契約の森 精霊の瞳を持つ者

thruu

18

「ウェンディーネも、見送りにきてくれていたみたいだな」

 ジェフの寝ぐせを直しながら、ライルはそう言う。そして、グリフやコダに聞こえないように、そっと聞いた。

「そういえば、あのことはグリフ達に言ったのか?声が聞こえるって言ってただろう。みんなをシルフの風から守ってくれた時に」

 ジェフは周りを確認してから、こっそりと打ち明けた。

「ううん。声が聞こえたのは、あの時だけだったし。心配させたくないから誰にも言ってない」

「そうか」そう言って、ライルは心配そうにジェフを見る。ジェフはライルの表情に気が付くと、明るく言う。

「あれはきっと、たまたまだったんだよ。もし同じことがあったら、グリフ達にちゃんと言うから、安心して」

 ジェフは大きな荷物を背負って、グリフ達の元に走りだした。ジェフがグリフ達の元につくと、ちょうどコダが話をしていたところだった。

「そういえば、宿に泊まってたのってどんな奴なんだ。結局俺は会わないままだったけど、まだこの村にいるんだよな」

「ああ、それは」

 ジェフがそう言いかけた時に、トッシュとライルの大声でかき消されてしまった。

「気を付けていくんだぞーー!夜は冷えるからなー!」

「シルフのことを頼んだ!」

 シアンとシアの声も聞こえている。

「この村のことは任せてください!」

「私がちゃんとみんなを守るから!」

 その声にジェフは負けないくらいの大声を出して手を振る。

「いってきまーす!みんな元気でねー!」

 コダとグリフとイズナは軽く手を振って、どんどん道を進んでいった。



「ジェフ以外は、みんな相変わらず素気ないな」

 トッシュがそうこぼした時に、ユミルが村の入り口にやってきた。シアは驚いて、ユミルを見上げる。

「あれ、ユミルさんどこ行ってたの?いまちょうどみんな出発したところだよ」

 ユミルは去っていくグリフ達を見つめながら言った。

「ええ、そのようね。……実は、タカオさんを見送っていたの」

 レノ以外のみんなは驚いた様子で、ユミルをいっせいに見る。

「みんなには黙っておいてって、言われていたの。隠しててごめんなさい」

 ユミルではなくレノがそう全員に言いながら、シアの手を取る。

「シア。言えなくてごめんね」

 レノはシアが泣き出したり、怒ったりすると思っていたけれど、シアは冷静だった。

「うん、いいの。ママはちゃんと教えてくれてた」

 シアはレノの手をしっかりと握り返していた。

「わたし、お兄ちゃんとの約束を守る。決めたの」

 シアはそう言って、レノとライルを見た。

「私も、シアンと一緒に水の精霊様のところに行って、ちからの使い方を教わる」

 レノとライルも、覚悟を決めていた。レノはシアンの手も握る。

「ええ、分かった。困ったことがあったら、必ず話してね。みんな2人のちからになれる」

 シアとシアンはお互いに目を合わせて、それからレノとライルに笑顔でうなずいた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品