転生学園~転生する前に学園に通いましょう~

美浜

第11話  恋愛小説

俺と氷さんを結ぶもの。
それはこの不思議な部活ではないだろうか。

放課後。
昨日会長に案内してもらった道を思い出しながら部室へ向かう。

超能力者が集う会。そんな厨二病感溢れる部活の名前だけど内容は薄っぺらいものだ。
ただそこにいるだけ。何をやるかは各自の自由。超能力を持つがゆえに孤立した人たちの憩いの場。
それがこの部活らしい。

何故俺がこの部活に入部しているのかは謎だ。もしかしたら右手に封じられた力が覚醒するのかもしれない。


「こんにちはっす!」

「あら、帯刀さん。こんにちは」


既に部室にいた会長さんはわざわざ立ち上がると優雅にお辞儀する。
そして昨日と同じように端の方で本を読んでいた氷さんは軽く会釈するとすぐに目線を手元に落とす。


「ふふっ。ごめんなさいね。氷さんは昨日から私が貸した恋愛小説にはまっているんですよ」


素っ気ない氷さんの態度を見てか、会長さんがフォローする。
真剣そうに······無表情ではあるけれど、夢中で読んでいるのは恋愛小説。
俺もたまにではあるけど小説は読むし、恋愛物は結構好物だったりする。

何かキッカケを作るのだとしたらここしかないと思った。

 
「氷さんって恋愛小説が好きなんだね。ちなみにどういうお話が好きなの?」

 
俺が話しかけると氷さんは読んでいた本にしおりを挟んでいつものようにメモ帳を取り出す。


『今読んでる本が初めての恋愛小説なのでどれが、とは言えないです』

「へぇ、そうなんだ。じゃあその本はどんな話なの?」


てっきりいつも本を読んでいるものとばかり思っていた。

氷さんはいつもよりも長い時間をかけてメモ帳に書いている。
本の内容を短い言葉で纏めるのは難しいのだろう。


『人見知りの女の子が転校してきた男の子と話すようになって段々仲良くなって恋人になるお話ですかね』

「······へ、へぇ」


なんというか、見に覚えがあるというか、まさに今がそんな感じというか......
やっぱり無表情の氷さんは、気が付いているのだろうか?


『それで、段々積極的になった女の子は次第に友達も増えていって、楽しい高校生活を送るんです』


追加でもう一枚のメモ帳も見せてくる。
そこでふと、視線を感じた。
後ろを振り返ると会長と目が合う。

そう言えば会長が渡した本って言っていたし、もしかしなくてもそういうことなのか?
普段のチキンな俺ならこれ以上踏み込むことはないけど、先生に頼まれ、会長に唆され、なんと言ってもクラスの様子を見て俺自身がやりたいと思った。
こんな俺でも少しでも氷さんの手助けをしたい。


「氷さん。氷さんはその女の子みたいになりたいですか?」


お節介なのかもしれない。
だけれど、俺はこれはやらなくてはならないと思った。
 

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