契約の森 精霊の瞳を持つ者
14
ある者はシルフの元へと向かった。
岩山を登りながら、シルフの向かい風も執念で乗り切ったものの、中腹辺りでウッドエルフの一斉の矢の攻撃を受けて、危うく死にかけた。
捕らえられたストレンジは、殺されるかもしれない時におかしなことをいった。
「私なら、その矢をもっと頑丈で鋭くできるわ。ドワーフを探さなきゃ」
そういうと持っていたナイフで縄を切り、何も考えずに岩山から飛び降りた。中腹とはいえ、雲と同じ高さから、ストレンジは無謀なことをやってのけた。
地面に落ちる直前にシルフが助けなければ、そのストレンジは命を失っていただろう。彼女は無事に地面に降り立つと、はるか上空に向かって叫んでいた。
「ありがとう!死ぬかと思ったわー!」
地上からそんな声が聞こえ、1番安堵していたのはウッドエルフ達だった。先ほどまで敵だったのに、彼らはストレンジが無事に安全な場所に辿りつけるだろうかと、いつしか心配するようになっていた。
ある者は、ノームの森へと行った。そこにはダークエルフと、小さな妖精達が幸せそうに暮らしていた。
後ろからエルフ達が現れると、ストレンジの歩く向きを変えさせて「お前が向かうならあっちだろう」そう言って西を指差す。そしてエルフ達はダークエルフの元へと向かった。
何やら殺気だった気配だったが、ストレンジは『あっち』が気になるので、言われたとおり向かうことにした。
ストレンジは各々、別々に行動し、結局辿りついた場所は同じだった。森の西に位置する、焼け付く火山の麓。地は熱を持ち、火山はいつ真っ赤な炎を上げるか分からなかった。
そんな場所にエルフがいるはずもなく、そこにいるのはサラマンダーだけだった。サラマンダーは機嫌が悪く、脅すつもりで彼らに炎を吐き出した。すると、何故か彼らは喜び、ここへ住むことを決めてしまった。
こんなところに住みつかれては困ると思ったサラマンダーは、真っ赤なマグマの川を作った。これでもう去るだろうと思ったら、マグマの向こうでカンカンと音がする。気がつけば、彼らはいつの間にか工房を作り、鉄を打っていた。
よくよくみれば、それはストレンジではなく、ドワーフだった。はじめはストレンジがやっていたものの、ものの数日で飽きてしまったようだ。鉄を打つ音に導かれるように、ドワーフはやってきて、ストレンジに変わって、物を作るようになった。サラマンダーはため息をつく。
気がつけば、ストレンジはサラマンダーに興味を持っていた。
「おーい!サラ、あんたの山に登らせてくれ!暇で死にそうだ。あんたのてっぺんからなら、面白いもんが見れるだろう」
そう言って、勝手に山を登りはじめた。熱くて降りるだろうと思っていたものの、彼らはドワーフにたのんで、防火服を着ていた。それでもきっと熱いには違いないだろうが。
サラマンダーは、頭の上で楽しそうに話す、遠慮のないおかしな種族をおおいに笑った。
「気に入った。好きなだけいればいい」
サラマンダーはそう言ったものの、ストレンジ達は不思議そうな顔をした。
「あんたが嫌がったって、ここに住んださ。こんな面白いところ、他にないからな!」
サラマンダーは呆れて、苦笑いをした。
ストレンジ達は、サラの山の麓で暮らすことを決め、ドワーフと共に物作りをしはじめた。ストレンジ達はあまり働かず、ほとんどがドワーフ達により作られた物だ。それは頑丈で、機能性も兼ね備えていた。後々、王家で使うものは全てドワーフが作ることになる。
ストレンジはといえば、時折ふらっといなくなる。そうかと思えば目をキラキラとさせて帰ってきては、時を刻む機械を作りはじめた。
誰にその作り方を教わったのかを聞いても、ストレンジ達はドワーフにさえ教えてはくれなかった。それにどこへ行っていたのかを聞いても、それも教えてはくれなかった。
闇の者が襲いに来た少し前から、ストレンジ達は姿を消していた。
サラマンダーでさえ、戦いに駆り出され、最後はウェンディーネのそばで暮らすと決まった時、ドワーフも物を作るのをやめて、どこかに消えた。
現在、サラマンダーの山は地面すら冷たく、争った形跡もなく、ドワーフやストレンジが暮らした痕跡の上に草が生い茂っている。
ストレンジは全滅したとされているが、ストレンジとウッドエルフのハーフの子供はまだ森で暮らしている。
彼がストレンジの最後の血を引く者かもしれない。彼は今でも王家の謎を知るために森を駆けている。森の研究者、または英雄。そう呼ばれて。
岩山を登りながら、シルフの向かい風も執念で乗り切ったものの、中腹辺りでウッドエルフの一斉の矢の攻撃を受けて、危うく死にかけた。
捕らえられたストレンジは、殺されるかもしれない時におかしなことをいった。
「私なら、その矢をもっと頑丈で鋭くできるわ。ドワーフを探さなきゃ」
そういうと持っていたナイフで縄を切り、何も考えずに岩山から飛び降りた。中腹とはいえ、雲と同じ高さから、ストレンジは無謀なことをやってのけた。
地面に落ちる直前にシルフが助けなければ、そのストレンジは命を失っていただろう。彼女は無事に地面に降り立つと、はるか上空に向かって叫んでいた。
「ありがとう!死ぬかと思ったわー!」
地上からそんな声が聞こえ、1番安堵していたのはウッドエルフ達だった。先ほどまで敵だったのに、彼らはストレンジが無事に安全な場所に辿りつけるだろうかと、いつしか心配するようになっていた。
ある者は、ノームの森へと行った。そこにはダークエルフと、小さな妖精達が幸せそうに暮らしていた。
後ろからエルフ達が現れると、ストレンジの歩く向きを変えさせて「お前が向かうならあっちだろう」そう言って西を指差す。そしてエルフ達はダークエルフの元へと向かった。
何やら殺気だった気配だったが、ストレンジは『あっち』が気になるので、言われたとおり向かうことにした。
ストレンジは各々、別々に行動し、結局辿りついた場所は同じだった。森の西に位置する、焼け付く火山の麓。地は熱を持ち、火山はいつ真っ赤な炎を上げるか分からなかった。
そんな場所にエルフがいるはずもなく、そこにいるのはサラマンダーだけだった。サラマンダーは機嫌が悪く、脅すつもりで彼らに炎を吐き出した。すると、何故か彼らは喜び、ここへ住むことを決めてしまった。
こんなところに住みつかれては困ると思ったサラマンダーは、真っ赤なマグマの川を作った。これでもう去るだろうと思ったら、マグマの向こうでカンカンと音がする。気がつけば、彼らはいつの間にか工房を作り、鉄を打っていた。
よくよくみれば、それはストレンジではなく、ドワーフだった。はじめはストレンジがやっていたものの、ものの数日で飽きてしまったようだ。鉄を打つ音に導かれるように、ドワーフはやってきて、ストレンジに変わって、物を作るようになった。サラマンダーはため息をつく。
気がつけば、ストレンジはサラマンダーに興味を持っていた。
「おーい!サラ、あんたの山に登らせてくれ!暇で死にそうだ。あんたのてっぺんからなら、面白いもんが見れるだろう」
そう言って、勝手に山を登りはじめた。熱くて降りるだろうと思っていたものの、彼らはドワーフにたのんで、防火服を着ていた。それでもきっと熱いには違いないだろうが。
サラマンダーは、頭の上で楽しそうに話す、遠慮のないおかしな種族をおおいに笑った。
「気に入った。好きなだけいればいい」
サラマンダーはそう言ったものの、ストレンジ達は不思議そうな顔をした。
「あんたが嫌がったって、ここに住んださ。こんな面白いところ、他にないからな!」
サラマンダーは呆れて、苦笑いをした。
ストレンジ達は、サラの山の麓で暮らすことを決め、ドワーフと共に物作りをしはじめた。ストレンジ達はあまり働かず、ほとんどがドワーフ達により作られた物だ。それは頑丈で、機能性も兼ね備えていた。後々、王家で使うものは全てドワーフが作ることになる。
ストレンジはといえば、時折ふらっといなくなる。そうかと思えば目をキラキラとさせて帰ってきては、時を刻む機械を作りはじめた。
誰にその作り方を教わったのかを聞いても、ストレンジ達はドワーフにさえ教えてはくれなかった。それにどこへ行っていたのかを聞いても、それも教えてはくれなかった。
闇の者が襲いに来た少し前から、ストレンジ達は姿を消していた。
サラマンダーでさえ、戦いに駆り出され、最後はウェンディーネのそばで暮らすと決まった時、ドワーフも物を作るのをやめて、どこかに消えた。
現在、サラマンダーの山は地面すら冷たく、争った形跡もなく、ドワーフやストレンジが暮らした痕跡の上に草が生い茂っている。
ストレンジは全滅したとされているが、ストレンジとウッドエルフのハーフの子供はまだ森で暮らしている。
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