契約の森 精霊の瞳を持つ者
17.
ルース達はひどくやつれていた。小さな体で、みるからに弱々しい彼らは、この数日、地下に閉じ込められてろくに食事もしていなかったとしか思えなかった。
「シア!この子達って、もしかして、10日前にさらわれた……」
シアとは反対に、タカオにはまるで希望の光が見えたような気持ちだった。子供達が全員無事だなんて奇跡のようだった。
タカオはシアの顔を覗き込むと、言葉を失った。シアの顔は強張り、ルースを見たまま微動だにしない。
ルースはタカオに気を使って静かに答えた。
「弱ってはいるけど、みんな無事だよ」
タカオはルースのその言葉を聞いて、安堵から力が抜けたように頷く。
「でも」
ルースはそこで言葉を切ると息を吸う。そして吐き出すようにいった。
「シアンだけ……ここにいないんだ」
シアが何かを言う前に、今度はタカオが彼女を押しのけて、ルースの肩を掴む。
「シアンだけいないって……!どういうことだ」
できるだけ、声を荒げないように、冷静に言ったつもりだったけれど、無意識に声に力が入る。ルースは下唇を噛んで、タカオから目を逸らした。
「レッドキャップがまた村を襲う計画を知って、シアンはここを抜け出した。村に知らせに行ったんだ。俺たちは誰もついていかなかった……」
ルースの声は暗く沈んでいく。
「逃げ出すのなんか無理だって言って止めたけど、あいつは聞かなかった。水路を行けば川に出るって、あの冷たい水路に消えていったんだ」
シアンは、タカオでさえたった数分で命の危険を感じた、あの水の中を進んで、村に危険を知らせに行ったのだ。けれど、村にやって来たのは、シアンではなくレッドキャップだった。
ーーということは、水路の途中で力尽きたか、もしくは地上に出てからレッドキャップに見つかり……。
タカオがそこまで考えた時、ルースは堪えていた涙がボロボロと頬を伝っていた。
「俺も一緒に行ってれば……。そうじゃなきゃ、力づくでも止めるべきだった……!レッドキャップが戻ってきて、シア達を連れてきたとき、シアンは間に合わなかったんだと分かったんだ!あいつは……もう」
タカオはとっさにルースを抱き寄せた。まだ何か言っている途中だった言葉は、誰の耳にも聞こえなかった。
ーーもし、シアンが助からなければ、ルースはその責任はすべて、自分あると責めるだろう。
タカオには、ルースがライルとシアに重なった。レノの怪我を、シアとシアンがさらわれたことを、自分のせいだと責めていた。
シアはシアンがさらわれたのは自分のせいだと思っている。そして、自分が犠牲になればよかったとさえ思っていたのだ。タカオはもうそんなことを止めたかった。ルースは一瞬ひるんだものの、タカオにしがみつくと大声で泣いた。
ルースの頭を撫でながら、タカオは力強く言う。
「もう何も言わなくていい。ルース、みんな、君たちが無事で良かった。シアンだって、それを1番に望んでいるはずだ」
振り返ると、青ざめた顔のシアの手をとる。
「シアンはきっと無事だ。君を残して死んだりしない」
シアは微かに頷いて小さく呟いた。
「お兄ちゃんがそう言うなら、なんでかそう思えるよ」
シアはぎこちない笑顔で涙を堪えた。
「シア!この子達って、もしかして、10日前にさらわれた……」
シアとは反対に、タカオにはまるで希望の光が見えたような気持ちだった。子供達が全員無事だなんて奇跡のようだった。
タカオはシアの顔を覗き込むと、言葉を失った。シアの顔は強張り、ルースを見たまま微動だにしない。
ルースはタカオに気を使って静かに答えた。
「弱ってはいるけど、みんな無事だよ」
タカオはルースのその言葉を聞いて、安堵から力が抜けたように頷く。
「でも」
ルースはそこで言葉を切ると息を吸う。そして吐き出すようにいった。
「シアンだけ……ここにいないんだ」
シアが何かを言う前に、今度はタカオが彼女を押しのけて、ルースの肩を掴む。
「シアンだけいないって……!どういうことだ」
できるだけ、声を荒げないように、冷静に言ったつもりだったけれど、無意識に声に力が入る。ルースは下唇を噛んで、タカオから目を逸らした。
「レッドキャップがまた村を襲う計画を知って、シアンはここを抜け出した。村に知らせに行ったんだ。俺たちは誰もついていかなかった……」
ルースの声は暗く沈んでいく。
「逃げ出すのなんか無理だって言って止めたけど、あいつは聞かなかった。水路を行けば川に出るって、あの冷たい水路に消えていったんだ」
シアンは、タカオでさえたった数分で命の危険を感じた、あの水の中を進んで、村に危険を知らせに行ったのだ。けれど、村にやって来たのは、シアンではなくレッドキャップだった。
ーーということは、水路の途中で力尽きたか、もしくは地上に出てからレッドキャップに見つかり……。
タカオがそこまで考えた時、ルースは堪えていた涙がボロボロと頬を伝っていた。
「俺も一緒に行ってれば……。そうじゃなきゃ、力づくでも止めるべきだった……!レッドキャップが戻ってきて、シア達を連れてきたとき、シアンは間に合わなかったんだと分かったんだ!あいつは……もう」
タカオはとっさにルースを抱き寄せた。まだ何か言っている途中だった言葉は、誰の耳にも聞こえなかった。
ーーもし、シアンが助からなければ、ルースはその責任はすべて、自分あると責めるだろう。
タカオには、ルースがライルとシアに重なった。レノの怪我を、シアとシアンがさらわれたことを、自分のせいだと責めていた。
シアはシアンがさらわれたのは自分のせいだと思っている。そして、自分が犠牲になればよかったとさえ思っていたのだ。タカオはもうそんなことを止めたかった。ルースは一瞬ひるんだものの、タカオにしがみつくと大声で泣いた。
ルースの頭を撫でながら、タカオは力強く言う。
「もう何も言わなくていい。ルース、みんな、君たちが無事で良かった。シアンだって、それを1番に望んでいるはずだ」
振り返ると、青ざめた顔のシアの手をとる。
「シアンはきっと無事だ。君を残して死んだりしない」
シアは微かに頷いて小さく呟いた。
「お兄ちゃんがそう言うなら、なんでかそう思えるよ」
シアはぎこちない笑顔で涙を堪えた。
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