契約の森 精霊の瞳を持つ者
4.
タカオは驚いた表情のまま聞いた。
「危険だって……」
そう言おうとした時、ジェフの母親はその言葉を遮った。ジェフの頭を撫でながら、優しく力強い声だった。
「昔ね、ある人に言われたの。この子はね……何千何万の森の記憶を受け継ぐだろうって」
タカオも、ジェフも、不思議そうにその言葉に耳を傾けていた。
「1度死んで生まれ変われば、お前の息子ではなくなるけど、森がこの子を守るんだって」
ジェフの母の顔は真剣だった。
「それってどういう意味?」
ジェフは不安げに母を見上げる。するとジェフの母は吹き出すように笑った。
「ばっかみたいでしょ?その人は気休めでそんなこと言ったの。今でもそれを信じてるなんてね」
その顔は、笑っているのに泣いていた。やはり心配なのだ。
「ちゃんと、帰ってくるよ。約束する!」
そう言って、ジェフは笑顔を見せた。
「うん。ジェフならきっと大丈夫。森が守ってくれるって母ちゃん、信じてるから!」
連れて行くかどうかなんて関係がなかったとタカオは思った。どんなに断ってもジェフはついてくるだろう。
「お昼ごはん、こんなに沢山?」
母親に別れを告げると、ジェフはそう言って両手で抱えた袋を不思議そうに見つめた。
「タカオと一緒に行くのは、ジェフだけじゃないわよ。きっと」
「もしかして……グリフ?」
そう言うとジェフは目を輝かせで、道の先に走り出してしまった。
「グリフがいれば、安全ですね。ジェフはグリフに連れて戻って来てもらうので安心して下さい」
タカオが歩きだそうとすると、母はもう一つ持っていた小さな袋をタカオに渡した。
「こっちは朝ごはん。食べそこなったでしょう?みんなで食べてね」
タカオはお礼を言うと、ジェフの母は少しためらった様子でとても小さな声で言った。
「あのね、精霊の瞳のことだけど、呪いだけじゃないの。加護を受けた者もいるのよ。王子は精霊の加護を受けた唯一の存在だったの。だから、気を落としたら駄目よ」
急に精霊の瞳の話になったのでタカオは話についていけずに頷いただけだった。ジェフの母親は安心したように笑った。
「ジェフはここにいるより、あなたと行くほうが安全だから。頼むわね」
その言葉が終わる頃にはジェフは戻ってきた。
「橋の所にいたよ!行こ!」
それから思い出したように母に抱きついた。
「帰ってきたら、朝ごはんは僕が準備するからね!」
「あら、それじゃあ、今度はひっくり返さないよう見張ってなきゃね」
そう言ってジェフの母は思い出したように微笑で涙ぐんだ。
ジェフの母親が見えなくなるまで、ジェフとタカオは何度も振り返って手をふった。
タカオはジェフの母親の言った言葉がどうも胸にひっかかった。
ーーまるで、あそこに残る方が危険みたいな言い方だった。だとしたら、あの人は何が危険か知っているんだ。
タカオはそのことをジェフに言おうか悩んで、結局言うのをやめた。
「危険だって……」
そう言おうとした時、ジェフの母親はその言葉を遮った。ジェフの頭を撫でながら、優しく力強い声だった。
「昔ね、ある人に言われたの。この子はね……何千何万の森の記憶を受け継ぐだろうって」
タカオも、ジェフも、不思議そうにその言葉に耳を傾けていた。
「1度死んで生まれ変われば、お前の息子ではなくなるけど、森がこの子を守るんだって」
ジェフの母の顔は真剣だった。
「それってどういう意味?」
ジェフは不安げに母を見上げる。するとジェフの母は吹き出すように笑った。
「ばっかみたいでしょ?その人は気休めでそんなこと言ったの。今でもそれを信じてるなんてね」
その顔は、笑っているのに泣いていた。やはり心配なのだ。
「ちゃんと、帰ってくるよ。約束する!」
そう言って、ジェフは笑顔を見せた。
「うん。ジェフならきっと大丈夫。森が守ってくれるって母ちゃん、信じてるから!」
連れて行くかどうかなんて関係がなかったとタカオは思った。どんなに断ってもジェフはついてくるだろう。
「お昼ごはん、こんなに沢山?」
母親に別れを告げると、ジェフはそう言って両手で抱えた袋を不思議そうに見つめた。
「タカオと一緒に行くのは、ジェフだけじゃないわよ。きっと」
「もしかして……グリフ?」
そう言うとジェフは目を輝かせで、道の先に走り出してしまった。
「グリフがいれば、安全ですね。ジェフはグリフに連れて戻って来てもらうので安心して下さい」
タカオが歩きだそうとすると、母はもう一つ持っていた小さな袋をタカオに渡した。
「こっちは朝ごはん。食べそこなったでしょう?みんなで食べてね」
タカオはお礼を言うと、ジェフの母は少しためらった様子でとても小さな声で言った。
「あのね、精霊の瞳のことだけど、呪いだけじゃないの。加護を受けた者もいるのよ。王子は精霊の加護を受けた唯一の存在だったの。だから、気を落としたら駄目よ」
急に精霊の瞳の話になったのでタカオは話についていけずに頷いただけだった。ジェフの母親は安心したように笑った。
「ジェフはここにいるより、あなたと行くほうが安全だから。頼むわね」
その言葉が終わる頃にはジェフは戻ってきた。
「橋の所にいたよ!行こ!」
それから思い出したように母に抱きついた。
「帰ってきたら、朝ごはんは僕が準備するからね!」
「あら、それじゃあ、今度はひっくり返さないよう見張ってなきゃね」
そう言ってジェフの母は思い出したように微笑で涙ぐんだ。
ジェフの母親が見えなくなるまで、ジェフとタカオは何度も振り返って手をふった。
タカオはジェフの母親の言った言葉がどうも胸にひっかかった。
ーーまるで、あそこに残る方が危険みたいな言い方だった。だとしたら、あの人は何が危険か知っているんだ。
タカオはそのことをジェフに言おうか悩んで、結局言うのをやめた。
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