示を出すと、部下は敬礼して生徒達の元へ駆け寄った。

「たくっ、無事だと良いんだが……」

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