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Azurelytone 【1】~アズレリイトオン~

羽兼

017 自由


………

…………

食事の終わったレヴィンに、水を注いだグラスを渡しながら口を開く。


「……彼女は自由に
    なりたかったのでは?」 


水を飲み干すあいだ、ミヅキは静かに待っている。
レヴィンに食事を作るのは、食事を必要としないミヅキにとって人間らしい営みのひとつだ。


「幼い少女を守りたい一心で
   父親は、ダストをとりこんだ 」

「だが……それは、自身が抱えていた
    病にも永遠に苦しむ事を意味した」

「………病みは精神を少しずつ
   蝕んでいく」 

「そんな父親を60年近く見続けた
    ………彼女にとっても
    限界だったんだろう」 

「彼女が解放されたかった束縛とは
    『永遠に妻と誤解される』事」

「そして……」


レヴィンは、ミヅキの瞳をまっすぐに見た。

彼が、理解できない年齢である事は承知の上だ。


「自由とは『自分で選択する』
    ということ……」


「限りあるならば、
    命を看取りたいと思えるのかもな」 


カウンター越しのミヅキは無表情にかたる。



「20代でダーザイン(不死者)
    になった……俺は」

「身体も精神も時間はそこまでだ」

「……人間を理解できそうにないな」 

レヴィンはクスリと笑って、ミヅキに問いかける。

「なぜ?  すぐに止めを刺さなかった?
    君の力なら一緒で終わらせる事も」


「まるで、俺達が駆け付けるのを
    待っていたかの……」 




「…………」

「……ただの偶然さ」


ミヅキは興味も無さそうにこたえた。


「そういえば、 f は?」

「あぁ……部屋で寝ているよ」

「ダスト(Dast)を
    かなり取り込んだからな」

「本人は平気だといっていたが…」

レヴィンのスタイル(術)により、 f はかなりのダストを取り込んだはずだ。

当の本人はまったく平然としていが、
暫くして、眠りだした。


「食事をとる」

「睡眠がある」

「死の意味がわかる」

「おそらく…………
    精神も少年のままではない」



「ダーザイン(Dasein)にしては
    ……人間らしすぎる」 


「……産まれながらの
   ダーザイン(Dasein)……か」

「………」

「まぁ……なんにせよ
   今回は、借りができたな」 

「……彼をこのままうちに
   おいてもらえるかい?」 

「マスターは、お前だ」

「好きにすればいい……」 

「たとえ……死なない
   とわかっていても、
   子供の姿をしていれば、
    放ってはおけないか…………」 


「俺のようにはなるなよ」


ミヅキが指差した自身の首には、紅い亀裂が走っていた………。 








百年近く前に建てられた店は、
不規則に増改築を重ねられている。
僕は、そのうちの一部屋を
与えてもらえた。 

僕は、ベッドに転がりながら
老婆の事を考えていた。

彼女はなぜ立ち去らなかったのか?
男の残された時間を、
共に過ごしたかった。

男が混乱する以前、二人には
良い思い出があったのかも知れない。 

思い出が…………
ダストを取り込む度に、記憶が
削られていく僕にも、
無くしたくない思い出がある。 

「m…a…i…♪」なつかしい
メロディーを呟きながら
やわらかな睡魔に身を委ねた。 


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