神殿の月

こうやまみか

 ただ、かなめを失った舞姫の扇のようにしどけなく開かれた脚の付け根は未だ何の反応も示していない。
 深い色合いを帯びた瞳が深い淵のような神秘の煌めきを湛えていた、戦神の化身に相応しく水晶の英知さと、そして猫目石ねこめいしの機敏さを窺わせる綺麗な煌めきに。
「唇には致しませんが、他の場所なら良いのでしょうか……口づけの栄誉は」
 好きにしろとは言われていたので、聖神官のほの紅い唇が言葉を紡ぐ前にこめかみに唇を落としながらやや冷ややかな体温で薫り立つ肢体へと覆いかぶさった。
 ファロスの唇や指で細くしなやかな素肌を確かめるように辿りながら。
「ああ……」
 胸の尖りの先端部分を尖らせた舌でつつくと甘い声が零れて、しなやかな指が愛撫をせがむようにファロスの頭部に回された。ほの紅く染まった指が漆黒の髪を愛でるように動いていた。
 ファロスは一際高まる情動のままに、既に熱く滾たぎって先端から雫を零した場所を、未だ育っていない場所に擦りつけて熱を与えた、出来れば熱以上の反応が欲しいと思いながら。
 硬く尖った胸の尖りを舌全体で転がしては、もう片方の尖りを指で丁重かつ情熱的に摘まんではひねるという行為に没頭しつつ、重なり合った下半身も同じ早さで動かすと、甘い声が一際甘く蕩けてくる。
 密着した素肌の熱が移ったのか、それとも神の憑代よりしろとしてではなく人であることの証しなのか紫の絹の上の素肌が紅色に濡れている。そして、下半身も熱く濡れた協奏曲を奏でている。
「指で、確かめても……」
 耳朶を甘く噛むと、しどけなく開いた両脚がファロスの腰へと縋るように回される。
 その慣れている感じと、時折漏らす嬌声の初々しさの落差が堪らなく悦い、これも神に近いとされる聖神官だからだろうかとファロスは思った。
 ともすれば熱く、そして性急に求めてしまいそうな身体を必死で律しながら。



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