魔法の世界で転生神は魔力をくれませんでした。

美愛(みあ)

第1話



俺は佐藤南輝なんきだ。船橋高校に通っているどこにでもいるような小説(ラノベが1番)好きの高校2年生。そもそも本自体が好きで、有名映画があると、原作を読んでから映画を観ないと満足できないタイプだ。こいつ変わってるな、とか思ったかもしれないが、至って健全であんなことやこんなことを時々考えちゃう童貞だ。まあ、自己紹介はそれくらいにしておこう。今は学校に向けて歩いている。今隣で歩いているのは幼なじみの咲紀さきだ。咲紀とは幼稚園に入る前からの知り合いで、家は隣同士にある。家が近いことも相まって、昔から咲紀と一緒に登校してる。まあ、一緒に登校しているといえども、最近はお互いにスマホを触りながら登校しているので会話は少ない。俺は今TwittistというSNSアプリで他人のつぶやきをみて笑いそうになってたところだ。
すると、突然咲紀から話しかけられた。
「ねえ、猫があの道渡ってるよ?危ないよね。」
あの道というのが駅から船橋高校に行くまでの間にある1番広い道(両方向とも一車線ずつだけど)で、信号もあるし滅多に事故が起きたなんて聞かない。東船橋駅入口とかいう信号名の通り、駅を出るとすぐに信号がある。駅近くだからは知らないが、そこの道はそこそこの交通量がある。確かに今は歩行者信号は赤なので猫は轢かれるかもしれない。
「猫が道を渡ることだってあるだろ。」
これは実際そうなのだ。今までも何回か道を渡ってる猫を見たことがある。俺は赤信号の時に渡る猫を見たのは初めてだが、猫が目の前で車に引かれたのをみたやつもいるくらいだ。
「それはそうだけどさ、轢かれるかもしれないよ?危ないじゃん。」
「轢かれたらその時だろ。轢かれたのを目の前で見た事あるって言ってたやつもいたし。」
「猫を助けたいの!かわいそうじゃん!」
咲紀は無類の猫好きで、道端に棄てられた猫がいたら、拾って家に持ち帰って親に怒られるくらいだ。そんな咲紀からしたら見捨てるなんて言語道断と思ってるかもしれないが、この道路はそこそこ交通量があるから助けにいくのは危ない。だから、助けに行くのをやめろと言おうとしたその時に…
「協力してくれないなら私1人で助けるよ。」
そう言い残して、道路へ飛び込んでいった。
「おい、待てよ…」
ちょうど咲紀の目の前に大型の乗用車が迫っていた。やばい。そう思った瞬間、考えるよりも先に体が動いた。衝突寸前で咲紀の体を何とか吹き飛ばしたが、その直後に体の右側に強い衝撃を感じ、そのまま意識を手放した。

目を覚ましたら真っ白な天井が見えた。
んーと。さっきは咲紀を助けて車にはねられたんだよな。てことは、ここは病院か?
「ほっほっほっ、目を覚ましたか。貴殿は才能がありそうだから、私の管轄しているこの世界とは違う魔法の世界に転生させてあげようではないか。」
おっと、いきなりやばい人いるな。怪我人に転生とか魔法とか厨二病こじらせすぎてるでしょ。でも、そんなやつ知り合いにいたかな?
「失礼じゃな。貴殿は車とぶつかって即死じゃった。儂は本当に転生させてあげると言ってるのじゃぞ?それとも他の人と同じように無の空間へ魂を送られたいか?」
あ、少し理解できた。まず喋ってないのに心を読んで来たところを見るとほんとに死んでしまったのだろう。そうなれば、ラノベ好きとしては転生一択だろう。
「儂は貴殿がそう言うと思ってたので、準備は出来てるのじゃ。中位貴族の家じゃ。せいぜい頑張るのじゃよ。」
おい、説明してくれよ…。その思いは虚しく、南輝は転生したのだった。









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