契約の森 精霊の瞳を持つ者
7.
「街へは行かない」
タカオとジェフが追いついた時、グリフは振り返る事もなく言った。ジェフは驚いてグリフに聞いた。
「えっ!?でもこのままじゃ旅なんて出来ないよ。食べ物だってないし、色々……」
「用を済ませたら行く」
グリフは冷静に告げる。
「用って?」
今度はタカオが聞いた。グリフは突然足を止め、体ごと振り返った。早足で歩いていたのでタカオはグリフにぶつかりそうになった。
「精霊に会いに行く」
グリフはタカオの両腕を掴んで止めた。そのせいで、さっきの言葉はタカオに言い聞かせているようでもあった。その横でジェフは感動のあまり喜んでいた。本当に精霊に会えるとは思ってなかったのだろう。
「でもどうやって……まさか、あの地図?」
タカオはアレルからもらった"王家の地図"の事を思い出した。精霊の居場所を書き記した、貴重な地図だ。
「でもでもでもさぁ!どの精霊に会うの?もしかして、タカオを呪ってる精霊のところ?」
ジェフは言いながら顔に不安を覗かせていた。グリフはタカオを見たまま頷いた。
「ああ、水の精霊だ。湖に行く」
それを聞いても、タカオは驚かなかった。湖と聞いた時、頭に浮かんだのはウェンディーネの名前だった。タカオにしてみれば、その時が来たのだと思ったくらいだ。
けれどグリフの言葉にジェフとイズナは不安を隠せなかった。呪いをかけた精霊に会いに行くのは、タカオをむざむざ精霊に殺させるために出向くようなものだからだ。
「大丈夫なの?」
ジェフはさっきまで喜んでいたとは思えないほど困惑しきっている。
「いつか会わなきゃならないなら、早い方がいい。きっと大丈夫だよ」
タカオは小さいため息をつくとそう言った。タカオの言葉にジェフは少しうつむいた。
「ジェフも言ってただろう?精霊を救いたいって。他の精霊がサラみたいに困っているなら、力になりたいと思うんだ。まぁ、跳ね返されそうだけど」
そう言ってタカオは髪をくしゃくしゃにして歯を見せて笑った。
「そんな事になったら、笑えないよ」
命がかかっているという時にへらへらとしているタカオを見て、ジェフは力が抜けたように笑った。
イズナはどこかほっとしたような表情だった。グリフだけは眉間に皺をよせて、地面を見つめていた。
全員で精霊に会うと決めると、地図を頼りに道無き道へと進んで行く。
後になってタカオは、この時からグリフの体は限界だったのではないかと思った。背中に怪我を負い、夜だって睡眠をとったのかさえ疑わしい。命を懸けているのは自分だけだと錯覚していたのだ。
この時を振り返ると、いつも自分の非力さを思い起こさずにはいられない。この旅は、全員の命を危険にさらす旅だと思い知るのは、もっとずっと、後の話。
タカオとジェフが追いついた時、グリフは振り返る事もなく言った。ジェフは驚いてグリフに聞いた。
「えっ!?でもこのままじゃ旅なんて出来ないよ。食べ物だってないし、色々……」
「用を済ませたら行く」
グリフは冷静に告げる。
「用って?」
今度はタカオが聞いた。グリフは突然足を止め、体ごと振り返った。早足で歩いていたのでタカオはグリフにぶつかりそうになった。
「精霊に会いに行く」
グリフはタカオの両腕を掴んで止めた。そのせいで、さっきの言葉はタカオに言い聞かせているようでもあった。その横でジェフは感動のあまり喜んでいた。本当に精霊に会えるとは思ってなかったのだろう。
「でもどうやって……まさか、あの地図?」
タカオはアレルからもらった"王家の地図"の事を思い出した。精霊の居場所を書き記した、貴重な地図だ。
「でもでもでもさぁ!どの精霊に会うの?もしかして、タカオを呪ってる精霊のところ?」
ジェフは言いながら顔に不安を覗かせていた。グリフはタカオを見たまま頷いた。
「ああ、水の精霊だ。湖に行く」
それを聞いても、タカオは驚かなかった。湖と聞いた時、頭に浮かんだのはウェンディーネの名前だった。タカオにしてみれば、その時が来たのだと思ったくらいだ。
けれどグリフの言葉にジェフとイズナは不安を隠せなかった。呪いをかけた精霊に会いに行くのは、タカオをむざむざ精霊に殺させるために出向くようなものだからだ。
「大丈夫なの?」
ジェフはさっきまで喜んでいたとは思えないほど困惑しきっている。
「いつか会わなきゃならないなら、早い方がいい。きっと大丈夫だよ」
タカオは小さいため息をつくとそう言った。タカオの言葉にジェフは少しうつむいた。
「ジェフも言ってただろう?精霊を救いたいって。他の精霊がサラみたいに困っているなら、力になりたいと思うんだ。まぁ、跳ね返されそうだけど」
そう言ってタカオは髪をくしゃくしゃにして歯を見せて笑った。
「そんな事になったら、笑えないよ」
命がかかっているという時にへらへらとしているタカオを見て、ジェフは力が抜けたように笑った。
イズナはどこかほっとしたような表情だった。グリフだけは眉間に皺をよせて、地面を見つめていた。
全員で精霊に会うと決めると、地図を頼りに道無き道へと進んで行く。
後になってタカオは、この時からグリフの体は限界だったのではないかと思った。背中に怪我を負い、夜だって睡眠をとったのかさえ疑わしい。命を懸けているのは自分だけだと錯覚していたのだ。
この時を振り返ると、いつも自分の非力さを思い起こさずにはいられない。この旅は、全員の命を危険にさらす旅だと思い知るのは、もっとずっと、後の話。
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