契約の森 精霊の瞳を持つ者

thruu

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「コダがそんなことするはずない。きっとなにか誤解が」

 タカオはそう言いかけた時、コズエは背負っていたバックから、何かを取り出す。

「これが証拠だ」

 コズエの手にあったものに、タカオは衝撃を隠せなかった。

「それは!あの時の……!」

 そう言ってうなだれるように地面を見つめた。コズエが持っていたものは、屋根の一部だった。トッシュに屋根の修理を頼まれたとき、コダが壊したあの屋根の一部。あれはコダによって森に投げられたことを、タカオは思い出していた。

「どうやら、この件に関わりがあるらしいな」

 ウェンディーネはコズエの傷が治ったのを確認すると、冷たくそう言い放って水の中に消えてしまった。

 タカオがコズエをみると、怒った顔でこちらを見つめ返していた。

「それを渡したのは、俺なんだ。でもまさか、誰かにぶつかるだなんて」

 言えば言うほど、言い訳にしかならなかった。実際にコズエは怪我をしてしまって、さっきウェンディーネが傷を治さなければ、どうなっていたか分からない。

「本当に申し訳ない……」

 自分が投げたわけではないけれど、タカオは責任を感じていた。そして小さな妖精に深々と頭を下げる。コズエは少し考えた様子で、思い出したように言う。

「たしかお前は、オーガにとどめを刺したやつ」

 タカオは勢いよく顔を上げた。オーガにとどめを刺したことは、ウェンディーネ以外誰も知らないことだった。

 コズエはふふんと得意げな顔をすると、タカオの周りをぐるぐる回りながら話した。

「コズエはこの森の記録をとっているんだ。知らなかったみたいだな」

 コズエはバックから小さなメモ帳を取り出すと、ぱらぱらとめくる。

「森中にいる僕たちが、お前のしたことを知っているし、酷いことをしたグレイスのことも、鳥の少年のグリフのことも知っているんだ」

 コズエの言うことを聞きながら、タカオは気になることを口にする。

「鳥の少年て?」

 するとコズエは急にタカオの頭に飛び乗る。そして髪の毛を引っ張りだした。それから怒ったように言うのだ。

「喋っている途中に邪魔したら、こんなことじゃすまないぞ!」

 コズエはとても怒って、まだタカオの髪の毛を引っ張っている。全然痛くはないけれど、何かリアクションをしないと終わりそうにない雰囲気だった。

「……いたたたたた!」

 タカオがそう痛がる振りをすると、コズエは髪の毛を引っ張るのをやめた。コズエは満足そうにうなずく。

「なんの話だっけ……あ!そうだ、だから、僕たちが知らないことはないって話だ。まぁ、行けないところは無理だけど。分かった?」

 タカオは声を出さずに、うなずいた。コズエはまだ頭の上だ。

「たとえお前がオーガを倒そうが、精霊を味方につけようが、関係ない。悪いと思っているなら、そうだな……お前にも協力してもらおう」

 コズエは、思いついたように、声をはずませてそう言った。

「協力?」

 思わずそう聞いてしまって、タカオは口を両手で抑えた。今は喋っていいのかよく分からなかった。

 コズエはタカオの頭の上に座りながら「そうだそうだ」と嬉しそうに言う。

「今、僕たちは森中から集まっているところだ」

 タカオが頭のほうを見上げる。コズエは体をのりだすと、見下ろして笑顔で言った。

「グレイスに復讐するために」

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