契約の森 精霊の瞳を持つ者
39.
シルフは剣をゆっくりと見つめると手を伸ばし、すると剣は今まで浮いていたことが嘘だったように、地面へと向かった。彼女は驚きもせずに瞬時にそれを掴むと、その剣をタカオに向けた。
ウェンディーネは立ち上がる気力も防ぐこともできず、姿を保つだけで精一杯だった。向けられた剣は、空間を切り裂く音を響かせて、タカオの首をかすめた。首の皮膚は微かにきれ、血が首を伝う。
「こんなことをしても変わらない。同じ過ちを繰り返したいの?」
シルフはそう言って、ウェンディーネへと視線を落とす。ウェンディーネは苦しそうにシルフを見上げる。
「シルフ、そんなことを言っている場合じゃない。ノームが今どういう状態なのか。あなただって分かっているでしょう。このままじゃ、私たちは闇に喰われるを待つだけになる」
タカオはウェンディーネの言葉に驚いていた。
ーー喰われる。精霊が……?
「ノームは甘いのよ。こうなったのは自業自得だわ。あなたと同じようにね」
そう言うとシルフはウェンディーネの頬に手を当てる。
「いっそのこと、本当のことを教えてやったら?王家のこと。その血は、そのうち制御できなくなる。すでにあなたの力を奪ってる」
最後の言葉は悲しそうに響いた。
「やめて」
ウェンディーネのほうは、その声に怒りが満ちていた。
タカオはシルフの言葉の意味も分からず、うろたえているだけだった。
「ウェンディーネのちからを奪ってるって、一体……」
タカオの戸惑った姿をちらりと見ると、シルフは微かに笑う。それは、どこか嘲笑うかのような表情だった。
「ウェンディーネ……時間がないのは私も同じ。最後にあなたに会おうと決めていたの。それが叶ってよかった」
その言葉のあと、シルフは顔色を曇らせた。
「シルフ?」
ウェンディーネはシルフに近づこうと手を伸ばす。けれどタカオに掴まれ、止められた。シルフの様子は明らかにおかしかったからだ。
「ウッドエルフ達に伝えて。新しい風を与えたと。これが最後よ。私が正気でいられる最後にできることだわ」
彼女の足元からは風が起こり、それは小さな竜巻になった。墨でもこぼしたかのような黒い風が、彼女を覆う。
「まさか、大地の契約が………シルフ!タカオと大地の契約を結んで!」
ウェンディーネは黒い風となったシルフに叫び、手を伸ばす。けれどシルフはすでに上空へと向かっていた。
「断るわ。できることなら、その男をあなたから引き離したかったけれどね。それより早く逃げなさい。遠ざかるまで抑えられるか分からないから」
風はまるで悲鳴のように甲高い音を響かせていた。シルフの恐怖が風となってぶつかってくるようだった。
ウェンディーネは立ち上がる気力も防ぐこともできず、姿を保つだけで精一杯だった。向けられた剣は、空間を切り裂く音を響かせて、タカオの首をかすめた。首の皮膚は微かにきれ、血が首を伝う。
「こんなことをしても変わらない。同じ過ちを繰り返したいの?」
シルフはそう言って、ウェンディーネへと視線を落とす。ウェンディーネは苦しそうにシルフを見上げる。
「シルフ、そんなことを言っている場合じゃない。ノームが今どういう状態なのか。あなただって分かっているでしょう。このままじゃ、私たちは闇に喰われるを待つだけになる」
タカオはウェンディーネの言葉に驚いていた。
ーー喰われる。精霊が……?
「ノームは甘いのよ。こうなったのは自業自得だわ。あなたと同じようにね」
そう言うとシルフはウェンディーネの頬に手を当てる。
「いっそのこと、本当のことを教えてやったら?王家のこと。その血は、そのうち制御できなくなる。すでにあなたの力を奪ってる」
最後の言葉は悲しそうに響いた。
「やめて」
ウェンディーネのほうは、その声に怒りが満ちていた。
タカオはシルフの言葉の意味も分からず、うろたえているだけだった。
「ウェンディーネのちからを奪ってるって、一体……」
タカオの戸惑った姿をちらりと見ると、シルフは微かに笑う。それは、どこか嘲笑うかのような表情だった。
「ウェンディーネ……時間がないのは私も同じ。最後にあなたに会おうと決めていたの。それが叶ってよかった」
その言葉のあと、シルフは顔色を曇らせた。
「シルフ?」
ウェンディーネはシルフに近づこうと手を伸ばす。けれどタカオに掴まれ、止められた。シルフの様子は明らかにおかしかったからだ。
「ウッドエルフ達に伝えて。新しい風を与えたと。これが最後よ。私が正気でいられる最後にできることだわ」
彼女の足元からは風が起こり、それは小さな竜巻になった。墨でもこぼしたかのような黒い風が、彼女を覆う。
「まさか、大地の契約が………シルフ!タカオと大地の契約を結んで!」
ウェンディーネは黒い風となったシルフに叫び、手を伸ばす。けれどシルフはすでに上空へと向かっていた。
「断るわ。できることなら、その男をあなたから引き離したかったけれどね。それより早く逃げなさい。遠ざかるまで抑えられるか分からないから」
風はまるで悲鳴のように甲高い音を響かせていた。シルフの恐怖が風となってぶつかってくるようだった。
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