契約の森 精霊の瞳を持つ者
8.
タカオは村の中をあてもなく歩いていた。イズナに渡すはずだった荷物を失くしてしまったことが言いにくくて、なんて切り出そうか悩み続けている。
あたりはお祭りのようにランタンや、かがり火で明るい。村の中の水は、タカオが村を出た時より、少し引いていた。ウェンディーネの力は戻りつつあるはずだけれど、彼女の姿は、いまだに少女の姿のままだ。
家々は綺麗に修理されている。ライルやトッシュ、村の者達が直したのだろう。それにきっとコダやグリフ、ジェフとイズナもだ。
彼らは明日、森の先へ進むために旅立ってしまう。だからこそ、早く伝えなくてはと、空の箱を握りしめる。白狐の頼まれごとをできずに、ただただ申し訳ない気持ちが押し寄せていた。イズナが神かどうかも信じられないような話しだけれど、ほかに思いつく者もいない。
神だったとしたら、人間を恨んでいるに決まってる。それを知るのも怖いし、神の持ち物を失くしてしまうなんて。なんて恐ろしいことをしでかしたのだろう。
「もし神様だったら、怒って雷とか大雨とか、そういうこともあったりして」
タカオは、勢いよく頭を横に振る。
「それでもちゃんと伝えなきゃ」
「でも、なんて言えば」そう言って子供のようにその場にしゃがみこんだ。
タカオがしゃがんだ場所は、馬小屋の前だった。行く場所がなくて、ここで眠ったことを思い出す。なんだか居心地がよくて、考え事をするなら、この場所が落ち着くのだ。と言っても、正直に話すこと以外に、タカオの問題は解決しようがなかった。
次にイズナに会う時は、正直に話すしかない。だからこうやって逃げているという自覚もあった。そして、関係のないことばかり考えてしまう。
「そういえば、サラはどうなったんだろう」
誰もいないことをいいことに、考え事を口にだす。そうすれば、今やらなくてはいけないことから、少し離れることができるような気がしていた。
「もう卵から孵ってるだろうな。だとしたら、ウェンディーネみたいに、会話ができるかもしれない」
ウェンディーネは水で繋がっている。こうやって呟いていることはウェンディーネにも聞こえるし、言葉にしていない考えだって、知られている。
「大地の契約で精霊と繋がることができるなら、サラとも契約をしたんだから、きっと話すこともできる」
タカオはそう思いつくと、近くにあったかがり火に目をやる。何事かと不審がる馬達は馬小屋からタカオを見つめていた。
ウェンディーネが水で繋がっているのなら、サラは火で繋がるに決まっている。タカオはそう思うと、立ち上がり、水辺にあるかがり火に向かう。かがり火は大きな炎で辺りを明るくしている。
「サラ」
そう呼んでみるけれど、こんな小さな声で聞こえるだろうかと思うと、一旦周りを確認し、馬しかいないとわかると、さっきよりも大きな声でかがり火に話すことにした。
「サラ、聞こえるか?」
そう聞いても、何の返事もなかった。タカオは再びあたりを見渡す。誰かが来る気配はなかった。かがり火に近づきすぎて、少し熱すぎるために一歩下がると「よし」と覚悟を決めた。
「さすがにもう卵から孵ってると思うけど、サラ、もし声が聞こえているなら、このまま聞いてほしい」
サラの姿が現れるかと期待したけれど、何も起きないままだった。
「明日、グリフ達はまた森の中を進んでいく。できたら、力になってほしい。彼らだけで森を進んでいくのは心配なんだ。それに、卵のままで離れたことが心配だ。あのあと、どうなった?ウェンディーネに聞いても知らない様子だったし」
言葉にすればするほど、あれもこれも心配になってきてしまう。タカオはまるで本当に目の前にあのサラマンダーがいるように身振り手振りで話しをする。
「もしかして、まだ卵のままだとかじゃないよな?何か必要なものがあるなら」
そう言いかけて、届けにいけないことに気が付き言葉を詰まらせた。
あたりはお祭りのようにランタンや、かがり火で明るい。村の中の水は、タカオが村を出た時より、少し引いていた。ウェンディーネの力は戻りつつあるはずだけれど、彼女の姿は、いまだに少女の姿のままだ。
家々は綺麗に修理されている。ライルやトッシュ、村の者達が直したのだろう。それにきっとコダやグリフ、ジェフとイズナもだ。
彼らは明日、森の先へ進むために旅立ってしまう。だからこそ、早く伝えなくてはと、空の箱を握りしめる。白狐の頼まれごとをできずに、ただただ申し訳ない気持ちが押し寄せていた。イズナが神かどうかも信じられないような話しだけれど、ほかに思いつく者もいない。
神だったとしたら、人間を恨んでいるに決まってる。それを知るのも怖いし、神の持ち物を失くしてしまうなんて。なんて恐ろしいことをしでかしたのだろう。
「もし神様だったら、怒って雷とか大雨とか、そういうこともあったりして」
タカオは、勢いよく頭を横に振る。
「それでもちゃんと伝えなきゃ」
「でも、なんて言えば」そう言って子供のようにその場にしゃがみこんだ。
タカオがしゃがんだ場所は、馬小屋の前だった。行く場所がなくて、ここで眠ったことを思い出す。なんだか居心地がよくて、考え事をするなら、この場所が落ち着くのだ。と言っても、正直に話すこと以外に、タカオの問題は解決しようがなかった。
次にイズナに会う時は、正直に話すしかない。だからこうやって逃げているという自覚もあった。そして、関係のないことばかり考えてしまう。
「そういえば、サラはどうなったんだろう」
誰もいないことをいいことに、考え事を口にだす。そうすれば、今やらなくてはいけないことから、少し離れることができるような気がしていた。
「もう卵から孵ってるだろうな。だとしたら、ウェンディーネみたいに、会話ができるかもしれない」
ウェンディーネは水で繋がっている。こうやって呟いていることはウェンディーネにも聞こえるし、言葉にしていない考えだって、知られている。
「大地の契約で精霊と繋がることができるなら、サラとも契約をしたんだから、きっと話すこともできる」
タカオはそう思いつくと、近くにあったかがり火に目をやる。何事かと不審がる馬達は馬小屋からタカオを見つめていた。
ウェンディーネが水で繋がっているのなら、サラは火で繋がるに決まっている。タカオはそう思うと、立ち上がり、水辺にあるかがり火に向かう。かがり火は大きな炎で辺りを明るくしている。
「サラ」
そう呼んでみるけれど、こんな小さな声で聞こえるだろうかと思うと、一旦周りを確認し、馬しかいないとわかると、さっきよりも大きな声でかがり火に話すことにした。
「サラ、聞こえるか?」
そう聞いても、何の返事もなかった。タカオは再びあたりを見渡す。誰かが来る気配はなかった。かがり火に近づきすぎて、少し熱すぎるために一歩下がると「よし」と覚悟を決めた。
「さすがにもう卵から孵ってると思うけど、サラ、もし声が聞こえているなら、このまま聞いてほしい」
サラの姿が現れるかと期待したけれど、何も起きないままだった。
「明日、グリフ達はまた森の中を進んでいく。できたら、力になってほしい。彼らだけで森を進んでいくのは心配なんだ。それに、卵のままで離れたことが心配だ。あのあと、どうなった?ウェンディーネに聞いても知らない様子だったし」
言葉にすればするほど、あれもこれも心配になってきてしまう。タカオはまるで本当に目の前にあのサラマンダーがいるように身振り手振りで話しをする。
「もしかして、まだ卵のままだとかじゃないよな?何か必要なものがあるなら」
そう言いかけて、届けにいけないことに気が付き言葉を詰まらせた。
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