契約の森 精霊の瞳を持つ者
14.
シアはタカオの反省した様子をみてにっこりと笑った。今度は本当の笑顔だった。
「うん。もういいよ」
あっさりと許されたタカオは驚いてシアを見ると、小さな子供を抱きかかえていた。
「お兄ちゃんが誰かに失礼なこと言わないように怒っただけだから。本当は気にしてないよ」
そう言ってタカオに笑いかける。シアに笑顔が戻ると、タカオはだいぶ気持ちが楽になった。子供達もほっとしたように顔を上げると、今聞いたばかりの言葉を使いこなすようになっていた。
「タカオ、サイテー!」
「サイテー!」
暗い独房に似合わない、笑い声が響いていた。笑い声は次第に、収集がつかないほど大きくなっていた。タカオは子供達をなんとか落ち着かせようとするけれど、上手くはいかない。
「わかった!わかったから、しーっ!しーっ!」
慌てるタカオの様子ですら面白いのか、まるで嵐のように子供達は騒ぎ始めた。タカオも若干忘れかけていたけれど、ここはレッドキャップのアジトで、まだ上には沢山のレッドキャップ達がいる。ここを離れなければ、子供達もタカオも安全ではない。
は困った顔でシアを見つめると、「はいはい」と、言いたそうに呆れた顔をしている。シアが動きだす瞬間だった。頭上では大きな音が響きわたり、叫び声まで聞こえていた。それは恐らく、レッドキャップ達の叫び声だった。
あまりの異様な音に、子供達も今の状況を思い出したのか静まり返った。今にも泣き出しそうな子供もいたけれど、シアがなんとかそれをなだめる。
「みんな、おうちに帰ろう。大丈夫。あたしが魔法をかけてあげるから」
あたりに転がっていた鉄の棒を掴むと、シアはタクトのようにそれを振った。とても楽しそうに。
「闇の者には見えない魔法。でもね、声を出したり、大きな音を立てると、魔法が解けちゃうの。だから、魔法が解けないように静かにするのよ。できる?」
子供達はシアだけを見つめて、言葉を出さずに頷いた。何故か、タカオでさえも頷き、期待の眼差しをシアに向けていた。
「それじゃあ、目を閉じて。……とうめい、とうめい、とうめいになぁーれ」
シアは子供達の頭の上で鉄の棒を振る。たったそれだけで、子供達の顔色は変わった。みんな口に手を当てて、足音も聞こえないように慎重に歩く。タカオも同じ仕草をしながら、独房の扉を指差し、子供達を移動させる。
シアはそんなタカオを捕まえると、子供達から離し、誰にも聞こえないように耳打ちをする。
「まさかとは思うけど、お兄ちゃん、魔法なんて信じてないよね?」
シアのぎこちない笑顔がタカオの目に飛び込んでくる。
「あれって、嘘?!」
シアは目を見開いて、タカオを見つめ返す。
「当たり前でしょ!あの子達を安全に帰すためだもん!だからお兄ちゃんは、レッドキャップと鉢合わせにならないようになんとかしてよね!」
シアはそう言ったあとも、ため息をついて首を横に振っていた。ひどく呆れている様子で。
「なんとかしてって言われても……」
タカオは口ごもりながら、シアの後を追いかけた。
「うん。もういいよ」
あっさりと許されたタカオは驚いてシアを見ると、小さな子供を抱きかかえていた。
「お兄ちゃんが誰かに失礼なこと言わないように怒っただけだから。本当は気にしてないよ」
そう言ってタカオに笑いかける。シアに笑顔が戻ると、タカオはだいぶ気持ちが楽になった。子供達もほっとしたように顔を上げると、今聞いたばかりの言葉を使いこなすようになっていた。
「タカオ、サイテー!」
「サイテー!」
暗い独房に似合わない、笑い声が響いていた。笑い声は次第に、収集がつかないほど大きくなっていた。タカオは子供達をなんとか落ち着かせようとするけれど、上手くはいかない。
「わかった!わかったから、しーっ!しーっ!」
慌てるタカオの様子ですら面白いのか、まるで嵐のように子供達は騒ぎ始めた。タカオも若干忘れかけていたけれど、ここはレッドキャップのアジトで、まだ上には沢山のレッドキャップ達がいる。ここを離れなければ、子供達もタカオも安全ではない。
は困った顔でシアを見つめると、「はいはい」と、言いたそうに呆れた顔をしている。シアが動きだす瞬間だった。頭上では大きな音が響きわたり、叫び声まで聞こえていた。それは恐らく、レッドキャップ達の叫び声だった。
あまりの異様な音に、子供達も今の状況を思い出したのか静まり返った。今にも泣き出しそうな子供もいたけれど、シアがなんとかそれをなだめる。
「みんな、おうちに帰ろう。大丈夫。あたしが魔法をかけてあげるから」
あたりに転がっていた鉄の棒を掴むと、シアはタクトのようにそれを振った。とても楽しそうに。
「闇の者には見えない魔法。でもね、声を出したり、大きな音を立てると、魔法が解けちゃうの。だから、魔法が解けないように静かにするのよ。できる?」
子供達はシアだけを見つめて、言葉を出さずに頷いた。何故か、タカオでさえも頷き、期待の眼差しをシアに向けていた。
「それじゃあ、目を閉じて。……とうめい、とうめい、とうめいになぁーれ」
シアは子供達の頭の上で鉄の棒を振る。たったそれだけで、子供達の顔色は変わった。みんな口に手を当てて、足音も聞こえないように慎重に歩く。タカオも同じ仕草をしながら、独房の扉を指差し、子供達を移動させる。
シアはそんなタカオを捕まえると、子供達から離し、誰にも聞こえないように耳打ちをする。
「まさかとは思うけど、お兄ちゃん、魔法なんて信じてないよね?」
シアのぎこちない笑顔がタカオの目に飛び込んでくる。
「あれって、嘘?!」
シアは目を見開いて、タカオを見つめ返す。
「当たり前でしょ!あの子達を安全に帰すためだもん!だからお兄ちゃんは、レッドキャップと鉢合わせにならないようになんとかしてよね!」
シアはそう言ったあとも、ため息をついて首を横に振っていた。ひどく呆れている様子で。
「なんとかしてって言われても……」
タカオは口ごもりながら、シアの後を追いかけた。
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