転生学園~転生する前に学園に通いましょう~

美浜

第10話  俺には何ができる?

次の日は普通に過ぎていった。

教科書は届いたので授業中に氷さんに見せてもらうことはなく。普通の転校生らしくクラスのみんなともそれなりに会話を交わす。
二日連続の古典の授業中には昨日はあったはずのぬくもりというか緊張みたいなものはなくって、水琴先生に注意されることもなかった。

だけどこの学校で二日間過ごして分かったこともある。
二日しかいない俺にも分かるのだからそれは異常なことなのであろう。


「氷さん、部活って毎日行かなきゃダメとかそういう制約ってある?」


昼休みになって、俺は氷さんに話しかける。
何気ない普通のこと。なのに感じるのは周囲からの視線。
そして俺は気付く。
今日はまだ氷さんが誰かと喋るところを見ていない。隣の席の俺が言うのだから間違ってはいないだろう。
 
氷さんはメモ帳を取り出してサッとペンを動かす。


『特にはないよ。行きたい時に行けばいいと思う』


それだけを見せるとさっさと教室を出てしまった。
素っ気ない態度に、多少ではあるがショックを受けてるとクラスメイトの一人が話しかけてきてくれる。


「帯刀、その、なんだ。あんまり氷さんとは話さない方がいいと思うぞ」


彼は俺の席の前に座っていて、よく喋るようになったし色々と頼りにさせてもらっている。
話していて彼の優しさは伝わってきていたし、悪いやつではないと思うけどどうしてそういうことを言うのか?
こんな風に思っていたのが顔に出てしまったのか。慌てて言葉を繋ぐ。


「あ、いや、いじめとかそういうのじゃなくて、最初はみんな結構積極的に話しかけてたんだ。なんだけど、メモ帳に書くのはどうしたって話すよりは遅いし、ずっと無表情で何を考えているか分からないし。いつしか話そうとする人もいなくなって、彼女からも一人が好きだから無理して話しかけなくていいって言われたんだ。だからみんな話しかけることはほとんどない」


話を聞いて俺はどう思ったのか。
難しいことはよく分からないが、なんとなくこのままじゃダメだと思った。
けれど、一度できてしまった空気を壊すのは並大抵のことではないと知っているし、氷さんも望んでいないかもしれない。
お節介かも知れないが一応先生に仲良くしてくれと言われているわけだし、俺自身も気になることだからどうにかしてやりたい。
でも、俺ができることなんてあるのか?

自問自答する。
転校生で何も知らない自分にはできることはない······いや、一つだけある。
無理矢理の形ではあったけど俺と氷さんを結ぶもの。

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