契約の森 精霊の瞳を持つ者

thruu

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 そんなある日、エルフ達が森の奥のダークエルフの元に集まった。

 それは、邪悪な思想を持つとされるエルフの集団だった。彼らはエルフでありながら、その思想から、ダークエルフと同じだとされ、住処を追い出された。

 彼らが邪悪だと言われるのは、エルフ達と別の思想を持つからだった。ひと昔前、エルフ達は様々な思想を抱いていたにもかかわらず、その思想は端から消されていった。あらたな思想を抱く者は、異端とされ、邪悪とされた。

 追い出されたエルフ達は、寿命の長いエルフ達を尊敬していた。彼らには豊富な知識があり、何より寛大だった。その思想は多くのエルフから反感を買い、邪悪とされ、追い出された。

 家族と引き離され、もう2度と会うことはできないエルフ。友人に裏切られたエルフ。生まれたばかりの赤ん坊を持つ親や、怪我人、病人、時には自分の家族でさえも徹底的に追い出した。

 追い出されたエルフ達は復讐に燃えていた。あの傲慢なエルフ達を許すことはできなかった。彼らはダークエルフを探していた。追い出されたエルフ達は、怒りに震える手でダークエルフの手をとる。

 ダークエルフにしてみれば、群れのエルフ達から離れることができて、内心ほっとしていた。

 あらたなエルフ達がきて困惑したものの、彼らはダークエルフを同じ仲間として考えていると感じた。

 ダークエルフはエルフ達にひとつだけ尋ねた。ダークエルフなんて、恐ろしくないのかと。彼らは顔を見合わせると、正直に語った。はじめは恐ろしいと思った。話をしてみて、おかしな奴なら諦めようと思っていた、と。

 けれど、話をするまでもなく、ダークエルフを信頼した。それは、この森に足を踏み入れた時からだった。

「この森が豊かなのは、ノームがあんたを気に入っているからだ」

 見渡せば、ノームの森は沢山の果実や木の実、きのこや山菜であふれていた。そこはどの森よりもずっと豊かだった。

 ダークエルフは、自分がノームに生かされていたのだとやっと知った。

 そして、エルフ達は忘れかけていた精霊の存在に触れ、生き生きとしていた。ダークエルフはノームの森で、エルフ達と共に生きることを決めた。生まれてはじめてできた仲間に、ダークエルフは困惑しながらも、長として、役に立とうと奮闘する。

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