契約の森 精霊の瞳を持つ者

thruu

24.

 2人の同じ動きにタカオは息をつくようにふっと笑うと、アルを呼ぶ。呼ぶと言っても、コダのように口笛を吹くのではなく、片手を軽く上げただけだった。


 アルはそれに気がつくと、壁のまわりで起こしていた風の中から飛び出してタカオに向かう。コダは驚きの表情でそれを見ていた。


「コダとグリフは仲良しなんだな」


 タカオがそう言った直後、アルはタカオの出した腕にとまる。


「「 仲良しなんかじゃねぇ! 」」


 反射的に2人は大声を出した。それにアルは動じることもなかったけれど、タカオはビクリとし、それから思い出したようにアルをコダに差し出した。


「悪い、コダ。シアの弟を探してくれるようにアルに頼めるかな」


 急に差し出されたアルに、コダは戸惑いながら頷いた。


「ああ、シアンならアルも知り合いだからな」


 そう言って、アルを自分の腕にとまらせる。


「キャシーといい、アルといい、どうなってやがる」


 コダはぶつぶつとそんなことを呟く。
 タカオは自分でアルに探してもらうように言おうと思ったものの、自分で言ってそれが実行されるのか謎だった。それに反して、考えよりも行動が先に出た。思わずアルを呼んでしまい、実際にタカオの元に来てしまった。1番驚いていたのはコダよりもタカオのほうだった。


 コダはアルを空へと飛ばしたあと、小さく呟いていた。


「そうか、シアンだけいないってことか……」


 コダのその言葉の直後、タカオが這い出た階段のほうから沢山の足音が聞こえた。見れば、ルースとシアがひょっこり顔をだし、辺りを警戒している。


「シア、ルース!何やってんだー!早く帰ろう!」


 タカオはそう大声を出し、コダに振り返る。


「シアンだけ、地下の水路を進んで逃げたらしいんだ。シアを助けたかったんだな」


 タカオは再び、子供達を見ると、突然ルースとシアに体当たりされた。


「うお!どうした?もう帰れるから嬉しいのかー?」


 タカオも嬉しそうに満面の笑顔で2人の頭を撫でる。けれど、2人の顔は笑っていないどころか、泣き出しそうだった。


「早くっ……逃げないと!今のうちに!」


 そう言ってシアとルースは、正面ではなく正反対の場所を指す。まるで、正面からは出られないと言わんばかりに。おそらく、地下にいるほうが音を拾いやすかったのだろう。タカオも今さらになって、異様な足音を聞いていた。


 シアとルースに引っ張られ、連れ去られていくタカオの後にコダとグリフも続く。


「どうした?」


 コダがタカオの後ろから声をかける。ルースは声を押しころす。


「もう帰ってくる。あいつの足音が聞こえるんだ」


 コダとグリフはお互いに見あって首を傾げていた。地下に続く階段には、子供達が列になってみんな静かにしていた。シアの魔法の効果はまだ続いているようだ。



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