契約の森 精霊の瞳を持つ者
41.
ウェンディーネのちからを奪っている。
『ちからを使いすぎただけだ』
ウェンディーネはタカオにそう言っていた。
ーーどうして、本当のことを言わなかったんだ。
タカオはウェンディーネを見上げてそう思いながら、それよりもやるべきことがあると知っていた。ウェンディーネの向こうからは黒い風が押し寄せてくる。時間はもうない。
「どうしたら返せるんだ?ウェンディーネ。君のちからを、どうやって」
ウェンディーネは驚いたように戸惑いの表情をみせた。けれどそれは一瞬で決意を固めた表情に変わった。
「まだ早いと思ったけど……仕方がない」
ウェンディーネはそう言うと、その姿は水となり、タカオにその水が一気に落ちてきた。
「何がどうなってんだ!」
そう怒鳴ったのはコダだった。タカオもウェンディーネがなにを言っていたのかわからず、困惑の表情をコダに向ける。
「さあ、よく分からな……」
タカオの動きは言葉の途中で、突然止まってしまった。
「おい、どうした……」
コダとグリフの心配する声は、タカオには聞こえていなかった。ウェンディーネと繋がる黄金の瞳が熱を持ち、このままでは自分の瞳が熱で溶け出してしまうかと心配するほど熱く、そして激痛が走っていた。それなのに、声も上げられず、目をかばいたいのに、手の指1本ですら動かなかった。そのくせ、なぜか体は勝手に動いていた。
まるで、サラと大地の契約を交わした時のようだった。あの時、サラに言った言葉。あれはやはり、タカオ自身が言った言葉ではないと、今更気が付いた。
体はまるで、何百回と繰り返した当たり前の仕草のように、滑らかに動く。体のどこに力をいれ、どこを動かせばいいのか、なにもかもわかったように動く。そして地下にある、水路の水の匂いや、感触、重さはすでにタカオの手の中にある。
ーーウェンディーネに操られているんだ。
そう気がついても、恐ろしいとは少しも思わないことに不思議に思ったけれど、それは彼女がなにを伝えたいのか分かるからだった。ウェンディーネは、ちからの使い方をタカオの体に覚えさせようとしているのだ。
グリフとコダは立ち上がるタカオを止めようとした。けれど、タカオは立ち上がり真っ黒な風を見上げているばかりだった。シルフの黒い風は、唸りをあげている。その風の中には、本当のシルフの意思が垣間見えていた。なんとしても、この風を森へ向けないように必死に抵抗していた。
けれどそれは叶わず、風は大きな塊のようになってタカオ達に向かっている。
「タカオ!伏せろ!」
もう何度めかも分からない、コダの怒鳴り声が響くなか、風の音と、何かが衝突する音が重なり、次の瞬間には、静寂があたりを包んでいた。
『ちからを使いすぎただけだ』
ウェンディーネはタカオにそう言っていた。
ーーどうして、本当のことを言わなかったんだ。
タカオはウェンディーネを見上げてそう思いながら、それよりもやるべきことがあると知っていた。ウェンディーネの向こうからは黒い風が押し寄せてくる。時間はもうない。
「どうしたら返せるんだ?ウェンディーネ。君のちからを、どうやって」
ウェンディーネは驚いたように戸惑いの表情をみせた。けれどそれは一瞬で決意を固めた表情に変わった。
「まだ早いと思ったけど……仕方がない」
ウェンディーネはそう言うと、その姿は水となり、タカオにその水が一気に落ちてきた。
「何がどうなってんだ!」
そう怒鳴ったのはコダだった。タカオもウェンディーネがなにを言っていたのかわからず、困惑の表情をコダに向ける。
「さあ、よく分からな……」
タカオの動きは言葉の途中で、突然止まってしまった。
「おい、どうした……」
コダとグリフの心配する声は、タカオには聞こえていなかった。ウェンディーネと繋がる黄金の瞳が熱を持ち、このままでは自分の瞳が熱で溶け出してしまうかと心配するほど熱く、そして激痛が走っていた。それなのに、声も上げられず、目をかばいたいのに、手の指1本ですら動かなかった。そのくせ、なぜか体は勝手に動いていた。
まるで、サラと大地の契約を交わした時のようだった。あの時、サラに言った言葉。あれはやはり、タカオ自身が言った言葉ではないと、今更気が付いた。
体はまるで、何百回と繰り返した当たり前の仕草のように、滑らかに動く。体のどこに力をいれ、どこを動かせばいいのか、なにもかもわかったように動く。そして地下にある、水路の水の匂いや、感触、重さはすでにタカオの手の中にある。
ーーウェンディーネに操られているんだ。
そう気がついても、恐ろしいとは少しも思わないことに不思議に思ったけれど、それは彼女がなにを伝えたいのか分かるからだった。ウェンディーネは、ちからの使い方をタカオの体に覚えさせようとしているのだ。
グリフとコダは立ち上がるタカオを止めようとした。けれど、タカオは立ち上がり真っ黒な風を見上げているばかりだった。シルフの黒い風は、唸りをあげている。その風の中には、本当のシルフの意思が垣間見えていた。なんとしても、この風を森へ向けないように必死に抵抗していた。
けれどそれは叶わず、風は大きな塊のようになってタカオ達に向かっている。
「タカオ!伏せろ!」
もう何度めかも分からない、コダの怒鳴り声が響くなか、風の音と、何かが衝突する音が重なり、次の瞬間には、静寂があたりを包んでいた。
コメント