契約の森 精霊の瞳を持つ者

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7.

 夕陽が遠くの森に落ちて、すっかりと夜空に変わる頃、グリフ達はユミルの家に集まっていた。誰もがそわそわとして落ち着かなかった。

 ライルは何度も椅子に座りなおし、咳払いをしては窓を覗き込む。レノは作ってきた料理の仕上げで忙しそうだけれど、やはり窓や玄関を気にしている。ジェフとシアはもう玄関の外で、今か今かと待っている。

 コダは庭に用意されたテーブルのあたりをうろうろとしながら、もう並んでいる料理にこっそりと手をのばす。けれど、ユミルの鋭い監視により盗み食いはうまくはいかないようだった。

 グリフはボートで寝ているところを無理矢理ライルに連れてこられ、コダに近い席に座らされていた。グリフは相変わらず不機嫌そうにしているけど、実際どうなのかは、誰にも分からない。

 イズナはその横で、ユミルの入れた温かいお茶を飲む。まだ運ばれていない料理が気になるようで、キッチンの様子をそっとうかがっている。

 村の遠くで微かな風が吹くと、村中はざわついた。村中でランプの灯りが輝いて、風で波打つ水面に反射する。その中を、タカオとシアンがトッシュに連れられて村に戻ってきた。

「帰ってきた!」

 ジェフは気配に気がつくと大声でそう言って、走って迎えにいく。シアもつられて走り出す。レノやライル、ユミルは、玄関の外で待つことにした。

 はじめにトッシュの姿が見え、シアンも見えると、レノとライルは思わず手を振る。手を振った後に、はっと我に返る。シアンが手を振りかえせば、大きな風が起きて大変なことになってしまう。隣にいたトッシュが気が付いた時には、シアンが両親に手を振り返した後だった。

「大丈夫よ」

 ユミルは落ち着いて、レノとライルにそう言う。ユミルの言ったとおり、シアンが手を振っても風は起きなかった。

「心臓が止まるかと思った」

 やっと息をして、2人してそう呟くとシアンにかけよる。

「ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったんだ」

 シアンは困ったように見上げる。

「コントロールできるようになったのね」

 レノはシアンの頭をそっとなでて微笑む。シアンは誇らしそうに頷く。「水の精霊様のおかげなんだ」そう言って湖のほうを見つめる。

 トッシュはライルの肩を叩いてユミルの家に向かう。何も言わないけれど、ほっとしたのか、気が抜けたような表情だった。恐らく心底驚いたのは、トッシュだっただろう。

 ライルは申し訳なさそうにトッシュを見送ると、シアンの後ろを珍しく静かに歩いているジェフとシアに気が付く。けれど、タカオの姿はなかった。

「あれ、タカオさんは?」

 そう聞いても、ジェフとシアは不満そうな顔をしただけだった。

「村の中を見ておきたいってどこかに行ったぞ。今夜が最後だからだろうな」

 ジェフとシアにも説明しただろう内容を、少し離れたところから、トッシュが大声で話す。それはコダやグリフにも聞こえていた。

「先に食べててくれって言ってたぞー!」

 トッシュはお腹が減っているのか、そう言う時の声は明るい。さっさと食べ始めたい様子だ。

「帰る決心がついたのかな。食べながら待とうか」

 ライルの言葉にレノも頷き、騒がしくなった庭に向かう。タカオの帰りを待ちわびていたジェフとシアは、納得できないようで、ユミルの家の庭に到着しても機嫌が悪かった。

「そこ僕の席!トッシュさんの席なんてないよ。そもそも今日呼んでないじゃん」

そう言ってトッシュの席を奪い、困惑するトッシュが座ろうとした席はシアの席だったらしく、さらに怒られている。ユミルがなんとか2人をなだめ、小さな椅子を出してくると、コダの横に座ることになった。コダは迷惑そうな顔をしている。

「窮屈そうね」

レノは面白がってそう言う。コダもトッシュに何か言いたそうだったけれど、ユミルに睨まれてやめたようだ。

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