契約の森 精霊の瞳を持つ者

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7  ウッドエルフ

 エルフ達の中には、普通のエルフよりも長く生きるエルフがいた。

 彼らの姿は他のエルフと違いはない。違うことはひとつだけ。彼らはいつまでたっても年をとらなかった。

 昔から、稀にそういったエルフが存在したが、彼らの出生については本人達ですら分からなかった。

 彼らのことは、エルフの間では突然変異のような存在として扱われていた。そして次第に奇態な存在として見られるようになり、長く使える奴隷として、捕らえられるようになる。また、ウッドエルフの血や心臓などを、薬として高値で売買されることもあったという。

 生存の危機を感じたウッドエルフ達は住処を追われ、森へ逃げ込んだ。精霊に助けを求めるも、土の精霊ノームには力がなかった。炎の精霊サラマンダーは恐ろしかった。水の精霊ウェンディーネはエルフと強い絆があった。風の精霊シルフは気まぐれで、姿さえ現さなかった。

 ウッドエルフ達が途方にくれていると、黒い影が現れ、彼らを捕らえようと身構える。

 残り少ないウッドエルフ達は絶望した。自分達がなぜ他のエルフとこんなにも違うのか、彼らはそれを知ることすら許されない。

 それを頭上で見ていた者は、ため息をひとつはきだした。すると、ウッドエルフの後ろにあったそびえ立つ山の上から大岩が転がり、黒い影達を追い払った。

 見上げれば、岩の山の遥か高くでシルフが見下ろしていた。ウッドエルフは藁にもすがる思いで、登るのは無理だと思われていた岩肌を登り、シルフへと向かう。

 強風は追い風となり、ウッドエルフ達を支えていた。誰も落ちることもなくシルフの元へとたどり着き、助けを求めると、シルフはこともなげに言い放った。

「見なさい。ここへは誰も来れないわ」

 みれば、雲よりも高い岩肌に彼らはいた。

 ウッドエルフは森から離れて岩山で暮らすことを決めた。シルフはそれを受け入れ、ウッドエルフの長となる者に精霊の瞳を与えた。シルフを守る民として、彼らは長い年月をかけて自らを鍛えあげ、この森の中で戦闘に長けた種族となった。

 森に伝わる、精霊の瞳を片目に持つ者について、エルフはそれを呪いだといい。ウッドエルフは加護だと言うのには、先祖から代々繋がれてきた、シルフとの絆を大切にしているからだろう。

 ウッドエルフにとって、風は神聖なものである。

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