契約の森 精霊の瞳を持つ者
7.
コダでさえも確信のようなものが生まれ始めていた。思わず、無意識に足が前にでる。自然と駆け出すその足は軽い。
まるで子供の頃のように体が軽くなり、後のことなどなにも考えずに動ける。タカオの背中を追う。その背中はずっと昔に追いかけ続けた王子の背中そのものだっだ。
そんなコダをグリフは追いかける。それもまた、彼らの幼い子供時代の頃のようだった。グリフの先にはいつもコダがいた。
グリフはコダに追いつくと、冷静に言う。
「グレイス、ここが昔と同じままなら、〝あれ〟ってまだあるんじゃないのか?」
2人はいよいよ廃墟の正面へと着く。昔は鮮やかな彩りを誇っていた外壁は、今や薄汚れて全てが灰色だった。正面の扉は壊れたのか、四角い暗闇が口を開けて待ち受けている。タカオはまだ何かを叫びながら、なんの躊躇もなくその暗闇に突っ込んでいった。
「昔のままだったとしても、分かるだろ。普通」
コダは当たり前だと言わんばかりだった。
「そんなことよりも、タカオが王子かもしれないんだぞ!記憶喪失なのか、生まれ変わりだか知らんが、王子かも知れないんだ」
ーー見ろ!あの勇ましい姿を!
コダはそう言いたそうに、タカオの消えた四角い闇を見つめていた。廃墟の中からはタカオの大声が響き渡っている。
グリフとコダも、その入り口に突っ込む。廃墟の中は入り口が暗いだけで、中へ進めば天井がすでに崩壊し、月の光が落ちて明るいくらいだった。
月の光はまるでスポットライトのように床を照らす。光の奥は真っ暗な闇が、湿気を帯びた異臭と共に潜んでいた。赤く揺れる、無数の狂気の瞳を浮き上がらせて。
タカオが月の光を集めた剣を、廃墟の奥にいるレッドキャップに振り上げようと全力で走る。
「やっぱり、止めたほうが……」
グリフはしつこくコダに言うけれど、コダはもうその瞳を、期待と希望で輝かせていた。
そして、それは一瞬だった。タカオがレッドキャップ達に向かい、レッドキャップ達もまた、タカオに向かっていた。銀の剣が光を帯びたまま、矢のように闇に放たれた。
その少し前、タカオの姿は一瞬で消えでいた。タカオの勇ましい声が、廃墟の中で遠のいていく。
「うおおおおぉぉぉぉ…………」
レッドキャップ達は銀の剣を避け、珍しく、眉間に皺を寄せた。赤い目玉だけをギョロギョロと動かし、警戒した顔でタカオを探す。どこから、攻撃してくるだろうかと。
そして聞こえる。何かが水に落ちる、派手な音が。
「やっぱりな……」
グリフのため息がこぼれる。先ほどから心配していたことが的中し、微かにうなずく。レッドキャップ達は左右、もしくは上に向けていた目玉を下に向ける。
そこには正方形の穴がある。それは突然現れたものなんかではなく、最初からそこにあった。誰もが、恐らくレッドキャップ達でさえも、向かってくる敵はそれを飛び越えて来るだろうと思っていた。しかし、足元のもっと下の地下からは、水の中でもがいているらしいタカオの動く音がする。
「は?嘘だろ……何だいまの。なんかの作戦か?そうだよな?作戦だよな」
コダは、グリフに振り返ってその可能性について考えている。コダがどんなに目を見開いて驚愕していようが、グリフは静かに首を横に振った。
まるで子供の頃のように体が軽くなり、後のことなどなにも考えずに動ける。タカオの背中を追う。その背中はずっと昔に追いかけ続けた王子の背中そのものだっだ。
そんなコダをグリフは追いかける。それもまた、彼らの幼い子供時代の頃のようだった。グリフの先にはいつもコダがいた。
グリフはコダに追いつくと、冷静に言う。
「グレイス、ここが昔と同じままなら、〝あれ〟ってまだあるんじゃないのか?」
2人はいよいよ廃墟の正面へと着く。昔は鮮やかな彩りを誇っていた外壁は、今や薄汚れて全てが灰色だった。正面の扉は壊れたのか、四角い暗闇が口を開けて待ち受けている。タカオはまだ何かを叫びながら、なんの躊躇もなくその暗闇に突っ込んでいった。
「昔のままだったとしても、分かるだろ。普通」
コダは当たり前だと言わんばかりだった。
「そんなことよりも、タカオが王子かもしれないんだぞ!記憶喪失なのか、生まれ変わりだか知らんが、王子かも知れないんだ」
ーー見ろ!あの勇ましい姿を!
コダはそう言いたそうに、タカオの消えた四角い闇を見つめていた。廃墟の中からはタカオの大声が響き渡っている。
グリフとコダも、その入り口に突っ込む。廃墟の中は入り口が暗いだけで、中へ進めば天井がすでに崩壊し、月の光が落ちて明るいくらいだった。
月の光はまるでスポットライトのように床を照らす。光の奥は真っ暗な闇が、湿気を帯びた異臭と共に潜んでいた。赤く揺れる、無数の狂気の瞳を浮き上がらせて。
タカオが月の光を集めた剣を、廃墟の奥にいるレッドキャップに振り上げようと全力で走る。
「やっぱり、止めたほうが……」
グリフはしつこくコダに言うけれど、コダはもうその瞳を、期待と希望で輝かせていた。
そして、それは一瞬だった。タカオがレッドキャップ達に向かい、レッドキャップ達もまた、タカオに向かっていた。銀の剣が光を帯びたまま、矢のように闇に放たれた。
その少し前、タカオの姿は一瞬で消えでいた。タカオの勇ましい声が、廃墟の中で遠のいていく。
「うおおおおぉぉぉぉ…………」
レッドキャップ達は銀の剣を避け、珍しく、眉間に皺を寄せた。赤い目玉だけをギョロギョロと動かし、警戒した顔でタカオを探す。どこから、攻撃してくるだろうかと。
そして聞こえる。何かが水に落ちる、派手な音が。
「やっぱりな……」
グリフのため息がこぼれる。先ほどから心配していたことが的中し、微かにうなずく。レッドキャップ達は左右、もしくは上に向けていた目玉を下に向ける。
そこには正方形の穴がある。それは突然現れたものなんかではなく、最初からそこにあった。誰もが、恐らくレッドキャップ達でさえも、向かってくる敵はそれを飛び越えて来るだろうと思っていた。しかし、足元のもっと下の地下からは、水の中でもがいているらしいタカオの動く音がする。
「は?嘘だろ……何だいまの。なんかの作戦か?そうだよな?作戦だよな」
コダは、グリフに振り返ってその可能性について考えている。コダがどんなに目を見開いて驚愕していようが、グリフは静かに首を横に振った。
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