契約の森 精霊の瞳を持つ者
12
「イズナには頼めなくて、コダに届けさせるってなんだろうな。地図と一緒にイズナに渡せばよかったのに」
タカオは不思議そうに言う。
コダはさっき胸ポケットから色々出したもののなかから、白い封筒を手に取ると、タカオの顔の前に出して止まる。コダは急に、にっこりと笑う。
「捨てたりなんかしたら、呪うわよ」
裏声でアレルの真似をして、タカオにやっと封筒を渡した。笑顔の顔真似もやめると、今度は普通の声で続けた。
「って、伝えろって言われたんだ。もしかしたら、この届けたいものは、グリフ達が出発した後に手に入れたのかも」
コダはそう言ったあと、自分の考えに疑問を持った。
「でも、俺以外には行き来していないはず。どこで、誰から手に入れたんだ? サラとタカオの居場所を知っているとも言っていた。そんなことはありえないのに」
「とりあえず、中を見てみよう」
グリフはそう言って、コダがぐるぐると考え出すのを止めた。コダは渋い顔をして、考え事の続きをしながら、タカオの手に視線を落とす。
イズナも注目するなか、タカオは封筒を開けた。
グリフやコダの考えとは正反対に、タカオはこの封筒の中身は、遠くに行っても頑張れみたいなメッセージでも入っているのだろうくらいにしか思っていなかった。けれど、封筒を持ったかんじは、メッセージのような紙ではないようだった。
「別れの品とかなんじゃないかな」
タカオはのんきにそんなことを言いながら、封筒をのぞき込む。どうやら、別れの品でもないようだった。
「なんでこんなものを?」
タカオは封筒の中身を手の平に出した。手の平には、古めかしい鍵がひとつあるだけだった。それはシンプルな鍵の形をしている。輪があり、その下に鍵穴に差し込む部分があるけれど、それは歪んでいる。ざらざらとしていて、よく見ると、細い枝を巻き付けて作ったようだ。けれど木の枝で作ったにしては、やけに重たい。
「鍵だ。それも木でできてる。こんなの、こどもの遊び道具だよ。どうして、こんなものをくれたんだろう」
それは、誰にも分からなかった。こんな歪んだ木の鍵にあう鍵穴なんてあるとは思えない。鍵はだいぶ古ぼけ、傷だらけで、どこか不気味だ。
「とにかく古そうなものだってこと以外は、分からないな。なんかのいたずらか?」
コダはそう言って、首をかしげた。先ほどまでアレルについて必死に考えていたことが馬鹿らしくなったのか、コダは「とにかく飯食べにもどろう」そう言ってその場を離れようとする。
「え!?これどうするんだ?」
タカオはそう言ってコダに、謎の鍵を押し付けようとする。「そんな薄汚いよく分からないものを渡そうとすんな!」そう言ってタカオを避けた。
「そんな、でも」
タカオはグリフとイズナを見るけれど、二人とも、一歩下がって受け取るつもりがないのは明らかだった。
「仕方ないな」
コダはそういって馬小屋に消えると、自分の荷物の中から皮の紐を持ってくる。無言でタカオから鍵を受け取ると、鍵に紐を通した。そして、鍵を受け取ってもらえたと勘違いしてほっとしているタカオの首に、勢いよくかける。
「うわ!こんな変なもの無理!」
タカオは必死で外そうとすると、コダは、真剣な眼差しで言った。
「アレルが言ってただろう?」そう言ってコダは裏声で再び「捨てたりなんかしたら、呪うわよ」そう言った。タカオは心底ぞっとしていた。
「いやでも」
タカオはそれでも、鍵を外そうとすると、コダはそれを止める。
「アレルはサラの居場所も、お前の居場所も知っていると言っていた。恐らく、仲間がいるはずだ。お前がもし、その気味の悪いものを捨てたりしたら、アレルに報告するだろう。やめておけ」
コダは、分かりやすくタカオを心配する振りをした。
「もうじき帰るんだろう?元の居場所に戻るまで、その鍵は肌身離さず持っているんだ。それがいい」
そう言い終わる頃には、コダは今まで見せたこともない優しい笑顔でゆっくりとうなずく。タカオはアレルの呪いと、謎の仲間達を恐れ、嫌々ながら、鍵を手放すことを諦めた。コダの動きに合わせるように、ついにうなずいた。
タカオは不思議そうに言う。
コダはさっき胸ポケットから色々出したもののなかから、白い封筒を手に取ると、タカオの顔の前に出して止まる。コダは急に、にっこりと笑う。
「捨てたりなんかしたら、呪うわよ」
裏声でアレルの真似をして、タカオにやっと封筒を渡した。笑顔の顔真似もやめると、今度は普通の声で続けた。
「って、伝えろって言われたんだ。もしかしたら、この届けたいものは、グリフ達が出発した後に手に入れたのかも」
コダはそう言ったあと、自分の考えに疑問を持った。
「でも、俺以外には行き来していないはず。どこで、誰から手に入れたんだ? サラとタカオの居場所を知っているとも言っていた。そんなことはありえないのに」
「とりあえず、中を見てみよう」
グリフはそう言って、コダがぐるぐると考え出すのを止めた。コダは渋い顔をして、考え事の続きをしながら、タカオの手に視線を落とす。
イズナも注目するなか、タカオは封筒を開けた。
グリフやコダの考えとは正反対に、タカオはこの封筒の中身は、遠くに行っても頑張れみたいなメッセージでも入っているのだろうくらいにしか思っていなかった。けれど、封筒を持ったかんじは、メッセージのような紙ではないようだった。
「別れの品とかなんじゃないかな」
タカオはのんきにそんなことを言いながら、封筒をのぞき込む。どうやら、別れの品でもないようだった。
「なんでこんなものを?」
タカオは封筒の中身を手の平に出した。手の平には、古めかしい鍵がひとつあるだけだった。それはシンプルな鍵の形をしている。輪があり、その下に鍵穴に差し込む部分があるけれど、それは歪んでいる。ざらざらとしていて、よく見ると、細い枝を巻き付けて作ったようだ。けれど木の枝で作ったにしては、やけに重たい。
「鍵だ。それも木でできてる。こんなの、こどもの遊び道具だよ。どうして、こんなものをくれたんだろう」
それは、誰にも分からなかった。こんな歪んだ木の鍵にあう鍵穴なんてあるとは思えない。鍵はだいぶ古ぼけ、傷だらけで、どこか不気味だ。
「とにかく古そうなものだってこと以外は、分からないな。なんかのいたずらか?」
コダはそう言って、首をかしげた。先ほどまでアレルについて必死に考えていたことが馬鹿らしくなったのか、コダは「とにかく飯食べにもどろう」そう言ってその場を離れようとする。
「え!?これどうするんだ?」
タカオはそう言ってコダに、謎の鍵を押し付けようとする。「そんな薄汚いよく分からないものを渡そうとすんな!」そう言ってタカオを避けた。
「そんな、でも」
タカオはグリフとイズナを見るけれど、二人とも、一歩下がって受け取るつもりがないのは明らかだった。
「仕方ないな」
コダはそういって馬小屋に消えると、自分の荷物の中から皮の紐を持ってくる。無言でタカオから鍵を受け取ると、鍵に紐を通した。そして、鍵を受け取ってもらえたと勘違いしてほっとしているタカオの首に、勢いよくかける。
「うわ!こんな変なもの無理!」
タカオは必死で外そうとすると、コダは、真剣な眼差しで言った。
「アレルが言ってただろう?」そう言ってコダは裏声で再び「捨てたりなんかしたら、呪うわよ」そう言った。タカオは心底ぞっとしていた。
「いやでも」
タカオはそれでも、鍵を外そうとすると、コダはそれを止める。
「アレルはサラの居場所も、お前の居場所も知っていると言っていた。恐らく、仲間がいるはずだ。お前がもし、その気味の悪いものを捨てたりしたら、アレルに報告するだろう。やめておけ」
コダは、分かりやすくタカオを心配する振りをした。
「もうじき帰るんだろう?元の居場所に戻るまで、その鍵は肌身離さず持っているんだ。それがいい」
そう言い終わる頃には、コダは今まで見せたこともない優しい笑顔でゆっくりとうなずく。タカオはアレルの呪いと、謎の仲間達を恐れ、嫌々ながら、鍵を手放すことを諦めた。コダの動きに合わせるように、ついにうなずいた。
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