契約の森 精霊の瞳を持つ者
8.
「まさかとは思ったが、こんな恥ずかしいことをする奴だったとはな」
グリフが呆れた声を出し、小さなナイフを取り出すと、落とし穴を悔しそうに覗き込むレッドキャップ達に静かに向かった。切れ味の鋭いナイフは、レッドキャップ達を一瞬で切りつけた。
グリフとコダが落とし穴を見下ろすと、タカオはまだ下で溺れまいともがいている。
「なんかの作戦……なわけない、か。あの様子じゃ」
しゃがんで落とし穴を覗き込むコダの声が暗く沈んでいく。
「俺としたことが、あんな奴が王子かもしれないなんて、生まれ変わりなんじゃないかなんて……そう思ったことが恥ずかしい」
そう言ってため息をつくと、コダの肩は細かく揺れはじめた。コダの横に立って見下ろしているグリフはこれまでのことを思い出し、はっきりと言い放った。
「お前以上に恥ずかしいのは、俺だ」
その言葉のあと、コダは我慢できずに笑いはじめた。
「だろうな」
笑い声にまぎれて、やっと言った言葉はそれだった。コダは腹が壊れるくらいに笑い、グリフは険しい顔をますます険しくさせた。
レッドキャップ達は異様に笑うコダと、不機嫌そうに眉間に皺を寄せるグリフを不思議そうに見ていた。
コダはその場であぐらをかいて、上を見上げて腹がよじれるの笑い声をあげた。
「こんなに笑ったのなんか100年ぶりだ。期待させやがって、あの野郎」
しばらくするとコダはそう言って、体全体を使って大きく息を吐き出す。そんなコダの笑い声で、レッドキャップ達は続々と集まりつつあった。座ったままで、コダは辺りを見渡す。
「でも変な感じだ。残念なのになんでか、ほっとしてる」
グリフはコートのボタンを外し、戦う準備を整えていた。
「同じだよ。タカオが王子だったらよかったのに。でも、ずっと認めたくなかった。王子ならきっとこうする。こう言う。それを壊されたくなかった」
話の途中で、レッドキャップ達はじりじりと距離を縮めていた。
コダは口笛を吹き、アルを呼び寄せる。
「……グリフ。俺がほっとしてるのは吹っ切れたからだ。王子はもう、戻ってこない」
アルが天井から、鋭い風を連れて飛び込んでくる。コダの顔からは、先ほどまであったはずの希望は消えていた。これが今のグレイス・コダだった。100年間、戦い続けて疲れた男。探し続け、待ち続け、現実を目の当たりにして、諦めの気持ちが一気に押し寄せる。
グリフが呆れた声を出し、小さなナイフを取り出すと、落とし穴を悔しそうに覗き込むレッドキャップ達に静かに向かった。切れ味の鋭いナイフは、レッドキャップ達を一瞬で切りつけた。
グリフとコダが落とし穴を見下ろすと、タカオはまだ下で溺れまいともがいている。
「なんかの作戦……なわけない、か。あの様子じゃ」
しゃがんで落とし穴を覗き込むコダの声が暗く沈んでいく。
「俺としたことが、あんな奴が王子かもしれないなんて、生まれ変わりなんじゃないかなんて……そう思ったことが恥ずかしい」
そう言ってため息をつくと、コダの肩は細かく揺れはじめた。コダの横に立って見下ろしているグリフはこれまでのことを思い出し、はっきりと言い放った。
「お前以上に恥ずかしいのは、俺だ」
その言葉のあと、コダは我慢できずに笑いはじめた。
「だろうな」
笑い声にまぎれて、やっと言った言葉はそれだった。コダは腹が壊れるくらいに笑い、グリフは険しい顔をますます険しくさせた。
レッドキャップ達は異様に笑うコダと、不機嫌そうに眉間に皺を寄せるグリフを不思議そうに見ていた。
コダはその場であぐらをかいて、上を見上げて腹がよじれるの笑い声をあげた。
「こんなに笑ったのなんか100年ぶりだ。期待させやがって、あの野郎」
しばらくするとコダはそう言って、体全体を使って大きく息を吐き出す。そんなコダの笑い声で、レッドキャップ達は続々と集まりつつあった。座ったままで、コダは辺りを見渡す。
「でも変な感じだ。残念なのになんでか、ほっとしてる」
グリフはコートのボタンを外し、戦う準備を整えていた。
「同じだよ。タカオが王子だったらよかったのに。でも、ずっと認めたくなかった。王子ならきっとこうする。こう言う。それを壊されたくなかった」
話の途中で、レッドキャップ達はじりじりと距離を縮めていた。
コダは口笛を吹き、アルを呼び寄せる。
「……グリフ。俺がほっとしてるのは吹っ切れたからだ。王子はもう、戻ってこない」
アルが天井から、鋭い風を連れて飛び込んでくる。コダの顔からは、先ほどまであったはずの希望は消えていた。これが今のグレイス・コダだった。100年間、戦い続けて疲れた男。探し続け、待ち続け、現実を目の当たりにして、諦めの気持ちが一気に押し寄せる。
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