契約の森 精霊の瞳を持つ者

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 ダークエルフと、エルフ達は、傲慢な群れのエルフ達に復讐することを計画しはじめた。ノームの森には食べることには困らないが、エルフから食べ物や、武器や、高値で売買される物を奪いはじめた。

 しだいに彼らは、盗賊と呼ばれた。悪事は時を重ねるごとにエスカレートしはじめ、村や街を焼き払うこともあった。

 ノームの森は、物や金貨で溢れたけれど、ノームは姿を現さなくなり、草花は枯れていった。

 ある時、ダークエルフが街で暴れようとすると、エルフの青年が立ちはだかった。彼は四大精霊の力を操り、その力を見せつけた。それでもダークエルフ達が襲いかかろうとすると、青年は精霊の力を使うのをやめて、彼らに言った。

「お前達の森を見ろ。ノームが悲しんでいる」

 ダークエルフ達はふと、自分達の森へ思いを馳せた。あの豊かだった森は、今や土はボロボロになり、草花は枯れ、木は倒れ腐りはじめていた。

 あんなに沢山いたノーム達は1人も現れない。もうだれも、ああじゃない、こうじゃないと、うるさく言わない。

 彼らは急に寂しくなった。少し前から、他の森で集めた草花を自分達の森に植えてみたけれど、何一つ育たなかった。彼らはその時になって、道を踏み外したことにやっと気がつき、ノームがいなくなった原因も、森をあんな風に変えてしまったのも、自分達だと知った。

 そして、自分達がどれだけ邪悪なのかにやっと気がついた。ダークエルフ達は、戦う気も失せ、こんなことをしても何の意味もないと考えていた。

 青年は、小さな袋を彼らに渡した。

「エントなら、力になってくれるだろう」

 そう言い残して、去っていった。青年が渡したものは、植物の種だった。

 ダークエルフ達は森じゅうを探し回り、エントの情報を集めた。けれど、彼らに協力するエルフがいるはずもなく、情報は集まらなかった。しかたなく、群れることを嫌うストレンジと呼ばれるエルフ達を頼ることにした。

 ストレンジ達もまた、エルフに追い出された種族だが、彼らはそんなことはお構いなしだった。

 そのうえ、ダークエルフを見ると、嬉々として迎え入れた。ダークエルフには、彼らががなぜこんなにも喜んでいるのか理解できなかったけれど、エントの情報を知っていた。

 あの四大精霊の力を持つ青年と会ってから、すでに数年が過ぎていた。彼はエルフの王となり、森の中心に城をかまえ、相談役としてエントを城に招いていた。

 ダークエルフはそれを知ると城へ向かった。他のエルフはノームの森へ帰し、1人だけで城へ向かう。城の近くには、少しずつ家らしきものがぽつぽつとできはじめていたけれど、多くのエルフはまだ移住をはじめていなかった。

 ダークエルフは今まで襲い続けた者達の王へ会いにいく。門番はあからさまに嫌な顔をし、おかしなことをすれば、命はないものと思え。と脅しながら、ダークエルフを城に招き入れた。

「ダークエルフが訪ねてきたら、通せと言われているからな」

 ぶつぶつと文句を言いながら、王の元へと行くと、その隣にはエントがいた。王やエントが何か言うまえから、ダークエルフは膝を床につけ、頭を下げた。

「俺たちが間違っていた。ノームの森を助けてくれ」

 ダークエルフは顔を上げると、王とエントを見つめた。

「今までのことを許してくれとは言わない。全ての罪はダークエルフである私の罪だ。この命と引き換えに、ノームと、ノームの森のエルフ達を助けて欲しい」

 ダークエルフは死を覚悟して、エルフの王の前に現れたのだ。王はダークエルフの言葉を聞き終わると、まっすぐに歩いてくる。そして力いっぱいに彼を殴りつけた。

「たとえお前の命を奪ったとしても、お前との約束を守る義理はない」

 王は非道にもそう言うと、ふんと鼻息を荒げる。

「今までの悪行はひどいものだった。ダークエルフも、エルフ達も。罪を償いたいのなら、自分で考えろ。エントなら貸してやる」

 そう言うと、王はその場から消えた。ダークエルフは殴られた頬を抑え、口からは血をながし、呆然としていた。

「まぁ、要するに、ノームの森は自分達でなんとかしろってことじゃの」

 エントはダークエルフの腕をつかむと立ち上がらせた。

「ノームは私の友人でもある。ちからを貸そう。もう誰かを襲ったりはせんのだろう?」

 ダークエルフは血を拭う。

「誓う。この命にかけて、あんなバカなことはもうしない。俺は、俺たちは、ノームの森を復活させて、あの土地を守っていく」

 エントは静かにそれに返した。

「うむ。新種を見つけたら教えてくれ」

 ダークエルフは一瞬戸惑ったものの、エントの言葉に頷いた。

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