修羅道 ~レベルを上げたいだけなのに~

雷然

第11話 悪い女

 その夜、せまってくるのでキャサリンを抱いた。
 行為のあとシーツを剥ぎ取ってからシャワーを浴びにいく足取りの不自然さを俺は見逃さなかった。が何も言わないでおいた。
 ……俺も似たようなものだしな。
 戻ってきたキャサリンに抱き枕にされて就寝した。


 翌日に歩き方がぎこちないなんて言うのは童貞の妄想に過ぎない。少なくともキャサリンはもう大丈夫そうだ。
 今日の予定は武闘祭の受付と図書館に行くこと。
 図書館の方はこの世界の歴史や常識を知る為だ、異世界からきた俺が外国人でごまかし続けていくのは限界がある、キャサリンを信用しない訳ではないが会話だけの学習では不十分だと判断した。


 受付は城内の専用受付場所の他、役所でも大丈夫らしい。
 せっかくだからお城に行くことにした。城内の兵士はしっかり武装していたが見える範囲では出入り口に二人が立っているだけ、他はどこにいるのだろう。


 受付で名前、住所、流派、あとはもっている人は通称つうしょうを記入するだけだ。
 俺の[言語理解]は文字にも適用されいる、読み書きはバッチリだ。
 そして名前であるがこの国では貴族以外苗字をもたない、その代わりかは解らないが通称を用いられる、俺には当然ないので流派と同じく空欄にしておいた。まぁ自分でつけてもいいそうだが。
 因みにキャサリンには通称があった、刺青である。『刺青のキャサリン』ふむ、まんまだ。


 家にもどって簡単な昼食をとったあと昼寝する、この辺の風習だそうだ。
 実にすばらしい習慣だ。


 午後になって図書館へ向かう。日本と同じで無料で誰でも利用できるので、実にありがたい。
 色んな本に目移りしながら読み進める、どの情報が常識的なものか俺には判断がつかない、キャサリンに手伝ってもらいながらより広く知られている情報を脳細胞に刻み付けていく、頑張れ俺の海馬。


 夕暮れになったので切り上げることにした、また明日もくればいい。


 大通りから道を曲がる、反対側から男が三人並んであるいてくる、そんなに大きな道ではないので道幅いっぱいだ。
 「げ」
 何かに気づいたキャサリンが俺の背に隠れるが遅かったらしい。
 「ぅおいキャサリン会いたかったぞぅ、それとその男は誰だ?どういう関係だ?」
 真ん中の太った男が言う、武闘祭の受付でもしてきたのだろうか?背中に背負った武器のつかが見える。
 「ぅおい、貴様、ぅオレのキャサリンとどういう関係だ?あぁん?」
 ふとっちょはご立腹の様子。
 「何とか言えよ小僧ぅ、ビビッて声も出ないか?」
 「彼はあたしのダーリンよ!あんたなんかよりずっと強いんだから!」
 何も答えない俺を他所よそに勝手なことをキャサリンが言う。
 「違う、一発ヤっただけなのに俺の女になったつもりでいるんだこの女は」「やれやれだぜ」


 俺の発言にキャサリンは顔を赤らめ、ふとっちょは激怒した。
 手を頬にあてながら「キャ」とか小声で言っている。
 ふとっちょが柄に手をかけ武器を振り下ろす、大型の斧だ。
 ふとっちょの両脇から「おい殺すなよ」とか「流石にやめとけ」等の声が飛んでくる。
 それに構わず上段から斧が振り下ろされた。
 頭上に落ちてくる斧を左手ではさむように受け止める。
ちょっと調子に乗りすぎた、親指と人差し指の間が少し切れた、真剣白刃取りにしとけばよかったと反省。
 「ぅあ?」
 驚愕するふとっちょの腹を斧を押さえていない右手で押し、吹き飛ばした。
 「チートですまんな」
 おおよそ俺にしか解らない独り言をつぶやき、斧をふとっちょの連れに優しく渡す。
 呆然とする彼等のそばを通り過ぎ俺達は帰路につく。




 「なぁお前、あいつとどういう関係だ?」
 「ダーリン気になるのぉ?大丈夫よ何でもないわ、昔結婚ををちらつかせてたらお金をくれただけよ?」
 「それから?」
 「それだけよ、お金がなくなったから今度は別のカモに乗り換えたの」
 「なるほどな、可哀想にあの様子じゃまだ騙されたことも解ってないぞ、あの太っちょ」
 「それよりダァリン♪あと何回するつもりなの?あといつダーリンの女になるのかしら私」
 「なんの話だ」
「またまたぁとぼけちゃってぇ」








 昨晩より熱い夜になりそうだった。







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