契約の森 精霊の瞳を持つ者
31.
ルースはシアの横顔を見ると、少し考え込んでから自分の首にかけていた首飾りをシアの前に出した。古めかしいチェーンの先には、緑色の石がある。それは輝きもせず、形だって不恰好なただの石だった。
「やるよ」
ルースはシアを見もせずにそう言う。シアはそれを断ることもできず、困ったように受け取る。
「それ、父ちゃんからもらったんだ」
ルースの横顔は何か思い出しているように、どこか遠い場所を見つめている。
「王都から逃げるとき、言われたんだ。これはウッドエルフのお守りだって。でも今はもう違う。俺達は、精霊に守られて今まで生きてきた。これからは俺達が守るんだ。これは、ウッドエルフの使命の証だ」
ルースの瞳は力強く前を向き続けている。ふいにシアに向くと、いつものルースに戻っていた。
「精霊様はきっと、風邪をこじらせたあとみたいにへとへとなんだよ。きっとそうだ。そんな時にすぐに走り出せなんて、シアなら言えないだろ」
シアは少し考えてから、鼻声のままでルースの瞳を見て言った。
「あたしそんなひどいこと、絶対言わない」
シアはルースからもらった石を首からかけると、大事そうに服の中にしまった。ルースにもらった石を服の上から握りしめながら、シアは心配そうにタカオを見守る。
「精霊様の力がなくて、お兄ちゃんはどうするつもりなんだろう。このままじゃ……」
シアがそう言うと、ルースは何かに気が付いたように息を飲んだ。
「もしかして、あれって、王家の剣じゃないか?あれを取りたいんだよ!」
その言葉にシアも目を凝らすと、たしかに月の光を受けて微かに輝く銀の剣がみえた。タカオは少しづつそこに近づいていた。
「本当。屋根裏にあった剣……。でもパパは、あれは王子でないと意味がないって言ってたのに」
「俺も父ちゃんから聞いたことあるよ。ドワーフが最後に作ったのがあの剣で、それ以来、ドワーフは姿を消したって」
レッドキャップの攻撃の衝撃音が響くなか、シアとルースはお互いに顔を見合わせて、同じタイミングで疑問を投げかけていた。
「王子でないと意味がないってどういう意味だよ?」
「あの剣のせいでドワーフがいなくなったっていうの?」
お互いがそれに答える前に、シアとルースは口を閉じた。それどころではなくなってしまっていた。
「やるよ」
ルースはシアを見もせずにそう言う。シアはそれを断ることもできず、困ったように受け取る。
「それ、父ちゃんからもらったんだ」
ルースの横顔は何か思い出しているように、どこか遠い場所を見つめている。
「王都から逃げるとき、言われたんだ。これはウッドエルフのお守りだって。でも今はもう違う。俺達は、精霊に守られて今まで生きてきた。これからは俺達が守るんだ。これは、ウッドエルフの使命の証だ」
ルースの瞳は力強く前を向き続けている。ふいにシアに向くと、いつものルースに戻っていた。
「精霊様はきっと、風邪をこじらせたあとみたいにへとへとなんだよ。きっとそうだ。そんな時にすぐに走り出せなんて、シアなら言えないだろ」
シアは少し考えてから、鼻声のままでルースの瞳を見て言った。
「あたしそんなひどいこと、絶対言わない」
シアはルースからもらった石を首からかけると、大事そうに服の中にしまった。ルースにもらった石を服の上から握りしめながら、シアは心配そうにタカオを見守る。
「精霊様の力がなくて、お兄ちゃんはどうするつもりなんだろう。このままじゃ……」
シアがそう言うと、ルースは何かに気が付いたように息を飲んだ。
「もしかして、あれって、王家の剣じゃないか?あれを取りたいんだよ!」
その言葉にシアも目を凝らすと、たしかに月の光を受けて微かに輝く銀の剣がみえた。タカオは少しづつそこに近づいていた。
「本当。屋根裏にあった剣……。でもパパは、あれは王子でないと意味がないって言ってたのに」
「俺も父ちゃんから聞いたことあるよ。ドワーフが最後に作ったのがあの剣で、それ以来、ドワーフは姿を消したって」
レッドキャップの攻撃の衝撃音が響くなか、シアとルースはお互いに顔を見合わせて、同じタイミングで疑問を投げかけていた。
「王子でないと意味がないってどういう意味だよ?」
「あの剣のせいでドワーフがいなくなったっていうの?」
お互いがそれに答える前に、シアとルースは口を閉じた。それどころではなくなってしまっていた。
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