契約の森 精霊の瞳を持つ者

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2.

 乾いた何かが、はじけるような音が聞こえた。目を開けると目の前はオレンジ色をした炎が舞っていた。


「目が覚めたか」


 焚き火の向こうにはグリフがいて、なにやら美味しそうな香りが漂っていた。火の上には底の広い鍋があり、鍋は焚き火の左右にある石の上に置かれていた。


 その鍋でグリフは何かを作っている。タカオは起き上がり見渡すと、もう辺りには夕暮れと夜が同時に存在していた。遠くの空に星が瞬き、少し離れた街の方には赤い夕日が、もうほとんど見えなくなっていた。


「ここ、さっきの?」


「ああ、お前が倒れた場所だ」


 そう言われて、タカオは転んで気を失ったらしい事に気が付いた。


「ジェフとイズナは街にいる。明日合流するぞ」


 タカオに視線をやったグリフは、付け足すように聞いた。


「……寒いのか?」


 タカオは目が覚めれば覚めるほど、夢の中の現実的な感覚を思い出して震えが止まらなくなっていた。


「いや、何でもない。それより、街で何をするんだ?」


 震えをごまかそうとして話を切り替えた。グリフは鍋をかき回しながらも、タカオを鋭い目で見る。


「旅の支度をするんだ。食料も買わないと。それから連絡を取りたい奴がいる」


 グリフはそう言うと視線を鍋に移す。タカオも同じように鍋をみる。


「連絡って、エントに?」


 "エント"と聞くとグリフは鼻で笑った。


「森の研究をしている奴だ」


「ああ、たしか、なんとかって、名前の……エントが呼ぼうとしている人物だろう?」


「ああ、サラのたまごのことを聞くなら、あいつくらいしかいないからな。それに、お前が帰る方法を何か知っているかもしれないしな」


 グリフは鍋を混ぜていた手を止めた。帰る方法と聞いてタカオは思い出していた。アレルの言葉を。


「帰る方法って、もしかして森のかけらってやつ……」


 タカオがそう言うと、グリフは顔を動かさず、鋭い視線だけを鍋からタカオへと移した。ただえさえいつも睨むように見てくるグリフの顔が、さらに険しくなっていた。







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